スーパーマン!




【本名:高杉晋助の場合】


外灯の明かりだけが頼りの夜道。
日付を越える瞬間をさっき携帯で見た

早足で家路を急ぐ私。
こちらを窺うように近づいてくる足音。足音は私の歩調に合わせるように、しかし着実に距離を縮めている。
これはもう意を決して走って家に帰るしかないと決めた矢先、足音は一気に距離をつめてきた。
逃げる暇もなく、私は腕を掴まれた

「ひいっ!」
「ねえねえお姉さーん。楽しいことしなぁい?」

絵に描いたような変態、というのが適切であろう。いかにも下衆っぽい笑みを浮かべた男が私の腕を掴んでいた。

「きゃあー!助けて、スーパーマン!」
「駄目だ、やり直し。お前全然なってねぇよ、そんなちっせぇ声で俺が助けにくるとでも思ってんのか」
「あ、スーパーマン!なによ、来てくれたじゃない」
「うるせーな、たまたま通り掛かったんだよ。…っつうかまたこいつか」

助けに来てくれたんだかそうでないんだかよくわからないが、とりあえず来たスーパーマンは未だ私の腕を掴んでいる男を見下ろしてため息をついた。ちなみにスーパーマンは民家の屋根の上である。

「うるさいっ!邪魔をするな!」
「そう言われてもよォ、俺も仕事なんだよな。…よっ」

スーパーマンは屋根からひょいと飛んで私たちの目の前に着地した。

「おい女ァ、お前助けてほしいか?」
「もちろん」
「じゃあもっといい悲鳴を上げろ」
「は?」
「俺がお前を助けたくなるような悲鳴を上げろ」

なんだこいつ…!
本当にスーパーマンか?正義の味方か?
そういえば怪しい目つきだし、悲鳴がどうこうって…こっちも不審者なんじゃ……
なんて私が目の前のスーパーマンに疑問を持ち始めると視界の端にキラリと光るものが見えた。変態男がナイフを取り出したのだ

「助ける気ないなら消えてよぉおおお!」
「あっ!」

男はナイフをスーパーマンに向けて走り出した。スーパーマンは舌打ちを一つして男の手からナイフを叩き落とし、鳩尾に膝を入れた。
男は小さく唸りながら倒れた

私は目が離せなかった。
おかしい。さっきまで変態に負けず劣らずの怪しい目つきだったのに。おかしい。一瞬でこんなに格好良くなるなんて…!

「あんた、スーパーマンのくせに!」
「は?なんだよ」
「泥棒は犯罪よ!」
「なんだァ?俺に惚れたか?」
「信じられない!」

(そのあとぐだぐだと甘い言葉を囁いて家まで入り込もうとしたこいつは本当にスーパーマンなのだろうか…)


――――――――――

【本名:坂田銀時の場合】

外灯の明かりだけが頼りの夜道。
日付を越える瞬間をさっき携帯で見た

早足で家路を急ぐ私。
こちらを窺うように近づいてくる足音。足音は私の歩調に合わせるように、しかし着実に距離を縮めている。
これはもう意を決して走って家に帰るしかないと決めた矢先、足音は一気に距離をつめてきた。

逃げる暇もなく、私は腕を掴まれた

「ひいっ!」
「ねえねえお姉さーん。楽しいことしなぁい?」

絵に描いたような変態、というのが適切であろう。いかにも下衆っぽい笑みを浮かべた男が私の腕を掴んでいた。

「きゃあー!助けて、スーパーマン!」
「はぁーい、スーパーマンでーす」
「……」
「なにその疑惑の目」
「いや、別に本当にスーパーマンかどうかなんて疑ってません」
「大丈夫大丈夫、心配いらないってえー」

私にはそう軽い口調で話しつつ、私の腕を掴む男に視線を移した途端に表情が厳しくなった。
スーパーマンは男の腕をいとも簡単に捻り上げ、醜く唸る男に低い声で何かを囁いた。すると男は怯えた様子で逃げていった。
あまりの早業に呆気にとられる私にスーパーマンは話しかける。何やら悪戯っ子のような笑みを浮かべて。

「ご無事ですか?お嬢さん」
「あ、あの…」
「どっか怪我した?」
「いや、そうじゃなくて……スーパーマンってこんな敵の倒し方でしたっけ?」
「へ?」
「もっと、必殺技とか…」
「ああ、必殺技は敵倒した後に使うの」
「あと?」
「そ」

彼は私の口にキスをした。私は驚きのあまり目を見開いたが、そんなことにはお構いないの様子だ。唇が離れると最初のようにまた悪戯っ子みたいな笑みをこぼした。

「私、呼ぶ人を間違えてたみたいです」
「ん?」
「助けて!お巡りさぁあああああん!」
「ちょっと待ってェエエエ!」


(なんやかんや言い訳をする彼はお巡りさんに連れていかれました)


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