あなたの所為




退屈な午後の授業中

前には長々と板書を書くハゲた先生。
はっきり言ってつまらない。
クラスの大半は好き勝手に寝ていて、私も寝てしまおうかと何度か試みたけど何故か今日に限って眠ることが出来ない。
仕方ない、することもないので板書をノートに写していく。
やる気はないのでノートの字は随分雑になっている。

「なまえさん、」

声をかけてきたのは隣の席の新八くん。
彼が私に話しかけてくることなんて滅多にない。
それ故、私も声をかけることをあまりしなかった。

「ん?」
「なまえさんってもしかして目悪い?」
「え?なんで?」
「なまえさん、いつも字凄く綺麗なのに今日は見えてないみたいな書き方だから…」

字が綺麗だなんて初めて言われた…。しかも私の雑に書いた字を雑とは言わずにやんわり気を使ってくれている。その心遣いに少しだけだがきゅん、としてしまった。

「あ、ありがとう。でも一応ちゃんと見えて「ないんですね」…へ?」

あの新八くんが私の言葉を遮り、言葉を発した。しかも解釈が逆だ。今日の新八くんはどうしたんだろう…

「あの、違くてね?だから「大丈夫です、わかってますから」

また私の言葉を遮った新八くんは眼鏡を外した何故?と不思議に思い、はてなを浮かべる私に新八くんはにこりと微笑みかける。

「えと…新八くん?」
「これ、貸しますよ」

そう言って新八くんは私に眼鏡を渡してきた。

「でも、それじゃ新八くんが見えなくなっちゃうよ」

それ以前に私はそんなに目が悪くないんだけど、それは今は言わなかった。あまり長い言葉を紡ぐことが出来なかったから。だって新八くんの瞳が凄く綺麗で、それにばっかり気を取られて頭がちゃんと働いてくれなかったんだもの。


「僕は後でなまえさんのを見せてもらうから。今は字を書く気分じゃないんだ」
「…本当に?」
「うん、だからどうぞ」



そう言って新八くんがこちらに差し出してきた眼鏡を受け取る。
なんだか緊張するけど掛けてみる。
目が悪いわけじゃないから少しくらくらする。
でもそれの所為ではなくて、私のノートの字は更に汚くなってしまった。







隣で新八くんが私を見つめていることをまだ知らない。眼鏡が無いから眼鏡を掛けた私の姿を見ることが出来なくてもやもやしていることも………



(後で目が悪くなる方法調べなきゃ)

(明日からコンタクトにしよう)






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