ずっと前から分かってた




「なまえ、俺と付き合わないか」

早足で逃げるように下校の道を歩く私に聞き慣れた声が後ろからそんな言葉をかけてきた

「もう何回目?ちょっとそろそろめんどくさいんだけど。あっ本音出ちゃった」

そうだ。聞き慣れた声は聞き慣れた科白を言ってきただけなのだ。小太郎とは幼なじみで家も近い。だから私達はいつも一緒に帰っている。いつからか私はずっと小太郎に告白をされ続けている。幼なじみではあるが小太郎のことはよくわからない。天然な上に電波なので考えなどさっぱりわからないのだ。だから私は小太郎の言葉を特に重く受け止めることなく聞き流している。

「ほとんど毎日交際の申し込みをしているからな。回数など数えられぬ。」

最後の言葉は聞こえていなかったらしい。

「何をそんな堂々と偉そうに言ってんの」
「もしかして嫁?嫁になりたかったのか?そうか、彼女では嫌か。」
「うん、言ってないね。一言もそんなこと言ってないよね?大丈夫?病院行く?」
「なまえってば、照れてるぅ〜。可愛い奴だなあ、もう」
「うっわ、どうしよう。凄いうざいんだけど。どうする?いっぺん死んでみる?」

いつものように言葉を返した瞬間、私の腕に微かな温もりと力を感じた。同時に私は早足で歩いていた足を止めた。

「?」

顔だけ振り向くと私の腕が小太郎の手に掴まれている。

「何?どうかした?」

小太郎の方に向き直り、小太郎の顔を見ると小太郎はいつになく真剣な顔をしていて私は少しドキドキしてしまった。

「##NAME1##、そろそろ真剣に聞いてくれないか」
「えっと…うん。聞くけど何を?」
「俺はなまえが本当に好きなんだ。なまえは本気で俺が自分を好きだと思ってなかっただろう?俺にはその方が都合がよかったんだ。なまえとの関係は崩れずに一緒にこうやって帰ることが出来て、俺がしつこく告白をしていればなまえを好きになった奴も簡単には手を出すまい。すまない、俺は本気で好きなんだ」

そう言って小太郎はこっちを見つめてくる。こんな表情は見たことない。私の返事を待つ期待と何故か悲しそうなものを合わせ持っているような複雑な感じ。

「別に謝ることじゃないじゃん。何謝ってんのよ」
「なら、なまえの気持ちを聞かせてくれぬか?」
「んー、わかんない」

少し考えてから私は言った。そして私の腕を掴んでいる小太郎の腕をそのままにぐい、と引っ張って小太郎を引き寄せた。

「お、おい、なまえ」
「何よ」

私は引き寄せた所為で顔が近くなったままで返した。顔が熱い。

「なまえ、」
「だから何」
「わからないというのは俺が好きではないということか?」
「さあね」

言うと私は更にぐい、と小太郎を引き寄せて薄めな彼の唇に自分の唇を押し付けた。


"わからない"なんて嘘。

本当は、



ずっと前から分かってた



押し付けてた唇を離して閉じていた目を開くと目の前に目を見開いて顔を真っ赤にした小太郎がいた。
そんな顔も初めて見た。

(これから沢山、私だけの小太郎を見せてよね)

「小太郎、」
「な、なんだ?」
「早く帰ろーよ」

(でも言ってあげない)

唖然としている小太郎に背を向けて私は歩きだした。
しばらくして小太郎の走ってくる足音が聞こえてきた。
そして今度は優しく私の手を握った。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -