直線を曲線に
ずっと一緒だった。
小学校も中学校も、そして今通っている高校も。
私とトシはずっと同じ学校に行って、クラスも離れたことがない。
…でも私達はずっと平行線だ。
これまで、交わることなんて一度もなかった。
幼なじみという関係のまま、ずっと……
直線を曲線に
皆帰って静まりかえった3Zの教室に啜り泣く声が響いていた。
教室には私だけ。
残りたくて残っているわけじゃない。
泣きたくて泣いているわけじゃない。
ほんの10分ほど前のことだ。
私は帰ろうと教室を出た。
何かが私の前を通り過ぎたんだ。
その瞬間、思考とともに私の足も停止した。
気付いたら私は教室に戻っていて、自分の机についていた。そして、泣いていた。
その時なまえの前を通り過ぎたのは、なまえの知らない女子と歩く土方の姿だった。それは土方に想いを寄せているなまえを落胆させるには十分過ぎた。
(トシの顔は見えなかったけど、女の子の方は幸せそうだった…)
「やっぱり、そうゆうことだよね…」
泣き疲れた私はそう小さく呟いた。
「何がでィ」
「!」
「んな泣いて土方コノヤローにフラれでもしたかィ?」
何時から居たのか、なまえをどこか悲しげに見下ろす沖田。沖田も土方と同じように幼なじみで、なまえの気持ちを知りながらもなまえにひそかに想いを寄せている。
「そう…ご…フラれてないよ。でも、同じような感じ」
「ったく、」
沖田はなまえの顔を見て思わず抱きしめた。
「泣きなせェ、全部出せ」
私は総悟の温もりの中で泣いた。総悟はいつだって優しい。その時も総悟は私を慰めてくれた。
そんな大きな優しさをくれる総悟に気持ちが移らないのは、それより大きなトシへの想いがあるから。
私は、何があってもトシが好き。
忘れ物を取りに、本当はなまえが好きな土方が来るまであと数秒。
そして、土方がただ絡まれていただけだということを知る沖田がなまえに想いを伝えるまでもあと数秒。
直線が曲線に変わって交わるのはいつ……?