心が




夕方の帰り道。
私は毎日トシと一緒に帰る。トシは毎日放課後に部活があるけど、私は帰宅部だ。でも一緒に帰る。私が校門の前で本を読みながら待っているんだ。トシと一緒に帰るという行為はもう幼稚園の時から。小学生の時はよくからかわれた。でも"だって家が隣なんだもの"この一言で私達は何でもないように一緒に帰ってた。

私達は少女漫画にありがちな生まれた時からのお隣りさんで、小さい頃からよく遊んでた。親同士も仲が良くて、「二人が結婚したら私達家族ねぇ」みたいなことをよくお母さん同士で話しているのを聞いていた。だから私はなんとなくトシと恋愛してトシと結婚をするんだと思っていた。よくある「大きくなったら○○くんのお嫁さんになる!」みたいな約束なんてしていないけど。

「あのさぁ、」
「あ?」
「私達さ、随分長いこと一緒に帰ってるよね」
「ああ、そうだな」
「なんでだろうね」
「家が近いからだろ」
「そっか。じゃあ今も一緒に帰ってるのも同じ理由?」
「そうだろ。というかお前が待ってるんだろうが」
「ああ、そっか」
「最初は驚いたがな。普通別れた次の日に一緒に帰るかよ」
「うん、なんか無意識に……癖になってるんだろうねー。それよりトシはもう彼女じゃない私と帰って平気なの?」
「ああ、あいつは気にしねーよ。俺らのことは知ってる」
「大人だねえ、今度の彼女さんは。」
「お前が子供なだけだろ」

トシは喉を鳴らして馬鹿にしたように笑った。

「何を失礼な」
「本当のことだろ。つーか何でいきなりそんな話なんだ?どうかしたか?」
「なんかねー、痛い」
「…は?どこが」



心が




言えたらいいのかもしれない。でも言えない。トシの幸せを奪うことなんて私にはできっこないの。それだけ私はトシを愛してる。別れた後に気付くなんて私はなんて馬鹿なんだろう。私から離れたのに……どっか具合悪いのか、なんて優しい言葉なんていらないからこんな不純な気持ちが吹っ飛ぶくらい冷たい言葉が欲しい。






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