ごめんなさい、嘘です



最近、おかしな子がいる。というか、おかしな子に付き纏われている。よくわからない。うーん……なんなんだろうなあ。ただの幼稚園の先生なのになあ。もしかして私って気付かぬ間に幼稚園児にも通用するような素敵な魅力を身につけていたのかしら。…………ないか、それはないか。じゃあなんだ?


「せんせー!これ読んでー!」


悶々と考え込んでいると女の子が駆け寄ってきた。いけない、仕事中に考え事なんて。幼稚園の先生たるもの、子供から目を離すなんて以ての外。子供達のお世話に専念しなくては。


「はいはーい、これ好きだねえ。」
「うん、すきー」


にっこりと笑う女の子。可愛い。


「じゃあ読んであげるから、先生のお膝においでー」
「はあい」


女の子が正座している私の膝の上に乗ろうとしたその時、


「そこは俺の場所でィ」


来やがった………
また来たよ。いや、私の担当のクラスの子なんだから私の元へ来ることなんて当たり前なんだけども。でも最近になって私によく付き纏うようになった。幼稚園の先生として、他人様のお子さんのことをそんな風に呼ぶのは我ながら良くないと思う。だけど!この子にだけは神様も許してくれるんじゃないだろうか。というか、許して欲しい。


「そーごくんのじゃないでしょ!」
「ちげーよ、そもそもそいつ自体俺のもんなんでィ」
「ちがうもん!せんせーはみんなのだもん!」


また始まってしまった。最近本当に毎日こんな感じだ。和解させた方がいいのだが、この二人はどうも馬が合わないらしい。いつもこれが始まると私はもう一人のこのクラスの担当の先生を呼ぶ。私よりも少し年上で、しっかりしてる。この人がいないと私は毎日起こるこれを乗り切ることができない。さりげない動作で未だに言い合っている二人に気付かれないように呼ぶ。すると、またかと言いたげな表情でこちらに来た。


「ご本読むなら私のが上手よー」


そう言いながら女の子の方へ近寄って上手いことなだめて女の子を離れた所に連れていった。これで一安心、した途端に総悟くんが私の膝に乗ってきた。栗色のサラサラヘアーで、外見だけは天使みたいなのに。こいつろくな大人にならないぞ。サラサラヘアーを手でとかしながら小さく溜息をつく。


「俺に何か不満かィ?」
「何で総悟くんは女の子と仲良く出来ないかなー」
「そんなの、なまえしか好きじゃないからでィ」


こちらを見上げてくりくりとした純粋な眼で言ってくる。ていうか呼び捨て……不覚にも幼稚園にときめきそうになった。危ない危ない……


「…大人をからかうんじゃありません」
「本当なのに」


頬を膨らませていじける。そんなことしたって私何ともないんだから!きゅんときたりなんか………して、な……



ごめんなさい、
嘘です

(本当はすごくきゅんきゅんしました)




(なんだよこいつ、超可愛いじゃん)
(あ、そうだ)
(え?何?)
(なまえは特別に俺のこと、そーちゃんって呼んでいいぜィ)
(…っ!)
(…大人なんてちょろいや)





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