愛している宣言を受諾



「あのさぁ、紙っきれ一枚書くのになんでそんなに時間かかってんの?なまえ。」
「だって決まらないんだもん」

可愛く口を尖らせて俺を見上げるこいつは俺が担任のZ組の生徒。クラスでこいつ一人だけが進路希望の紙を出してこないから放課後、国語準備室に呼びだしたのが一昨日。なんだかんだ言っているうちに暗くなって、書かないまま帰らせなければならない時間になる。それが二日続いて今日は三日目。教頭やら学年主任やらにぐちぐち言われんのは俺なんだからさっさと書いて欲しい。


こいつの卒業が近いということを実感するのが嫌だった。こいつはちょくちょく国語準備室に遊びに来て少し話をする、そんななまえとの時間が好きだ。卒業したらなまえとは会えなくなる。教師である俺は生徒に手を出せるほどの勇気を持ち合わせてない。だが、こいつと長くいればいるほどこいつが愛おしくなっていく自分を抑えるのが大変になってきた。だからこそ早く進路の紙を書いてほしいんだ。


「将来やりたいこととか無いわけ?若いんだからさぁ」
「えー?無いよ。考えたことないもん」
「じゃあ今考えろ、今」

もう日が暮れかかってんじゃねーか。どうすんだ。また今日も決まらないままか?さすがの俺でもここまでくると心配になる。

うーん、と俺の言った通りに考えてるこいつを見て思わず溜息が漏れた。なんでそんなに可愛いんだ。これ以上お前を好きにさせないでくれ、頼むから。
悶々とそんなことを考えていると、なまえは突然思い付いたように声をあげた。

「あ…!」

そう言って進路希望の紙に何やら書き始めた。机を挟んで向かい合って座っているから少し距離がある。その所為で何を書いているかは見えない。少しして立ち上がり、書き終えた紙をこちらに渡してきた。何故かやけにこいつの顔が赤い気がする。

「はい」
「はいはい、んー」

その紙に目を通す。
………驚き過ぎて頭も体もフリーズだ。

「…え?」
「うん?

なんか達成感に満ち溢れた顔でこっちを見下ろしてくる。いやいやいや、んな顔されても困るんですけど

「おまっ、自分で決めてくんない?」

進路希望の紙には先生に一任します、と書いてある。一任されても困る。

「私は銀ちゃんじゃなきゃ嫌だけど?」
「うん、そうゆう問題じゃなくてね」
「あげる」
「は?」
「私の将来、銀ちゃんに」

ああもう、お前って奴は…

「じゃあ遠慮なく貰ってやるよ」
「銀ちゃん大好き!」

そう言うと俺の首に抱きついてきた。

「馬鹿だな、お前」
「えっ!」



愛している宣言を受諾



(でも、)
(何?)
(俺金無いから働け)
(えっ)
(だから進路希望書き直しー)
(ちょ、銀ちゃんが働いてよ!)
(俺、まるで駄目なおっさんだから無理ー)




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