今日も、




「坂田先輩、これ受け取ってください!」
「ああ、俺「じゃあっ!」」

そうやって手紙を渡して一週間。あの時は名乗りもしなかったし、手紙に名前書くのも忘れた。絶望的……
まあ叶わないよなあ、とは思ってた。でも叶ってほしいと願ってた。今だって願ってる。ずっと好きだったんだもん。入学式の日に一目惚れしてから。桜並木を歩く先輩が凄く格好よくて、桜がとっても似合ってて。見惚れてたら転んだ私を「大丈夫か?」って手を差し延べてくれた先輩も格好よかった。なんとか大丈夫です、と一言言って立ち上がると頭ぽんぽんしてくれたりなんかして。

でもやっぱりそんな格好いい先輩がモテないはずがなかった。部活に入ってない私だけど先輩を見るために放課後も遅い時間まで教室に残って校庭の先輩を眺めてた。部活が終わってから木陰に呼ばれて告白されているのを何度も見てきた。全て断っていたようだけど。当たり前だ。だって先輩には彼女がいるもの。知らないで告白する子も知っていて想いを伝えるだけの子もいるようだった。もちろん私は後者。わかってて告白した。なのに私は先輩の言おうとした言葉から逃げ出した。名乗らなかったんじゃない、名乗れなかった。

彼女がいる。
わかってたのに先輩の口からそれを聞くことに耐えられなかった。つくづく臆病者だ。でも期待する自分がいるんだ。想いを綴った手紙に名前の代わりに書いた電話番号に。


今日も、


私は鳴らない携帯を見つめるんだ




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