挨拶代わりの暴言




自習時間という名の自由時間。クラスの半分くらいは校庭でバスケやらサッカーやらをしてて、もう半分は教室で話していたり寝ていたりする、そんな和やかな時間。その和やかな時間を作り出させた張本人と、私は校庭の隅の木の下で二人座っている。

「しっかしお前はいつも本読んでんな」
「好きだから」
「まあ俺はこのゆったりした時間、結構好きなんだけどさ」

そう言った先生は煙草の煙を吐いた。私は本から顔を上げてないから見てはいないけど。

「でもたまには構ってくれよ」
「いつも構ってるじゃない」
「今だよ今。なんかもっと俺を意識して欲しいんですけど」
「………」
「なまえ?」

私は本を閉じて芝生の上に置き、立ち上がった。サッカーをしてる男子をぼんやりと見つめた。

「…してますよ」
「え、なに?」
「意識してなくない。さっきから全然ページ進まない」
「それはそれは」
「せっかくいい本なのになあ」

一度大きく伸びをして私はまた先生の隣に腰を下ろす。恥ずかしい台詞は言い終えた。すると先生は私がさっきまで読んでいた本を手にとって、ぱらぱらとページをめくる

「面白いの?これ」
「とても」
「ふーん。本の価値ってやっぱ高いの」
「どうゆう意味?」
「なんつーか、結局は紙じゃん。なまえは俺と本を選べって言われたらどっち?」
「何その女々しい質問…」


はぁ、と一つため息をついて、おじさんのくせに女々しいなあ、と言ったら頭をがしがしされた。まあ先生をおじさんだなんて思ったことないけど。

「何、答えてくんねーの?」
「答えてほしいの?」

うん、と期待の眼差しで見つめてくるもんだから思わず吹き出した。

「私さ、本をただの紙だと思ってる奴はゴミだと思ってるんだよね」
「………」

固まって呆然としている先生をみて、私は爆笑である。ああ、気持ちいい


挨拶代わりの暴言


(いや、あのよォ、さっきのは言葉の綾っていうか…)
(ねえ先生、じぇーおーけーいー)
(なにそれ)
(だからさっきのは、"じぇーおーけーいー"だって)
(joke…ジョーク…?)
(いえあ)
(ばっかやろー、大人をからかうじゃありません!)


title:空をとぶ5つの方法




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