夢よりも甘い現実を





頭痛い。寒気する。

仕事から帰って体の異変に気付き、試しに体温を計ってみたら38.5℃風邪だ。もうこれは明らかに。計らなければよかったと若干後悔しつつも寝間着に着替えて布団に潜り込んだのは昨日の夜。幸い今日は仕事が休みなので仕事の心配をする必要はないが、休日は銀ちゃんのとこへ行くのが習慣になっているので連絡を入れておかねばならない。熱はまだ下がっていないようで未だに寒気がして頭痛も酷く、布団から出る気はしなかったので布団に入ったまま携帯に手を伸ばした。
……でも珍しく仕事が入ったようで、行けない理由も言えないまま性急に切られてしまった。画面に通話時間の表示された携帯を閉じて、枕に突っ伏した。


―――――――――


額に突然冷たい何かが触れる感触で目が覚めた。どれくらい寝ていたのだろうか。ゆっくり目を開けると見慣れた銀色。

「…あ、れ。銀ちゃ…?」
「こんなこったろうと思った」
「…?」
「ちょっと待ってろ、冷やすもん持ってくっから」

そう言って銀ちゃんは台所へ向かう。額に触れたのは銀ちゃんの手だったようだ。枕元にあった携帯に手を伸ばして時間を確認すると、電話をしてから1時間も経っていなかった。
しばらくして戻ってくると氷水とタオルとコップ一杯の水を持っていた。銀ちゃんは横たわる私の背中に手を入れて起き上がらせた。

「とりあえず水飲め。汗かいてるし、声掠れてるし」
「ん、」

素直にコップを受け取って水を流し込む。そういえば凄く喉が渇いていて、水が喉を通り過ぎるのは心地いい。

「……仕事は?」
「新八と神楽に任せた」
「そんなの駄目。今からでも行ってきてよ。私は大丈夫だから」
「お前がそう言うと思って来たんですー」
「そもそも私、具合悪いなんて言ってない……」
「声聞きゃわかるってーの。俺そんなに信用ないわけ?」
「そ、そうゆうわけじゃ…」
「だったらもう大人しく寝とけ」

銀ちゃんは氷水に浸したタオルを私の額に乗せて、ゆっくり私の髪に指を滑らせる。心地よさに任せて目を閉じると眠気が襲いくる。でもその眠気に少しだけ抵抗して、うっすらと目を開けた。

「ありがとね」
「おう」
「銀ちゃん、すき」
「おう」
「………」
「何?」
「銀ちゃんは言ってくれないの?」
「治ってからな。聞きたかったら早く治せ」
「うん」

目を閉じて、今度は眠気に身を任せる。次に目を覚ましたら風邪が治ってるといい。そしたら二人でゆっくり休日を満喫したい。



夢よりも甘い現実を


title:確かに恋だった



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -