※死ネタ

こんなことになるなら私が殺せばよかった。私がやればよかった。


私の腕の中にはどんどん冷たくなっていく人間が一人。
ああ本当に、何で早く殺ってしまわなかったのか
でもそんなの無理に決まってる
だって私はこの人が好きだ




半時ほど前、この人は私の同僚に殺された
私が任務を早く遂行しなかったからだ
私の任務は鬼兵隊に潜り込み総督である高杉晋助を暗殺することだった
船の女中として潜り込むことに成功した私はすぐに高杉晋助に近づいた
でも無防備なようで隙のないこの人を暗殺するのは案外難しく予定よりも長く潜伏することになった
長引いたことにより私は高杉晋助という人物に惹かれていった
彼も私を気に入ってくれた
しかし予定通りにいかないことに上司は機嫌を損ねたらしく、同僚を一人送り込んできた
私よりも腕のある奴だった
一瞬動くのが遅かった
防げたはずなんだ。守れたはずなんだ、私の大好きな人を。
腕の中で彼の血の気が引いていくのを感じることなんかなかったはずなんだ。



「ごめんね…、守れなくて。…ごめんね」



私の涙が彼の頬に落ちる前に涙を拭う。
抱き抱えていた私よりも大きな体をゆっくり床に下ろし、まだ綺麗な頬をつうっと撫でて立ち上がる


そう遠くには行っていないだろう
そもそもアジトの場所は知っている



ねぇ待っていて。
これで全てが終わるから。
すぐにそっちにいくからね




だから一緒に、


海に還ろう


冷たくなった貴方と一緒に深い海の底で私も冷たくなるの



瞑目さまより


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