救われる
いつもと同じ朝なのに、いつもと同じ一日の始まりのはずなのに、何かが足りない気がした
妙な違和感を抱えつつ仕事先の甘味屋に行って、しばらく働いて昼休みになった時にいつもセクハラしてくる店長を試しに殺してみた
違和感は晴れなかった
それどころか警察に追われることになって、さらに気分は沈んだ
懸命に逃げている最中だが、体力に限界がきていた
細い裏路地に入って休憩するとパトカーのサイレンが聞こえてくる
もう駄目かもしれない
刑務所に入れられたところできっとこの違和感は無くならないだろうに
だったらいっそ死んでしまおうか。さっき店長を刺して血がついたままの包丁を眺める
「嫌だなあ」
「じゃあ逃げりゃいいだろう」
「だれ」
「俺を知らねえのかァ?」
「あ、高杉晋助だ…」
「ククッ、俺も逃げてんだ。一緒に来るか?」
「うん」
高杉が差し出した手を掴んだ瞬間、私は満たされた
足りないのはこの人だった
私の寿命は貴方のために使おう
(身も心も救われたから)