年の差なんて関係ないよね
秋の季節が終わりが近づき始めると肌寒い。屋敷の縁側で日向ぼっこをしていたサフィアは肌寒さに震える。冷たくなった手に息を吐きかけ温めると頭上に温かい羽毛が被せられた。
「寒いのであろう」
鳳凰が身に纏っている羽毛だと気づくとサフィアは慌てて羽毛を返すように差し出した。
「あ…あのあのあのっ、そんな、畏れ多いです」
「お主は頭領だとしても童なのだ。童が大人我慢するものではない」
羽毛を取られ、首に巻かれる。羽毛から人肌が残った温もりと鳳凰の匂いにくらりと眩暈を覚えた。
「どうだ。暖かくなっただろう」
「は、はい。ありがとうございます」
「うむ」
鳳凰は満足げに頷き、胡坐をかくとサフィアに手招きをした。
「おいで」
「ふぇ?」
「我も寒くなったのでな。主に温めてもらいたいのだ」
「は、はい。分かりました」
立ち上がり、小さい足でトコトコと鳳凰に向かって歩き出す。サフィアは少し躊躇った後、鳳凰の胡坐の上に座った。
「こ、これでいいですか?」
「うむ」
背中から腹に回された腕に声を上げて驚いたが、鳳凰は気にすることなくサフィアを抱きしめた。はわはわと顔を赤くし、慌てふためくサフィアを鳳凰は微笑ましそうに見下ろした。
「お主は可愛いな、サフィア」
「あぅ〜」
「可愛い、可愛い」
「ほ、鳳凰様!僕をからかわないでください!」
「ん?我は本心を言っただけだぞ」
「でも、僕は鳳凰様には可愛いなんて思われたくないんですっ!」
「ふむ。それでは何と思われたいのだ?」
「そ、それは…その」
途端に顔を一層赤らめて黙り込む。鳳凰とてサフィアが何を言いたのか分かっている。彼女は幼いながらも自分の事を好いている。父親の情のような親近感ではなく、異性の好きであることに。
サフィアを落ち着かせるために彼女の頭をあやすように撫でると、決心したのか鳳凰に向き直り姿勢を正した。
「鳳凰様!」
「む?」
「す、好きですっ!僕を娶ってください!」
「ほう」
「でも、僕は鳳凰様に相応しくない女子と分かっています。で、ですから妾でも側室でもいいのでお傍にいさせてくださいっ!」
「よいぞ」
「えっ!?…そ、そんな、あっさりでいいんですか?」
拍子抜けしたように目を丸めるサフィアに鳳凰は頷く。里の長として身を固め子を作れと常々言われてきたが、鳳凰自身は子孫を残すことに執着がなかった。女も然り。若い頃は女道楽があっても今は落ち着いた年齢になったせいか女にも執着を感じなくなった。
「主なら我は喜んで妾や側室などではなく正室として迎えよう」
「ふぇえ!!?」
「嫌か?」
「い、いいえ!そんなことは!むしろ、嬉しいですぅ!!」
「うむ。ところでサフィアよ、年は幾つだ?」
「え、えっと6つです」
「ふむ、6つか。我と祝言を挙げるのは些か早すぎるな」
「しゅ、祝言っ…」
「6年後なら丁度いいだろうが、6年は長いな…2年後なら…。サフィアよ、2年後でいいか」
「あ、あのあのあの!」
「む?」
「ぼ、僕で本当にいいんですか?」
サフィアは気恥ずかしげに目を逸らしながら言った。鳳凰が差し伸べた手をサフィアは目元を赤らめながら手に取ると、彼は嬉しそうに笑った。
「サフィアは我が好きなのだろ」
「はい」
「我もサフィアを好いている。それだけの理由で十分ではないか」
小さいサフィアの手を加減しながら握ると、彼女の方からも握り返してくれた。
年の差なんて関係ないよね
(一途で清らかな心に惹かれたのだ)
秋桜
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