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その日の放課後は、俺の部活が終わるまで真桜と健弘が中庭のベンチで暇を潰しているようだった。


外周を走りに行く前に中庭を通ったら二人が居て、遠巻きに真桜のことを見ている女子まで居ることに気付く。


俺が近くを通ると、にっこり笑って小さく手を振ってくる真桜。…かわいい。

普段はかっこいい、イケメンだとチヤホヤされている真桜なのに、最近の俺は真桜に対して“かわいい”と思ってしまう時がある。…多分、愛情から湧いてくる感情なのだろうか。


俺はほんの少しだけ真桜に笑みを返して、外周を走りに行った。



俺の部活が終わったあと、健弘はさっさと帰っていった。今日はバスケ部員たちが寄り道を誘ってくることもなく、俺は真桜の家にお邪魔する。

1階では真桜のお母さんが夕飯の準備をしているところのようで良い匂いが漂っている。


家にお母さんが居る時は、スタスタと2階に上がっていく真桜。しかし部屋に入った瞬間に、真桜は俺の方へ勢い良く迫ってきた。


「うわわわわわっ!!」


真桜の勢いが良すぎるあまりに、ベッドの方までよろめいて、ベッドの上に尻餅をつく。


「タケいいなぁ、柚瑠と名簿前後なの羨ましい。」


真桜はそう言ったあと、俺の肩に手を置いて顔を近付け「チュッ」とさっそく唇を重ねてきた。それから俺の背を撫でるように腕を回し、再び「チュッ」とキスをする。


「…はぁ。柚瑠に全然触れない…。」


いや今触ってるだろ。と思いながらも、クラスが離れたことが相当残念なようで、ここぞとばかりに俺に触れる真桜に俺は大人しく触られていると、徐々に俺をベッドの上に押し倒すように迫ってきた真桜。


いつも以上にその動きは積極的で、ベッドの上に腕をついた真桜が、その手で俺の髪を撫でながら、深く交わるキスをしてきた。


「ン、…ぁ…っ」


俺はその瞬間、自分の声ではないような声が口の隙間から漏れ、口を塞ぎたい気持ちになる。

しかしそんな俺を、赤く火照った顔をして見下ろしてきた真桜が、さらに俺の唇を舌で割って、口内に舌を捻じ込ませる。

俺の舌と絡ませて、「チュ、」「チュ、」と何度もそんな音と共に俺の唇に吸い付かれ、激しいキスに頭がおかしくなりそうだ。


「ンっ…、まおっ…ハァッ…」


呼吸をするのでいっぱいいっぱいになっている俺のトレーナーの下から、不意に真桜が手を入れてきた。


「ッ…、あ…っ」


真桜が俺にねっとり絡みつくようなキスをしたまま俺の横腹を直に撫でてくるから、身体がぞわぞわと反応してしまい、思わず真桜を膝で蹴飛ばしそうになった。


なんとか蹴飛ばしはしなかったものの、真桜の背中をバシバシと叩くと、真桜はようやく俺の口から唇を離してくれた。


しかしポーッとした顔で俺を見下ろしているから、恥ずかしさで目を逸らしたくなる。


「…触り方がやらしいな。普通に反応して恥ずかしかったわ。」


俺はなんでもないふうに装いながらそう言って、身体を起こそうとするが、真桜にそれを阻まれ、起き上がれない。


「…柚瑠見てると止まんなくなる…。」


そんなことを口にする真桜が、もう一度チュッとキスをしてきたあとにギュッと抱きついてきた。


こんなに密着していたら嫌でも真桜の下半身が反応していることに気付く。それは恥ずかしいことに自分自身も同じで、真桜にも気付かれているだろうか?と考えたら居た堪れない。


「柚瑠の腹すげえ綺麗、…もっと見せて?」


そう言いながら真桜は俺の太腿の上に跨った状態で、俺が着ていたトレーナーとシャツを捲り上げてきた。


「…え、いや……綺麗か…?」


日々の努力の成果もあり、ぽこぽこ、といくつかに割れた俺の腹筋のついた腹を、両手ですりすりと撫でてくる真桜。


女でもあるまいし、俺の腹が綺麗だと言う真桜の気持ちはあまり理解できない。


俺はベッドの上に背中を預けた状態でそんな真桜を見上げていると、俺の腹を撫でていた真桜の手が徐々に移動して、俺の乳首に触れてきた。


最初は親指の腹でクリクリといじってきたかと思えば、何を思ったのか顔を近付け、チュッと吸い付いてきた真桜に俺は目ん玉が飛び出そうになった。


「まさか乳吸われるとは。」

「…嫌?」

「もう好きにして。」


乳吸われた後に聞かれてもな。と思いながら脱力気味にそう返事をすると、真桜はにこりと笑って今度は逆側の乳首を舌でレロレロと舐めてきた。


あー…身体変になりそう。

これは分かっていたが、俺多分いつか、真桜に抱かれんじゃねえの?って、なんとなくそんなことを考えながら、俺の乳首を舐め回している悪趣味な真桜の、綺麗な顔面を眺めていた。



「真桜ー、ご飯できたからねー。」


夜の7時頃になると、真桜のお母さんが下の階から呼びかける声が聞こえて来る。


すると真桜は、残念そうにしながら俺の身体の上から退き、俺の捲れ上がったトレーナーとシャツを下ろしてくれた。


「…じゃあ俺そろそろ帰るわ。」

「…はぁ、…短い。」


短い?一緒に居る時間のことか?

名残惜しそうに俺の手を握ってくる真桜は、部屋を出る前にチュッとキスをしたあと、玄関まで帰宅する俺を見送ってくれた。


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