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「ねー真桜くん、期末テスト終わったらどこか遊びに行かない?」
相変わらず真桜に話しかけているクラスの派手な女子の声が、教室に響いていた。それは見慣れた光景で、3時間目の授業後に早弁しながら、俺はその声を聞いていた。
真桜と関わりを持てば持つほど気付くことが多い。
意外と友達が少なかったり、一方的に好意を持たれている女子に話しかけられているだけってこととか。
チャラそうで、当たり前に彼女が居そう、なんて勝手なイメージを抱いていたことが、今になって申し訳なく思う。
「えっ?真桜くんどこいくのー?」
半分だけにしとこうか、それとも全部食っちまうか?と早弁する量に悩みながら卵焼きを箸で挟み、パクリと口の中に入れた時、俺の目の前の今は休み時間で空席だった椅子がガタッと引かれる音がして、見上げた瞬間真桜がドカッと席に座った。
近くの席で勉強していた女子が、ハッとした顔で真桜を見る。ハッ、ていうか、心臓はドキッかもしれない。
「朝練無くても早弁するんだ。」
「あー、昼休みは外行くから。」
「昼休みにお腹減らねえの?」
「バスケ部の奴に誘われたら食堂行ってる。」
「ほんとによく食うな。」
真桜はそう言いながら、へらりと笑った。
そんな中、今真桜が座っている席に持ち主の女子が戻ってくると、その女子は口に手を当てて近くの席の女子とコソコソ会話をし始めた。
他の男子が座ってたらすぐ『退け』って言うくせにイケメン相手に現金なやつ。
「そういや真桜っていつからピアスつけてんの?」
「…あ、これ、春休みにタケがピアスつけようって言い出して。」
なんとなくふと疑問に思ったことを問いかけると、真桜は片手でピアスを弄りながらそう教えてくれた。
やっぱ健弘の影響か。
こりゃ髪染めてんのも健弘の一声があったからだろうな。
どちらかと言えば大人しい性格の真桜の、見た目のインパクトが強すぎる。…と、いじいじとピアスを触っている真桜を見ながら思ったのだった。
休み時間終了のチャイムが鳴り響くと真桜は立ち上がり、自分の席に戻って行き、入れ違いに真桜が座っていた席の持ち主が、弁当の蓋を閉じていた俺の方を向きながら席に座った。
「ちょっとちょっとぉ!七宮って高野くんと仲良かったっけ!?」
「…まあ。」
話すようになったのは最近だけど、真桜と喋るたびにこんな反応をされるのは面倒だな。と思い、適当に頷く。
「高野くんが座ったあとだからすっごい良い匂いしそう。」
そう言ってパタパタと手で扇いでるその女子に、ハハハと乾いた笑い声を漏らす。何言ってんだか。って呆れたけどそういや俺も似たようなことを考えてた時があったかも。
チャラい=香水のイメージでもあったのだろうか。
真桜と一緒に居ても無臭で、なんならちょっとシャンプーの良い匂いがする程度だから良い匂いっちゃ良い匂いなんだけど。
「それにしても、いっつも吉川さんと話してるイメージしか無かったからびっくりしたー。」
そう言いながら、前を向いた女子の発言に、“吉川さん”…誰だっけ。って考えた時、ふと真桜に話しかけていた派手な女子が不機嫌そうな顔でこっちを見ていることに気付いた。
ああ、“吉川さん”ってあの女子のことか。
何気なく視線を合わせると、パンツが見えそうなくらい短いスカートで足を組み、偉そうな態度でフンと俺から目を逸らした。
こえー、なんだあれ。
真桜の前じゃぶりっ子確定だな。
まあ俺には無縁の女子だけど。って、少し前の真桜に対してと同じような感情を、その時俺は吉川に対して思っていた。
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