11 ☆ [ 12/90 ]
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高野 真桜は、俺の小学生の頃からの友人だ。
昔からやたらかっこよく整った顔立ちをしていて、真桜の周りにいつも女子が真桜と喋りたそうに近付いてくる。
かく言う俺も、その容姿に引き寄せられた一人で、真桜に話しかけまくっているうちにだんだん仲良くなれた。
中学も一緒で、高校は俺が誘って同じところを受験した。真桜目当てで同じ高校を受験した女子がいるのを何人も知ってる。
真桜と一緒に遊びに行こうとすると、よく女の子もくっついてきた。まあ俺は賑やかなのが好きだし、誘われても断ることとかあんまりなかったと思うけど、真桜はもしかしたら嫌だったかも。
昔から大人しい奴だったから、俺が真桜を振り回してしまってるみたいなところはあるかもしんねえけど、真桜は不満を口にすることがあまりなかった。
だから、真桜が嫌がることを気付いてやれてねえとことかあるかもしれない。
例えば、女子からの誘いとか。
『○○ちゃん、真桜のこと好きなんじゃね?』
誰が見ても分かる女の子の態度に真桜はどう思ってるんだろうとそんなふうに問いかけても、真桜は無言で首を振った。
『付き合ったりしねえの?』
『俺は好きじゃねえし。』
『ふうん。』
まあ好きでもない子と付き合わないのは普通のことだけど。いい雰囲気だったり、ちょっと良いなって思った子とかいねえのかよ。って、真桜に対してそんな疑問は常に抱いていた。
そんな真桜が、最近なんか変なことに気付いた。
そりゃ小学生の頃から知ってる俺からすれば、真桜の変化に気付くのなんて余裕だ。
いつも一緒に学校に行ってたのに水曜日だけ遅れて行くと言ってきたり、かと思えば俺が登校してから真桜のクラスを覗くと遅れるどころかすでに着席してるし。
“これは何かある”という直感。
そして、それを目の当たりにしたのがフードコートでバスケ部が集っていた時だ。
何故かあからさまにアタフタしている真桜。
いつも真桜のことばかり見てる女友達も、『真桜くんなんか変だったねー。』と真桜の様子を窺っている。
その後も話しかけても反応が鈍いし、それになんか、妙にチラチラと隣のバスケ部を気にしている感じ。
バスケ部って言ったら、同じクラスの奴は毎朝朝練してるみたいで終わった後にすげー飯食ってるし、休み時間も何かしら食ってるし、昼は外で身体動かしに行ってるみたいで、そんでから放課後は部活。
俺や真桜とは全然タイプが違う典型的な体育会系だ。
一体バスケ部になにか気になることでもあるのか?と疑問に思った俺は、その翌日から同じクラスのバスケ部の奴との絡みを増やした。
そして一つ、
バスケ部から聞いた話にピンときた。
『水曜はバレー部が体育館使ってるから外練なんだよなぁ。』
ぼやくようにそう話すバスケ部。
重要な部分は“水曜日”という点だ。
バスケ部と水曜日、真桜が変な理由に結び付く。
それから昼休みにまたひとつ、俺はあることに気付く。
昼飯を食った後、よく風に当たりに行くと言って窓際に行く真桜。今まで何も疑問に思わなかったけど、真桜が見下ろしていた窓の外…グラウンドには、バスケ部がボールを持って遊んでいた。
バスケ部、水曜日、グラウンド…
この3つが結びついた時、また俺はピンときてしまった。
真桜は水曜日の朝、グラウンドで朝練するバスケ部を見に行ってるのでは?
でも、じゃあ、誰を?
俺の中で候補を上げるのは簡単だった。
フードコートで真桜の横に居たやつは、
確か真桜と同じクラスだったはず。
七宮 柚瑠。背丈は真桜よりほんの少し低いくらい。だぼっとした練習着を着て、手にはおにぎり。身なりを一切気にしてないような、跳ねた前髪。目鼻立ちは、悪くないけど真桜で見慣れてる俺からすれば普通のどこにでもいるような感じ。強いて言えば運動部なのに、色白で肌が綺麗だ。
仮にこいつのことを真桜が見に行ってるとしたら、俺は不思議でしょうがない。
けれど、こいつの前での真桜は、
笑えるほど挙動不審で、変だった。
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