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「今日永遠くんとラーメン食いに行ってトウヤくんって人に会ったわ。兄貴も仲良いらしいな。」


今日はバイトが休みな兄はずっと家に居たようで、リビングで顔を合わせてそう声をかけたら、「今日は二人で出勤だったんだ」と興味を示してきた。


「トウヤくんと一緒に出勤してる時はいっつも二人で片桐さんの話してる。かわいいとか癒されるよなぁって。」

「おぉ…、そうなんだ。トウヤくんもお姉さんのこと気になってたりすんの?」

「そういう話はしたことねえけど『おっさん客がすぐ片桐さんに絡んできてキモイ』とか『大学生がまた片桐さんに絡んできた』とか言ってよく怒ってるな。」

「うわぁ、香月が聞いても怒りそうな話だな。トウヤくんはお姉さんのことどう思ってんだろ。」


俺が『香月』という名前を出すと兄はすぐに苦い表情を浮かべた。何故なら兄は、香月が永遠くんのお姉さんに猛アピールしていることを知っているからだ。


『俺にはあそこまでの熱烈アタックは無理』と言ってすぐに尻込みしてしまったのが、人付き合いが苦手でコミュ障な俺の兄である。


「光星また片桐さんとサッカー見に行くの?」

「あー明日見に行くよ。しかも準決勝。」

「すげぇ、香月くん上手いんだろうなぁ…」

「お姉さん何か試合見に行った話してた?」

「サッカー見るの結構楽しいって。」

「おぉ、まじか。」


『良かったなぁ香月』と心の中で思う反面、香月とは正反対のすぐ尻込みしてしまう兄の性格はどうにかならないものか、ともどかしくなったりもする。

まあ兄も自分の性格にとやかく言われたくないだろうから俺は何も言う気はない。


「俺もトウヤくんに誘われたから今度サッカーの試合見に行くことになった。プロのやつ。」

「え、…トウヤくんに?」

「片桐さんの話聞いてたら自分も行きたくなったんだって。」

「…へぇ、そうなんだ。兄貴が人と出かけんの珍しいよな。」

「うん。」


トウヤくん…永遠くんのお姉さんではなくよくこの兄を誘ってくれたな。この人休みの日引きこもりなのに。

…と、俺がトウヤくんに少し好感を持った瞬間であった。彼は多分、見たまんまのイメージ通り人が良さそうだ。





その翌日、俺は永遠くんとお姉さんと一緒に香月の準決勝の応援に行った。

結果は1対2という熱い戦いを勝利した香月に俺は興奮して帰り道ずっと永遠くんと試合の話が止まらなかった。

間違いなく俺たちの学校のサッカー部は香月が主軸となっているチームだが、そんなチームの主軸が赤点取って補習で練習に出れなかったら、そりゃ顧問も香月を怒るよなぁって、今ならよく理解できる話をして永遠くんと盛り上がっていたら、それを横で聞いていたお姉さんもクスリと笑っていた。


時刻はまだお昼を少し過ぎた頃で、俺と永遠くんはお姉さんと電車で別れて外で昼食を済ませてから久しぶりに永遠くんが俺の家に遊びに来た。

鍵を開けて家の中に入っても1階は静かだったから、家族は出掛けてるか自分の部屋の中にいるのだろう。

何を期待しているのか、自分の部屋に永遠くんを招くのは付き合ってからは初めてで、少しドキドキする。


「光星の部屋久しぶりやなぁ。」


永遠くんはそう言いながら、二人きりになってすぐに俺に抱きついて来た。永遠くんから見上げられている視線を感じて、頬に触れると永遠くんはすぐに目を閉じる。

一度ゆっくりキスをして、続けて何度もキスを繰り返しているうちに、次第に俺の身体はムラムラと永遠くんの身体を欲してきてしまった。


「流星くん今家居はらへんの?」

「…さぁ、どうだろ。」

「見てきて。」


良いところで永遠くんは俺の動作を止め、そう促してきたから俺は渋々部屋を出て流星の部屋をノックしてから中を覗いた。


「…あ、居たんだ。」

「ん?なに?」

「いや、…べつに。永遠くん遊びに来たから。」

「ほんと!?」


流星は部屋で静かに勉強していた。永遠くんが来たことを伝えると、嬉しそうな表情を浮かべて椅子から立ち上がる。

二人で部屋を出て俺の部屋を覗くと、永遠くんは俺のベッドにごろんと横になりながらスマホを触っていた。

あーっクソッ…!
もっとイチャイチャしたかった…!!


「あっ!永遠さん久しぶり!!」

「おぉ〜!流星くん久しぶり〜家居ったんや〜!お邪魔してま〜す。」


永遠くんはベッドに寝転がりながら流星の方へ視線を向け、ふりふりと手を振った。

…あぁもうかわいいなぁ…。自分のベッドに永遠くんが寝転んでる、というシチュエーションだけでムラムラしてしまう俺って変態かなぁ…。


結局その後、永遠くんはゲームをしたがる流星に取られてしまい、俺は二人がゲームしている光景を大人しく眺めていたのだった。

永遠くんは俺の恋人なのになぁ…。弟の前で独占欲を出すわけにもいかず、我慢するのも一苦労だ。


貴重な休日に永遠くんとえっちなことできなくて残念…だなんて思っている俺は、もはや頭の中そればっかりで、やっぱり自分はむっつりスケベだったのかと頭を抱えそうになった。


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