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「俺だってるいをイかせたい。」


ある日突然何を思ったのかそんなことを言って、俺の股間に手を伸ばしてきた航に、俺は「え…」と少しの焦りを見せた。


夜、夕飯を食べ、航が俺の部屋へ来ることは今となってはもう当たり前のようだが、部屋に入るなり「ムラムラする」と言った航がムッとした顔で、「ふぅ」と携帯を弄りながら床に座って一服していた俺の隣に座り、それから股間に手を伸ばしたのだ。

突然のことに驚いて航に視線を向けると、航は「やっぱり不公平だと思うんだよ。」と俺に語りかけてきた。


「なにが?」

「るいは俺に抜かれたいと思わねーの?」

「まあ。特には。」

「……うううっ!!」


航の問いかけに頷くと、航は唇を噛み締めて俺にジトリとした視線を向けながら唸り声を上げてきた。


「俺のはイジりまくるくせに!?俺にはイジらせてくんねえの!?」

「おいいきなりどうした。」

「…今日モリゾーに矢田くんの抜いてあげてる?って聞かれた。」

「…またあいつか。」

「抜いてあげてないって言ったら俺なんて言われたと思う?」

「なんて言われたんだ?」

「そんなんじゃ愛想尽かされるぞって言われたんだぞ!?」

「バカ、そんなんで愛想尽かさねーよ。」

「矢田くんのおちんこさまに不満な思いさせてんじゃねーのって言われたんだからな!?」

「は?モリゾー明日絞めるわ。」


顔を赤くしながら恥ずかしそうにモリゾーに言われたことを口にする航に、俺はモリゾーに殺意が芽生えた。あのスケベ野郎は一回死んだほうがいい。


「…俺もさ、気になってたんだよ。」

「なにが?」

「るい俺のイジってた時勃ってたじゃん。あのあとどうした?」

「風呂で抜いたけど。」

「なんでそれを俺にやらせてくんねえわけ!?」

「航くたばってんじゃん。」

「…言ってくれたら頑張るんですけど。」

「別に抜いてほしいとか思わねーし。」

「…ううううう!!!!!」


俺の発言に航はまた唇を噛み締めて唸り声を上げた。なんでこんなに怒ってんだこいつ。


「俺のはいじくりまわすくせに!?」

「だって航の気持ち良さそうにする顔好きだもん。」

「っっくぅ〜!!!!!」


航は耳も顔も赤くして、ダン!ダン!とゴリラのように床を両拳で叩いた。


「だからそれが不公平なんだって!」

「は?」

「俺だって見たいって言ってんの!」


そう叫んだ航が、勢い良く俺の身体を押し倒した。


「え、ちょっと待てよ、俺今全然そんな気分じゃねんだけど。」

「俺がそんな気分にさせる。」


航は真剣な顔つきで、俺の股間をズボンの上からもみもみと揉み始めてしまった。

まあいいか。としばらく航の好きにさせることにして、俺はジー、と俺の股間を触っている航を見つめる。


いつにも増して真剣な表情だ。そんなに真剣な顔してやることかよ、って思って無意識にクスリと笑ってしまった俺に、航はキッと俺を睨みつけてきた。


「なんでそんな余裕なんだよ!!」

「え、いや別に余裕ではないだろ。」

「気持ち良くねえのかよ!!」

「きもちいきもちい。」

「嘘くせえ!!!!!」


航は怒ったように吐き捨てる。

俺はどうすればいいのか。


「もう直に触るからな!!」

「…え、うん。」


若干躊躇ったが、拒否ると航がうるさそうだから大人しく頷くと、航は俺のズボンとパンツを少し下げ、直ににぎにぎと握ってきた。


「…ちょっとあなたぼっきふぜんなわけ!?」

「…え、いや普通に勃ちますけど…。」

「全然勃たねえじゃねえか!?」

「……。」


俺はにぎにぎ、ゆるゆると触られた状態でそう言われ、苦笑した。だから俺、そういう気分じゃねえって言ったんだけど……。


「はぁ…」とため息を吐いた俺は、身体を起こして航の身体を両足で囲い、航の首に両腕を回して、航の肩に頭を置いた。


「……え、なに。」

「はい。じゃあ触って?」

「……うん。」


ちょっと窮屈そうだが、俺の足の間に座った航が俺の股間にあるものを上下に扱く。

真剣な顔をして扱いている航の首筋に口を寄せ、ペロリと舐めてみると、航はジロ、と俺を睨みつけてきた。


「ちょっと俺今真剣だからそういうの禁止。」

「うわー萎えるわー。そりゃ勃たねえよ。」

「……え。」

「航くんとちゅーしたら勃つと思ったんだけどなー。」

「……え。」


そう言って片手で航の唇を弄ると、航は少し考えるように黙り込んだ。

そして数秒後、「ちゅっ」と航は俺の唇に口付けてくる。だから俺は、そんな航の唇を舌でこじ開けようとしたら、「あ、タンマ。」と止められた。

おいおいまじで萎えるっつーの。

…と思っていると、「俺が入れる。」と言ってきたから、あ、そういうこと。と思って俺はにっこりと笑い、航の舌を受け入れた。


俺の口内を彷徨う航の舌に、それから俺の股間にあるものを触る航の手。

俺を気持ち良くさせようと頑張っている航に、俺はちょっとずつ興奮してきたようで、航の手と股間にあるものが濡れ始めた。


「…濡れてきた。」

「航くんに”そうゆう気分”にさせられましたからねぇ。」


そう言ってにっこり笑うと、航は何故かまたムッとした表情を浮かべる。なんでだよ。勃ってきたんだから怒んなよ。

航の態度に不思議に思い、「ん?」と首を傾げると、航は突然「おかしいだろ!!」と叫んだ。

え、ちょっとまじで意味がわからない。


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