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「あっやっべ、国語の教科書忘れた!」
休み時間にそう言って、慌てて隣のクラスに教科書を借りに行ったモリゾーの鞄の中には、エロ本が入っていた。
もしかしてあいつ、エロ本と国語の教科書間違えたんじゃねえの?とみんなで笑っている中、俺はモリゾーのエロ本をそっと手にした。
「おお…。」
表紙にはボインと大きなおっぱいを曝け出しているお姉さんが、セクシーなポーズを取っている。
「あれ〜?なになに航、エロ本に興味持っちゃってぇ〜。」
クソカベがそう言いながら、つんつんと俺の頬っぺたをからかうようにつついてくる。
「エロいな。」
「そりゃあエロ本だからな。それにモリゾー、どエロだからそれ航には刺激強いんじゃね?」
ペラリとページを開いて、エロ本の感想を述べると、クソカベも俺の横からエロ本を覗いて、俺にそんなことを言ってくる。
「…っおお…、エロいな。」
「だからエロ本だからな。って聞いてんのかよ俺の話。」
さらにページを進めると、M字開脚しているお姉さんが一面にどどんと。
「…エロいな。」
「何回言うんだよ。」
3回目の俺の同じ発言に、クソカベにとうとう笑いながらツッコミを入れられ、頭をパシンと叩かれた。
さらにページを進めると、【 女性を気持ち良くするテクニック 】という見出しに、なにやらつらつらとエロ本のクセに文字が並んでいたから、俺は無意識にその文字を追っていた。
「おいおい、航はちげーだろ?」
すると横からクソカベにそんなツッコミを入れられる。
「なにが。」
「それは女の子にしてあげることな。」
「あんまり変わんねえだろ。」
「いやだいぶ変わるだろ。」
クソカベは呆れたように俺を見る。
「変わるか……。」
「ああ変わるな。」
「……そっか。」
俺はそっとエロ本を閉じて、モリゾーの机の上に置く。
「こらー誰だこんなエッチな本を持ってきてるやつはー。」
「モリゾーくんです。」
俺がエロ本を机に置いた直後先生が教室に入ってきたようで、エロ本は先生に取り上げられた。
国語の教科書を借りて帰ってきたモリゾーは、先生の手にあるエロ本に「えっ?えっ?あれ俺のじゃね?」と困惑するような表情を浮かべていた。哀れなモリゾーくんである。
「俺もエロ本買ってみよっかなー。」
「おお。航大人の階段のぼるか?」
「エロ本ってみんな本屋で買ってんの?恥ずくね?」
「赤信号、みんなで渡れば怖くない!」
「エロ本も、みんなで買えば恥ずかしくない!」
「あ、つーか俺の部屋くる?」
「あ、行きたい。AV見よーぜ。」
「…えーぶい。」
「アダルトなビデオな。」
「……お前持ってんの?」
「うん。寧ろ無いと生きてけない。」
「そんなに!?」
どうやらモリゾーのどエロというのはマジな話らしい。しかしモリゾーの発言に驚いていると、「いや男は1個くらいAV持ってて普通だろ。」と言われたから、「いやいやいや」と首を振った。
「俺持ってませんけど!?」
「航それやべえって。」
「そんなんで矢田くん満足してあげれんの?」
「え、…あの、」
「やっぱさ、男にはそれなりの知識ってもんが必要だろ。」
「そうそう。やっぱ一番楽しい勉強はAV見ることだよなー。」
「それ勉強か!?」
「何言ってんの、立派な保健体育の勉強じゃん。」
俺は友人の発言を聞いてその時思った。俺って不真面目不真面目って言われてたけど、結構真面目じゃね?って。
*
「おじゃましまーす」
「航俺の部屋来てて怒られねえ?」
「るい今日は生徒会だし。」
「俺の部屋行くって言ってんの?」
「言ってねえ。」
「言わないほうがいいだろ。」
「うんうん。AV見んだから。」
ま、まじで見るつもりか……。
ぞろぞろぞろ、モリゾーの部屋におじゃまする。メンバーはクソカベとなっちくんと俺。当たり前のようにモリゾーの部屋に入るクソカベと、なにやらAVというものに引かれてやってきたなっちくん。そして何故か放課後にはすでにモリゾーの部屋に行くことになっていた俺。
のこのこついて来たのは、多分俺、なんていうか、そういうテクニックを身に付けたかったからだ。
なっちくんもえーぶいを持ってない同類だったから、俺たちはちょっとそわそわしながらモリゾーの部屋におじゃました。
「ポップコーン食べながら見た方がいい?」
「バカ、映画じゃねんだよアダルトなビデオだっての、アダルトなビデオ。」
「18禁だろ?俺らまだじゅうななだよ、なあ航?」
「うむ。そもそもお前が18禁なえーぶいを持ってんのおかしい。」
「はあ?なに言ってんの、今時小学生だって見てるっつーの。」
「は?おまえそりゃ言い過ぎだろ!」
「いやまじまじ。」
えーぶい慣れしているモリゾーとクソカベは、どれ見る?これ見る?となにやらヤラシイパッケージのDVDケースを手にしながらあれこれ会話をし始めたから、俺となっちくんはモリゾーの部屋のベッドに腰掛けて、そんな二人を眺めていた。
「あ、航にフェラシーンあるの見せてやろうぜ。お勉強だお勉強。」
「ああそれ必要だな。確かこれ超イイ感じだった。」
「おお、じゃあそれ見ようぜ。」
「そうするか。」
なにやらどれを見るか決まったらしいモリゾーは、ノートパソコンにDVDを挿入した。再生ボタンにカーソルを合わせ、クリックするモリゾー。
「え、はじまった?」
「えっえっ俺ちょっとみんなでこんなん見んのとかはじめてで、どうしよう恥ずかしいんだけど…!」
「なっちくん心配すんな、俺もだ。」
「だよね、え、てかモリゾーの片手やばいズボンの中入ってるっ!」
「あ、ほんとだあいつガチなタイプのスケベだなこういう時どうする?見て見ぬ振りするの?おちょくったらいいの?」
「うわ、見て、モリゾーもう扱いてんだけどねえこんなもんなの?まだ全然映像がアダルトじゃねえのに!」
「うるせえぞ、そこの童貞コンビ。」
「「なっ!!!」」
自分だって童貞のくせに!!!
ズボンの中で自分のアレを弄っているモリゾーに、俺となっちくんはキッと鋭い視線をモリゾーに向けるが、
『あんっ!』
突然画面に映るお姉さんの喘ぎ声が聞こえたので、俺となっちくんの視線はすぐに画面に向いた。
『や…!ちょっと…!田中くん!?先生に何をするの…っ?…アッ!』
「ダメじゃない田中くん!!!」
「わっ!田中くん先生のおっぱい触ってるよ!?!?」
「AVだからな!!!ってお前もう勃ってんじゃねえか!」
「ギャアアモリゾー変態!!」
モリゾーに股間を掴まれたなっちくんが、モリゾーから逃げるように俺の背中に引っ付いてきた。
「あ、ほんとだ勃ってる。」
「早くね?なっちくん早くね?」
「もう扱いてるモリゾーにだけは言われたくない。」
「いや、なんか俺の場合クセだから。」
「モリゾーのド変態!!」
『先生、俺の触ってよ…』
なっちくんとモリゾーがぎゃあきゃあと騒いでいたところで、画面上では田中くんが自分のアレを手にして、先生に迫ってる場面だった。
「やばいこいつも変態だ。」
ボソリと呟けば、大人しくえーぶいを見ていたクソカベが俺の方へ振り返る。
「航ちゃんと見とけよ、お前が矢田くんにしてあげることだからな。」
「えっ…。」
そう言ってまた画面に視線を向け直したクソカベの表情は真剣すぎる。こんなに真剣なクソカベの顔を、俺は見たことがない。
その後、『ダメじゃない!』とか言っていたくせに女教師はぬるぬると田中くんのアレを触り始めた。
「うわあうわあ先生エロい…!」
なっちくんは自分の股間を押さえて画面を見ている。
『ん、…ん、』
ぬるぬると触っていたかと思えば、女教師は田中くんのものを咥え、上下に口から出したり入れたりしている。
…と、そこで俺はなんとなく見ていられなくなって、画面から目を逸らした。
「んー…。俺やっぱ帰る…。」
「え、航どうした?今イイトコじゃん。」
「なんか気分悪くなってきた。」
「えーなんで?航帰んのー?もうちょっと見ようよー?」
「まあまあ、気分悪いっつーんじゃしゃあねえよ、航いつでも見に来いよ!」
そう言ってモリゾーは、グッと親指を立てて俺に向ける。かっこよく言ってくれてるのは良いが、もう片方の手はパンツの中だ。変態だな…と思いながら、俺は「うん。」と頷いて、モリゾーの部屋を一人後にした。
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