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りなの友達たちは、お兄ちゃんたちとホラー映画が見れて、嬉しそうに礼を言いながら夕方になって帰って行った。
本当はそこまで怖くないくせに、怖がる友達。お兄ちゃんに慰めてほしいのが目的だ。でもそれ以上に航くんが怖がっていたから、お兄ちゃんはそんな航くんを見て笑い、航くんばっかりと話しているから、友達はそれ以降必要以上に怖がった様子は見せなかった。
仲良いなあ、お兄ちゃんと航くん。
ちょっと羨ましい。りなももっと航くんと仲良くなりたい。航くんが家に来てから、とても楽しい。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
明日には帰っちゃうんでしょ?寂しくなるなぁ。りなは早くもそんなことを考えてしまい、ちょっぴり落ち込んだ。
りなの友達が帰ってからは、もう1本ホラー映画を見た。航くんはお兄ちゃんにくっついてばかりだから、今度はりなも航くんの隣に腰掛けた。
航くん曰く、ホラー映画を見るにあたって盾が欲しいらしく、なんだかよくわからないけどりなは航くんの前に座らされた。
でも怖いシーンがくると、りなにしがみつくわけにもいかないのか、航くんの隣に座ったお兄ちゃんの足に航くんはしがみついていて、なんだかちょっとだけお兄ちゃんが羨ましかった。
りなは多分、気になってるんだ。
航くんのこと。
一緒にいると楽しい男の人が現れたのはお兄ちゃん以外にはじめてだから。
航くん寮帰っちゃうのやだな…
勿論お兄ちゃんが帰るのもやだけど。
でもりなはそれ以上に、航くんと離れるのが嫌だな、と思ったのだった。
こうして楽しい時が進むのだけは異常に早く、楽しい夕飯タイムが終わり、あっという間に夜が来てしまい、明日の昼過ぎには航くんとお兄ちゃんは寮に帰ってしまう。
「もう一泊していけば?」
そんなことをつい言ってしまったりなに、航くんは「残念、パンツが2泊分しか無い」という返事が返ってくる。
パンツなんかどうでもいいよ。バカな返答だけど、そんな返答をする航くんだから、楽しいのだ。
「次はいつ来る?」
「るいお兄ちゃんの許可が出たら。」
「お兄ちゃんまた航くん連れて帰ってきてね?」
「そのうちな。」
お兄ちゃんに、絶対連れて帰ってきて!とお願いすると、お兄ちゃんはちょっと嫌そうにしながら頷いた。
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「航くん、また家に遊びに来てね。」
航くんとお兄ちゃんが寮に帰ってしまうとき、お母さんは航くんにそう声をかけたから、りなも「絶対遊びに来てね!」と声をかけた。
「あっお母さん!写真撮って!」
りなは航くんとお兄ちゃんが帰ってしまうのが本当に寂しくて、お母さんにりなのスマホを手渡して、写真を撮るように頼む。
お兄ちゃんとの写真と、お兄ちゃんと航くんとの写真、そして、航くんと2人で撮った写真。
りなはお母さんに撮ってもらった写真がちゃんとうまく撮れてるか確認してから、お兄ちゃんと航くんに手を振った。
「じゃあまたな」と家を出るお兄ちゃんと、「3日間ありがとうございましたー!お邪魔しましたー!」とお辞儀する航くん。
お母さんは「またね!るい連絡しなさいよ!」と手を振る。
お兄ちゃんと航くんは帰っていっちゃったけど、「りなやっぱり最後まで見届ける!」とお兄ちゃんと航くんの姿が見えなくなるまでその後ろ姿を眺めていようとしていたけど、りなはそこで目を疑う光景を見てしまった。
「えっ!?」
一度ギュッと目を閉じ、瞬きをして再びその後ろ姿に目を向ける。その時はもう普通の二人だったから、りなはきっと気のせいだよね、とホッと息を吐いて、涼しい家の中に戻ったけど…
りなが先程見た光景。
それは、航くんがゆらゆらと揺れるお兄ちゃんの手を、必死に掴もうとしている姿で、
でもお兄ちゃんはその手から逃げようとしているけど、スッと一度だけ捕らえられた航くんの手を、お兄ちゃんはほんの一瞬、握り返したのだった。
とってもとっても仲の良い二人だけど、
ちょっと仲、良すぎない?
まさか、……ね?
「あーあ、お兄ちゃんと航くん帰っちゃったねー、さみしいなー。最後一瞬だけ2人が手繋いでるように見えちゃってりな驚いちゃったー。」
「ハッ、デキてたりして。」
「……りと、冗談言わないでよ。」
芽生え始めた恋心。
ライバルがお兄ちゃんとか、冗談でも笑えない。
12.自慢の兄と怪しい友人 おわり
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