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「お風呂イン?」

「ああうん。お前はちゃっちゃとそれ終わらせろよ。」

「俺もるいきゅんと風呂インしたい。」

「残念だなーそれ終わってたら一緒にインしてやっても良かったんだけどなァあーザンネンダナァー。」

「っくそっ!!!!!」


俺はるいの発言にギリリとシャーペンを握り締めた。

悔しがっている俺をクスリと笑って、るいは部屋を出て行く。

ここで俺は、ある作戦に出ようと思う。

その名は『そうだ!便所へ行こう』だ。


脱衣所と便所は隣同士。
便所へ行く途中、るいの身体を拝めやしないだろうかというあわよくばな作戦である。変態だな俺。まあいい。


すくっ、と俺は立ち上がった。

るいの自室を出て、便所へ……

行こうとして俺はその場に固まった。


上半身裸のるいが目の前に立っていたからだ。


「えっなになになに!?!?」

「は?なにびっくりしてんの?石鹸無くなってたから新しいの取りにきたんだけど。つかお前予習は?」

「俺はちょっとベンジャミンに…」

「は?」

「あっ、便所でした……」

「なに言ってんのお前。」


あっ乳首………


ハッとしてそこに目を向けた俺は、ここぞとばかりにるいの乳首をガン見する。


「聞いてる?」

「ふぉおおお!!!!!」


おっと、びっくりしてしもうたではないか。あまりに乳首をガン見しすぎていた所為で、るいが俺に一歩近付いて顔を覗き込んできたことに俺はこれでもかと言うほど驚いた。


乳首との距離は目と鼻の先である。

俺は再びるいの身体をジッと見つめる。

次に俺がハッとした時には、俺の手はるいの乳首に伸びていた。


いかん!!!いかァァァん!!!

これはいかん、俺は一体何をやっている!!!


衝動的に、チョン、とるいの乳首を指で突いてしまった俺を、るいはポカンとしながら見ていた。


「いや、つい…」

「なんなんだお前はさっきから。」

「え?あ、いや、あの、待って、」

「さっさと予習終わらせろっつってんだろ!!!」


ニュッと俺の胸倉にるいの手が伸びてきたかと思えば、


「えっ!あっ!ギャアアアアア!!!!!」


首に腕を回され、思いっきり締め付けられた。

苦じぃぃ!!!!!
でもるいきゅんの素肌ァァア!!!


俺はここで、今日学校で聞いた他人の会話を思い出した。


『僕あの身体に抱きしめられたい!直で!』


つまりこれのことではなかろうか!!!

……いやちょっと違うな。

これはアレだ、(抱き)締められてんだ。

ちょっと違うけど近い!!!


俺は約数十秒間、苦しみに耐えながらるいの素肌を味わった。



「ぜえはあ、ぜえはあ…」

「俺が風呂出ても予習終わって無かったら覚悟しとけよ。」

「……うす。」


覚悟しようかな、一体何が待ってるんだろう。って俺はドMか。

しかしそろそろ本気で予習を終わらせなければやばそうだ。るいの機嫌を損なわせることだけは避けたい。いやもう遅いかな、だって乳首ツンってやっちゃったし。

俺ってば大胆。


………さて、予習やるか。

再びシャーペンを握り締め、ノートに英文を書き込んだ。



その数十分後、Tシャツに短パン姿、そして首にかけたタオルでガシガシと頭を拭きながら、風呂から出たるいが自室に現れてしまった。

俺まだ予習終わってねえのに。やば。

俺の側まで歩み寄ってきたるいが、背後から俺のノートを覗き込んでくる。やば。


あ、シャンプーのいい匂いする、これはもっとやば。っていやいや集中集中。


「ちょっとは進んだのか?」

「うん、ちょっとはな。」

「ふぅん、ならいいけど。」


あ、良かった、予習まだ終わってねえけど怒る気配無い。るいきゅん優し。

一瞬手を止めてるいの方へ視線をやると、るいも「ん?」と俺を見てきた。風呂上がりるいきゅん。

思えばるいの風呂上がり姿を当たり前のように見れるのは、俺くらいではないだろうか。髪が湿っぽくて、へにゃってなってるるいの髪型。思えばるいの裸体も貴重だが、このような髪型も貴重である。

………裸体っておい。

俺は自分の考えていることに、数秒遅れに内心ツッコミを入れたのだった。


一人あれやこれやと考えていると、るいは「航?」と俺の顔を覗き込んできた。


「なんかお前今日おかしくね?」

「うん。」

「うわ、すぐ認めた。なんで?」

「るいきゅんの身体が気になって。」

「は?」


…あっ


ジー、とTシャツに包まれたるいの身体を見つめながら、ついつい馬鹿正直に答えてしまった俺だが、まあ本音が漏れてしまったものは仕方がない。


「今日、るいの裸体に抱きしめられたら死ねるって話してた輩がおってな。」

「…裸体って。」

「そんでそれを聞いてしまった我が輩、まるでなにかに目覚めたかのようにあなたさまの裸体に興味を持ってしまったわけである。」

「いちいち言い方がきめぇんだよ!!」

「あ痛っ!!!」


ちょっと畏まって言ったつもりが、頭を叩かれてしまった。


「そんで?」

「ん?」

「お前俺に抱きしめられたいの?」

「うん。裸体に。」


“裸 体 に”

…なによりここが重要である。

素直に頷いた俺に、るいは「へえ。」と言いながら俺の目をジッと見つめてきた。あらやだこの空気、やっちゃう?やれちゃう感じ?

いやん、心の準備が………、と思っている俺に、るいはニヤリと笑ってこう言った。


「でもそれフェアじゃねえよな?お前から脱いでお願いするなら考えてやってもいいけど?」


俺はその時、思い出した。

そうだ、この人…

超級のドSだった!!!!!


るいきゅんが優しいからって、ポンポン正直に話してしまうのはよくねえな。

そうだ、俺ってヘタレなクソDTだった。クソDTがちょっと調子に乗ったな。反省しよう。


「…ん?どうした?お願いしねーの?」

「…うん。」

「なーんだ、つまんね。」


………え。

それは、いつもいろんなことに無関心なるいにしてはちょっと珍しく、つまらなさそうに吐き捨てられた言葉に、俺はドキン!と胸が高鳴った。


だってさ、それって、俺がお願いしたら抱きしめてくれたってことじゃねえの!?


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