1 [ 100/163 ]

ある日、大嫌いな従兄弟の大和から【 チケット余ってるからプロ野球観戦こーへんか? 】とかいうまったく嬉しくないお誘いメールが届いた。


【 遠慮しとく 】とそっこー送り返した俺だったが、【 親父がホテル代出してくれる言うとるから遠慮すんな泊まりで来い 】とかいう強引なメールが届き、伯父さんの好意を断るわけにはいかず。


【 チケット2枚あるしあいつと来たらいいやん 】


「って言われてるんだけどどうする?」

「え、行きたい行きたい。」


この事をるいに話すと、るいは結構乗り気で頷いた。

こうして、急遽俺たちの関西旅行が決まったのだった。俺からしてみれば、プロ野球はおまけである。


リュックに着替えを詰め込み、朝から新幹線に揺られて約1時間ほど。爆睡してたらすぐに新大阪に到着した。


「野球夜からだっけ?」

「うん。大和から17時までには甲子園来いって言われた。」

「うわ〜、野球観戦とかいつぶりだろ。」


るいはそう言ってわくわくしているが、俺は憂鬱すぎて仕方が無かった。だって大和と野球観戦なんて…選手に野次飛ばしまくりのイメージしかない。


しょうがないからそれまでの空き時間に、目一杯大阪観光を楽しもうと思う。


「るいどこ行きたいんだっけ?」

「通天閣!!!!!」

「うわびっくりした。どんだけ行きたいんだよ。」

「大阪と言えば通天閣!!!!!」

「そうか?まあいいけど。るいは結構じじいなとこあるしな。」


おっと、ジト目を向けられてしまった。

「なんで通天閣がじじいなんだよ。」と不満そうにぶつぶつ言っているが聞こえてないふりをして、大人しく通天閣へ向かうるいの後を着いて歩く。ちなみに行き方はるいに任せっきりだ。


「通天閣に行ってビリケンさんを見るのです。」

「なんやねんそれ。」

「見たらわかる。」


ウキウキ楽しそうなるいを見るのが楽しくて、パシャパシャと景色の写真を撮りまくってるるいを俺はパシャパシャと撮りまくった。


その後、『見たらわかる。』と言われてビリケンさんとやらの前に来たが、何故るいがこの置き物を見たがったのかが俺には全然分からなかった。


「ただのおっさんの置き物やん。」

「こら!神様に向かって失礼やろ!」

「お、今の関西弁良かったぞ。」

「あ、そう?」


ちなみに今は関西に来たからには関西弁で喋るという謎の遊びをしながら観光している。るいの関西弁はかなりレアだからこっそり動画を撮影したい。


こうして、俺たちは短時間ではあるが大阪観光を楽しみ、疲れたからもうホテルへ…行きたいところだが残念ながらプロ野球観戦というメインがまだ残っている。


行き方をスマホで調べてくれているるいに着いて行きながら、電車に揺られて17時ちょっと前には甲子園に到着したのだった。


大和と連絡を取り、入場ゲートの近くで待ち合わせをする。

観戦用ユニホームを着たファンでいっぱいの中、ガラの悪いおっさんと大和の姿を見つけてしまい、俺は帰りたくなった。

ガラの悪いおっさん…は、つまり大和の父であり、母ちゃんの兄であり、俺の伯父である。


[*prev] [next#]

bookmarktop

- ナノ -