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光との付き合いが始まってから、光の俺を前にする時の態度はすげーしおらしい。


寮まで一緒に帰ってきて、俺の部屋に来たそうにしているのに何も言わない光は、俺から声がかかるのを待っているのか。

前ならこんなことはなかったのに。


「俺の部屋来る?」と問いかけると、光は嬉しそうに「…うん!」と頷く。


俺が勉強しているときは静かにしてるし、一緒の部屋に居ててもあまり俺に近寄って来ようとしない。

さらには、俺の方を見ようともしない光があまりに不審すぎて、自分から光との距離を縮めると、光は何故かうずうずしながらチラリと俺に視線を向けてきた。


「なあ、佑都…?」

「なに?」


話しかけてきたのは光からなのに、なかなかその続きを話さない。

話すまで光を見つめると、慌てたようにサッと目をそらす光。


「なんなんだよ。」


片足を伸ばして光の太ももをゲシっと軽く蹴ると、光は「トイレ…!」と勢い良く立ち上がった。

素早くトイレに行こうとした光だが、俺は光の手を握り、行く手を阻む。


「いや待てよ、なに言おうとしたんだよ。」


言いかけたことも言わずに途中で止められたら、気になるだろ。それが例えくだらない内容でも。


握った手を引っ張り、自分の側に光を座らせると、光は真っ赤になって俺から顔を背けた。


「…ちょっと、悟ってほしいとか思ったけど…、佑都には無理か…。」

「は?なにが?」


悟ってほしい?光の気持ちを、か?

いや回りくどいこと言わずに言いたいことあったらはっきり言えよ。と思ってジッと光のことを見つめ続けていると、赤い顔をした光がチラ、と俺に視線を向けてきて、目が合った。


「…キス、は…さ?どういうタイミングでしていい…?」


照れくさそうにそう聞かれ、その聞かれた内容により、「…あ…。あー…。」と言葉がなにも出てこなくなった。


まさかのキスのタイミングを聞かれるとは。

どうやら光は、俺とキスをしたかったらしい。

あ、だから『悟ってほしい』ってか?


いやしかし俺にキスのタイミングを聞かれても。


暫し考えたあと、尻を動かして少し光との距離を縮めて、手を光の肩の上に置く。


「あ…。じゃ、じゃあ、キス…する?」

「……お願いします…。」


光は俺の問いかけに頷いて、真っ赤な顔で目を閉じる。

だんだん光の方へ顔を寄せて、チュッと唇を合わせると、光は俺の首に腕を回して飛びついてきやがったから、俺はバランスを崩して後ろに転倒し、光に押し倒される体勢になってしまった。


「おいバカっ!いきなり飛びついてくんなよ!」

「だって俺、もっと佑都にくっつきたくてっ!」


光はそう言って、俺の身体の上に乗っかった状態でぎゅっと俺の首に腕を回したまま、くっついて離れなくなった。


「…やばい…俺、…佑都がもっともっともっと欲しい…。ねぇ佑都、舌は入れちゃだめ…?」

「…舌?…あ…、アレやんの…?」


光がドラマを見ている時、前から散々『やばいやばい俺もやりたいベロチューしたい!』とはしゃいでいたアレを、…俺としたいって?


光の発言をいつも『はいはい。』と受け流していた俺だが、さすがにこの事態は受け流せない。


何故ならこれは、ドラマじゃないから。

俺は光と付き合っていて、拒否するときっと光は傷付く。

いや、拒否すると言ったら聞こえは悪いが、俺はそんなキスなんかしたことねえし、まさか光とあのキスをするなんてことは想定していなかったから、戸惑っているだけなのである。


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