「今日からみんな先輩だよ!先輩だからって調子のんじゃないよ?じゃ、日直!号令しよっか」


日直の号令と共にみんな慌ただしくなる。この後遊ぼうとか、駅前のカフェ行こうとか、ゲーセン行こうとか、部活行こうとか。みんなの楽しそうな声をBGMに、私は鞄を肩にかけて少し早歩きで教室の扉へと向かう。
四月某日。始業式を終えて今日から私たちは一学年上がる。やっとだ。やっと高校二年生。今日まで一年間ずっと今日という日を待ってた。はやく。はやくはやく。


「名前ちょい待ち!」
「わっ!」


ぐんっと腕を後ろに引かれて危うく尻餅をつく所だった。なんなのなんなの!?私は今とっても急いでるのに!キッと後ろを振り返れば校則違反という文字が浮かび上がる赤髪。


「危ないじゃん!怒るよ!」
「ぶっ。もう怒ってんじゃん」
「で、何か用っすか丸井先輩」
「は?何、赤也の真似?」
「うるさい!私急いでるの、何?」
「一年の教室行くんだろい?俺も行くから一緒行こうぜ」
「は?やぶっ!?」


やだって言おうとしたらあろう事か丸井は私の両頬を顎下から鷲掴みしてきた。痛いやめてバカ!
文句あんのか?なんてヤンキー宜しく睨んできたから早く解放されたくてブンブンと横に頭を振る。いつか絶対仕返ししてやると心に誓って丸井と並んで一年生の教室へと向かった。




真新しい制服に身を包んだ一年生に一年前の自分と重なる。横で並んでたはずの丸井はいつの間にか一年生女子に呼ばれて餌付けされている。そんな事は私にはどうでも良くて、お目当ての教室を見つけてそっと中を覗く。


「ちょっと赤也!」
「あ?」
「帰る前にあんた私が前貸した漫画いつになったら返してくれんの」
「あー、佐藤悪い忘れてた!明日持ってくるからちょっと待って」
「あんたいっつもそれ!昨日も一昨日もメールしたじゃん!バカなの?」


赤也・・・と、佐藤さんと言うらしい知らない女の子。赤也に入学おめでとう!ってはやく言いたくて来たはいいけどなんだか今じゃなくても良かったかな、なんて思いだした。



「中学の頃からお前らほんと仲良いな。実は赤也と佐藤って付き合ってたり?」



一人の男子生徒の一言でドクンと心臓が鳴った。
同時に頭に軽く何かが乗った気がして顔を上げたらいつの間にか私の頭に手を乗せる丸井。ちょっと悲しそうな笑顔の後に、私を自分の後ろへ隠してスッと息を吸うのが見えた。



「あーかーやーくーん!」
「は?・・・!げっ、丸井先輩!?」


丸井が教室に顔を出すと同時に残っていた生徒たちが騒ぎ出す。
えっ丸井先輩本物!?きゃーっ!かっこいい!なんて女の子たちの奇声にびくりとする。さすが丸井人気者。


「おいコラバカ也、先輩に向かってげって何だ失礼だろ」
「人の名前間違える丸井先輩の方が失礼っすよバカ也じゃなくて赤也っすから!」
「うるせえ。わざとに決まってんだろい。せっかく俺ら赤也でも高校一年生に上がれたんだおめでとうって言いに来たのにお前全然気付かねえんだもん失礼だよな〜」
「丸井先輩の方が失礼だっつの!てか俺らって・・・?」


ガタガタと音がして丸井に向いていた視線を教室に向けると、目の前にこちらを覗き込むようにしている赤也。もし赤也が犬ならば尻尾を振りまくってるであろう嬉しそうな顔をしている。が、丸井に視線を向けた後またこちらを見た。心なしかムスッとしている。


「や、やっほ〜赤也」
「なんで丸井先輩と一緒なの」
「え、だって同じクラスだし一緒行こうって」
「名前が?」
「丸井が」
「うん、俺が。赤也く〜ん、男の嫉妬は醜いって言うだろい?」
「うるせーっす丸井先輩」


赤也と丸井がじゃれついてると、側で見てたクラスメイト達が好奇の目で見てくる。あんまり見られるの好きじゃないんだけどな。なんて思ってると、赤也く〜んなんて少し甘えた声を出しながら先程の男子生徒が赤也の首に腕を回した。クラスみんなが気になっているであろう質問を投げかける為に。こっちの子、誰?って。



「ふふっ、俺の彼女」



自慢げな赤也のその一言で女の子たちのきゃーっ!て耳をつんざく叫び声が出るのに時間はいらなかった。


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