コラボ企画<神の後継者とヴァイス女王が従者について話してみた(仮)>


【※注意】
このSSは、オンライン小説サイト+Tears Legend+様とのコラボ企画です。
当サイト連載小説「神創系譜」と、+Tears Legend+様での連載小説「水面に映る蒼い月」の主人公たちを対談させてみようと突発的に立ち上げた企画に、「R-LAUCK」の巧さんを挿絵担当として引っ張り出したものです。
以下の項目を熟読・理解された上での閲覧をお願いします。



・SSは橘伊鞠、倭姫がリアルタイムに確認をしながら作成した物です。
・双方の小説を読んで頂いていると楽しめるかもしれません。
・両小説、最新話までのネタバレを含みます。ご注意下さい。
・コラボ、もしも話などを含みます。ご理解頂いた上での閲覧をお願いします。
・親交ある管理人同士のコラボ企画です。閲覧=上記注意事項を了承したものと判断させて頂きます。申し訳ございません。







<神の後継者とヴァイス女王が従者について話してみた(仮)>



シエラ
「久しぶりだな、リリスティア。……こんなときに訪ねてくるとは、お前も相変わらず変わっている」

リリスティア
「大変な時にすまない。その、迷惑かもしれないと思ったのだけれど、……どうしても、気になって」

シエラ
「気になる? アスラナが?」

リリスティア
「国を憂うのは王の役目。私が心配しているのは、シエラの事だ」

シエラ
「私の? だが、別に怪我をしたわけでもないし、特に問題はない。お前のように戦場に出るわけでもないしな」

リリスティア
「戦いで傷ついた体は、いずれ癒える。だけどシエラ。心はそうではない筈。……大丈夫?」

シエラ
「別に……。ただ、少し疲れただけだ。……リリスティアはここにいてもいいのか? 今のアスラナは穏やかではないし、またあのヒルスヘ……赤いのが心配するんじゃないのか」

リリスティア
「ヒルは一国を担う総指揮官だ。自分の役目を、よく……分かっている。だから、私の事は気にしなくていい」

シエラ
「……? なにか含みのある言い方だな。お前こそ、ひどい顔をしている」

リリスティア
「か、顔色が悪いのは、執務が忙しいからだ。その、だから、つまり今の私ならシエラの相 談に乗れるかもしれないと思って来たんだ! ……エルク殿の事で」

シエラ
「エルクの? ……相談、と言っても……。ただ、その……。アイツの様子が変になったくらいで、相談することなんて、なにも……」

リリスティア
「少しだけライナ殿から聞いたんだが、エルク殿の態度がおかしいとか」

シエラ
「…………おかしくは、ない。……従者としてならあれが正しいんだと思う。ただ、急に変 わったから慣れないだけだ。今までとは、違うから」

リリスティア
「人は変わるものだと分かっていても、受け入れがたい時もあると思う。同じだシエラ、私も」

シエラ
「同じ? お前のところは違うだろう? ……友人のように親しげだったじゃないか」

リリスティア
「私は今、同盟主でもある。まだ即位して年月は浅いが、色々と考えなければいけない時期 にもなっている。ヒルは、軍の総指揮官で、私は一国の王だ。絆はあるけれど、引くべき線は誰の目にも見えるものでなければならない。……だから」

シエラ
「だから、とは?」

リリスティア
「だ、だから。その、シエラも今寂しいんじゃないかと思って!」


シエラ
「――ああ、つまりリリスティアは今寂しいのか


リリスティア
つまりってなんだ! 誰もそんな事……い、言ったかもしれないけど……。でも、シエラだって落ち込んでるじゃないか。エルク殿も、さっき見た時はなんだか様子が違った。一体 、今どういう状況なの?」

シエラ
「どうと言われても……。ホーリーから帰ってきて、そこまでは今まで通りだった。ライナ から聞いていると思うが、魔導師と色々あったんだ。それで、リヴァース学園から帰ってき たくらいから、急に……他の従者と同じように、急に態度が改まった。私のことを呼び捨て にしないし、常に丁寧な喋り方をする。……最初はなにかの嫌がらせかと思った」

リリスティア
「急に? 意味が分からないな。陛下に命令でもされたのか」

シエラ
「分からない。エルクは自分の意思だと言っていたがな。これが本来あるべき姿で、今までが間違っていたと」

リリスティア
「相談もなしにそういう事されると困るよな」

シエラ
「ああ、まったくだ。今の今まで距離が近かったのに、急に手のひらを返したように豹変して、なんと言うか……」




リリスティア「寂しい」
シエラ   「気持ち悪い」









リリスティア&シエラ
「えっ?」
「え?」





リリスティア
「………………。軽い言葉を交わせない雰囲気を作ってくるから、困るよな」

シエラ
「……? お前のところも、そんな風に?」

リリスティア
「……………………(さ、さっき言ったけれど、伝わってなかったようね)うん。急に身分の違いを強調し始めたり、敬語を通したり。シエラの今の状況と同じだ」

シエラ
「そうだったのか。リリスティアも苦労するな。……本人達は考え合ってのことだと言うが 、それに付き合わされる身にもなってほしい」

リリスティア
「大体、短絡的なんだ。そうすればまとまると思ってる」

シエラ
「こちらのことを考えたと言うが、結局は自分勝手じゃないか」

リリスティア
「誰もそんなことしてほしいと言ってないのに」

シエラ
「元に戻せと言ったところで聞きやしない」

リリスティア
「やっぱりか……! その癖にベタベタ触ってきたり、思わせぶりな事を囁くんだ。振り回される身にもなってほしい!






シエラ&リリスティア
「は?」
「え?」







シエラ
「べたべた触る? あの赤いのが? お前に? なぜ」

リリスティア
「えっ、いや、分からないけど……、え、エルク殿は」

シエラ
「いや、まったく。……ん? いや、まったくということもないか……?」

リリスティア
そうだろう!?

シエラ
「手の甲に口づけたりはしてくるな。騎士の挨拶とやらで。お前のところもそうなのか」

リリスティア
「え、えっ……、その程度……

シエラ
「は?」

リリスティア
「シエラはエルク殿と、そういうあれでは……」

シエラ
あれ?

リリスティア
「〜っ、ち、違ったらいい! ……同じように辛いと思ったんだ……。エルク殿と触れ合えなくて、きっと寂しいって」




シエラ
「リリスティアは、そんなにも赤いのと触れ合っていたのか」

リリスティア
なんでそっちばかり気にするんだ! お前とエルク殿の話だ!」




シエラ
「? 私とエルクの話なら、今話しただろう? ――ああ、そうだ。一緒だと言うなら、一つ聞きたいことがあるんだが」

リリスティア
「(……まあ、渦中であるのに、あまり問い詰めることでもないかもしれないな)聞きたい事とは?」



シエラ
「リリスティアも、この件であの赤いのを殴り倒したいと思ったことはあるのか? 一度強めに頭を殴れば、元に戻るのではないかと考えたこともあるんだが、私ではどうしても気配を悟られる。その点、リリスティアなら、」



リリスティア
「!? 殴ると危ないぞ!



シエラ
「でもエルクの場合、最初はそれで態度が砕けたんだが

リリスティア
「殴れば分かりあえることもあるの……?」





シエラ
「出会った頃、一度頭を蹴り飛ばしたら話しやすくなった。お前のところは違うのか? やってみればいいだろうに」

リリスティア
「シエラはそんな事をしていたの……。怒られなかった?」


シエラ
怒られたな。確か、思い切り怒鳴られた気がする」


リリスティア
「ええ……。駄目じゃないか……」

シエラ
「駄目なのか? よく分からないが、リリスティアと赤いのとの出会いとは違うようだな」

リリスティア
「私は……気付いたら後ろをついてきていた」


シエラ
「ストーカーか」


リリスティア
「いや違う、最初は酒場でいきなり声をかけてきたんだ!


シエラ
「ナンパか」


リリスティア
「違っ……! 私が何者か知っていて、声をかけてきたんだ。最初はそれを隠して近づいて きて、あの」

シエラ
「…………まあ、リリスティアがそれでいいなら、いいんじゃないか……?」

リリスティア
「……………………(コホン)。シエラ、エルク殿とこれからどうする気なの?」

シエラ
「どうする、と言われても……。私としては、今まで通りに戻したいが……。アイツは、その気がないようだ。なら、それに付き合ってやるしかないだろう。…………リリスティアが 言ったように、“立場”というものもあるだろうし」

リリスティア
「神の、後継者として……?」

シエラ
「………………そう、だな。お前が王であるように、私は神の後継者だから」

リリスティア
「生まれた時から定められた立場であるシエラと、与えられた立場である私では違いがある 。だけど、シエラ。今貴女がそんな顔をしている理由は、苛立ちは、……同じだ。だけど、 歩いていくしかないのかもしれないわね」



シエラ
「そうだな。――お互い面倒な立ち位置だが、エルクは赤いのほどべたべたしてくることは ないから、変な気がしない分、お前の方が苦労しているのかもしれないな」
リリスティア
「そうね。――お互い面倒な立ち位置だけど、ヒルはなんだかんだでいつも穏やかに接して くれるから、そういう意味では心配をさせない大人だし、気は楽かもしれない」




シエラ
「…………」
リリスティア
「…………」




シエラ
「……赤いのに比べればエルクは若いが、その分わかりやすいこともあって楽だ。態度は変わっても、気が回るところは変わらないし」
リリスティア
「……ヒルは大人である事を武器にしがちだが、気持ちに波が無い分、こちらも落ち着く。 いつも傍にいてくれるし」



シエラ
「傍にいるのは、エルクだって――……。ん? ああ、すまない、リリスティア。呼ばれたみたいだ。……今日は話せて、その……よかった、と思う」

リリスティア
「え、ああ……もうそんな時間。なんだか最後はちょっと違う話になってしまったけれど、 少しでもシエラの力になれたなら良かった」

シエラ
「――ああ。ありがとう、リリスティア。できればまた、ゆっくり話したい。……今度は、四人で」

「ええ。是非、今度はヴァイスに来て。歓迎する。昼寝をする場所、用意しておくから」

シエラ
「楽しみにしている。それでは」



シエラ
(……ヴァイスの主従関係というのは、ナンパから始まるものなんだな……。一つ賢くなった気がする)






こんな二人が、定められた運命、そして与えられた運命に立ち向かう、

水面に映る蒼い月

神創系譜


そして挿絵を担当して下さった巧さんの創作小説サイト

R-LAUCK

を、これからもどうぞよろしくお願いします!




END


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