誕生日の習慣が無い国
リリスティアの苦悩(連載中)

レオン
「そうそう、リリスティア陛下は知っていマスか?」

リリスティア
「何を?」

レオン
「いやね、さっき結苑ちゃんに「誕生日はいつですか?」って聞かれたんデスよ。それで、「パーティーするんですか?」なんて聞いてくるもんデスから。えっと、誕生日パーティーって言うんデスかね。そういうお祭り騒ぎみたいな行事のことを」

リリスティア
「…………え?」

レオン
「あれ? リリスティア陛下はリュシアナに住んでたんデショ? 誕生日パーティーのこと、知ってると思ったんデスが……」

リリスティア
「……いや、あの。知ってるけど。……お前知らないの?」

レオン
「ハイ。俺たちの国は長寿なんで、特に何かあるってわけじゃあないんデスよね。成人の祝いと、生まれた日に国王陛下に年齢を重ねた報告をしたりはしマスけど……民の間でもそういう慣習はありマセン。確か、短命の人間の国では、毎回毎回祝ったりするんデショ?」

リリスティア
「そうだったの」

レオン
「そんあパーティーしないってを結苑ちゃんに話したらえらくガッカリされマシてね。誕生日パーティーって、そんなに楽しいものかと思いマシて」

リリスティア
「いや、私は……小さいころ姉さんに祝ってもらったけど……。そんなに楽しかったかどうかは……」

レオン
「……そうなんデスか?」

リリスティア
「姉さんは忙しい人だったから。プレゼントを貰ったことはあったけど、パーティーなんてしたことがない。……でも、アルフレッドの生誕祭は、各国の首脳を招いて、舞踏会場で盛大に行われていたような。一般家庭では……そうね、ガウディに住む少女なんかは、ケーキやぬいぐるみを貰ったと言っていた」」

レオン
「ふむ。……じゃあ晩餐会や夜会とあまり変わらないんデスね。それなら準備も簡単そうデス」

リリスティア
「何かあるの?」

レオン
「銀の月の7日は、ヒル君の誕生日らしいんデスよ」

リリスティア
「ヒルの……? 今月じゃないか」

レオン
「ハイ。ベルンシュタインの結成以降、色々な習俗がヴァイスに伝わってきていマス。その中で結苑ちゃんの言う誕生日パーティーというものは、形は違えどヴァイス以外のほとんどの国では行われているらしくて。試しにヒル君を祝ってみようかと思ったんデスよ」

リリスティア
「……じゃあ、プレゼントを用意しないと」

レオン
「おや、やる気デス?」

リリスティア
「えっ……、いやだって、お前がやるって――」

レオン
「そんなすぐにノってきてくれるとは思っていマセンデシたので」

リリスティア
「………………」

レオン
「アッハハ。そんな顔しないでクダサイ。まあ、陛下がそんなやる気なら、俺も本腰入れて準備してみマショーか」

リリスティア
「お、おい……。戦争中にあまり華美な催しは……」

レオン
「分かってマスって。上層部だけで集まってやりマショ、簡単に。ご飯を一緒に食べて、自費でプレゼントを渡す。これくらいならいいデショ?」

リリスティア
「いや、そうだけど……」

レオン
「陛下も、プレゼントをちゃんと用意しておくんデスよ」

リリスティア
「……プレゼント……」


続く→

[ヒル誕]


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