01

皆さん初めまして。私は苗字名前。
いきなりですがピンチです。

今は放課後。
私はいつものように早々に帰宅して家でぐうたらしようと思っていた。
だが外に出てから今日の課題を教室に忘れた事に気付き文句を言う親友をなんとか説得、全力疾走で教室までやってきた。

しかしそこで悪魔は忍び寄ってきたのだ。

あの柳蓮二が告白される現場に遭遇、しかも場所は私の教室の目の前。

「……マジ最悪なんだけど」

告白なんて一世一代の勝負こんな場所でしてんなよ!と心の中で突っ込み二人の話がつくのを待つ。柳先輩と呼んだ事から告白しようとしている女の子は後輩だろうか、あの…その…とまだ話がつく気配はない。

「(早く終わしてくれぇぇぇ)」

壁を音もなく殴ると携帯のバイブ機能がメール受信を知らせた。
マナーにしといてよかった…とほっとしながらメールを開くと、そこには悪魔の宣告があった。

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あと5分でこなければ箱のハーゲンダッツ5箱よ。妹達が喜ぶわ。
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……なぜあの子はこんなにドSなのだろうか。

「君の話の内容は大体予測がついている」

途端に聞こえた声。
悪いなと思いつつも溢れる好奇心は抑えられず二人の会話に耳をすました。

「あ……そ、それでお返事は……」
「悪いが君の気持ちには答えられない」
「ど…どうして……?」

私は男子テニス部の活躍を知らないわけではなかったので、まあ理由はテニス関連だと思っていた。
だが次に聞こえた柳さんの返答に耳を疑った。

「まず第一に君に興味を惹かれない。そしてこれから俺が君の事を好きになる確率は極めて0に近い」
「そっ…そんな…!」
「俺を嫌うのなら嫌ってくれて構わない。全く問題はないからな」

柳さんがそう言うと、女の子は涙を流しながらその場を後にしてしまった。
えええ嘘でしょ。

「(あれがあの皆からの信頼の厚い柳蓮二?)」

走り去っていく女の子と立ち尽くす柳さんを呆然と見つめていると、携帯が再びメールを受信した。

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あと3分。
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「(あわわわわわ)」

もう柳さんがここを去るのを待っている時間はない…!

その気まずい空気の流れる中自らの教室へ忘れものを取りに向かう。
うわわわわ見てる見てるこっち見てる

なんとか教室までの道のりを通過し自分の席に到着。忘れた今日の課題を鞄にしまいさあ帰ろうと後ろを振り向くと、そこには巨大な影があった。

「……」
「……」
「……」
「……」

……うわぁぁぁぁ気まずっ!何これ何の罰ゲーム!?
そう思いながらなんとか平静を装い無言で横を通り抜けようとすると、ガシッと腕を捕まれた。

「…今の、見ていただろう」

ば れ た。

「な、なんのこと?」
「誤魔化しても無駄だ」
「だ…大丈夫言わないよあはは」
「嘘をつくな」
「嘘じゃない嘘じゃない柳さんが女の子泣かせる最低最悪男だっただなんて誰にも言わないよ安心して!」
「……ほう」

うっすらと開く鋭い眼に若干気圧されながらも、現在進行形でイライラしているであろう親友のメールを思い出し掴まれている腕を振り払って走り出し、振り向きざまにこう言った。

「女の子傷つけて泣かせてんじゃねぇよばーかばーか!」

そう言いつつ全力で床を蹴り、内心ほんの少しドギマギとしている心臓をそっと押さえた。



ギラリ、と光る2つの眼に、この時の私はまだ気づいていなかった。





出会い

(最悪な人間)
(足の速い奴だ)




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