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#4

きみの身体はほどよく柔らかくて、だからといって厚すぎでもなくて、とてもちょうどよくむちむちしている。耳元に顔を埋めてみたら鼻をくすぐるような優しい洗剤のかおりがして、すべすべの肌がとてもちょうどよくぬるくて、わたしは思わず瞼を閉じるのだ。こうしてると、今だけ、この一瞬の今だけ、全部わたしのものみたい。二の腕の小さいサメの刺青も、ぬるっこい人肌も、いい洗剤の匂いも、朝方生える唇の上の髭も、ちょっとだけ白髪混じりの髪も、短い指も爪も、眠たいと二重になるこの瞳も、ぜんぶぜんぶわたしだけのものになればいいのに。ぜんぶぜんぶわたしだけのものにしたい。

〜20141020



#3

君はどこまでもずるいひとだ。そんな寂しそうな顔も僕にしか見せないくせに。そんな潤んだ瞳もしっかり僕を捉えているくせに。それなのにその唇が吐く言葉はなんて残酷なんだろう。
「わたしはあんたみたいなひとをすきになれればしあわせだったのかな」
こうして今日も僕は優しく君に殺される。

〜20140714



#2

誰かに好きだと言われたい。誰かに必要とされたい。誰かに認められたい。誰かに抱き締めて欲しい。誰かに愛されたい。そう思って今日まで生きてきたけど結局そんなの綺麗事で、誰かに好きだって言われたって誰かに愛されたってわたしにとってその誰かがあんたじゃない限り意味はなかった。ねえ、どうしてわたしじゃないのかな。

〜20111117



#1

腹が立ったので彼の顔面に向かって生卵を投げた。ぐちゃ。それは小気味よい音を立てて見事に彼の右目上に命中して割れた。どろりとした白身が頬を伝ってゆく。黄身がオレンジを描く。重力によって流れてゆくそれをゆっくりと目で追いながらわたしはなんだかとても美しいと思った。そう言ったら彼は笑った。ぐちゃぐちゃの生卵まみれの顔で。ねえ、長い睫毛に卵の殻がついてるよ。

〜20110407

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