世界は誰とも繋がらない | ナノ


液晶の中には遠い国があった。地球の裏側みたいなそこには確かに人間が生きていた。皆汚れた服を着て家とは呼べないような小さな家に大家族で住んでいる。子供は病気に倒れた両親と家族を養うため働きに出ている。子供は食べる物の代わりに茶色く濁った泥水を飲む。子供は大人に怒鳴られながらも必死に働く。汗水垂らしながら働く。小さな家には人々が押し込まれるようにしながら生活する。ゴミの山に溢れる家にはそこらじゅうに蠅が飛んでいる。子供がゴミにもたれかかりながら擦り切れた一冊の本を読んでいる。子供が言う。「これは英語の教科書なの。学校を辞めた時に返し忘れちゃった。宝物。僕、本当は学校に行きたい。学校に行きたい。」吹き替えとテロップが流れる。画面が変わる。スタジオでは沢山の芸能人が泣いていた。俳優。女優。アナウンサー。アイドル。みんな高そうなそれはそれはお洒落な衣装を身にまとって泣いている。目を赤くして泣く。ポロポロと涙を流して泣いている。

わたしには画面の中のこの人達が何故泣いているのか理由が分からなかった。世界にはいろいろな人達がいてこういう人達もいるんだなあと思って泣いているのだろうか。こんなに必死に行きようとしている人達の生に食らいつくこの有り様が可哀想だと泣いているのだろうか。それとも、ああ世界にはこういう人達がいて大変みたいだけれど自分は本当にこういう所に生まれなくて良かったです日本に生まれて良かったお父さんお母さんありがとう。と泣いているのかもしれない。



わたしはただ怖くてたまらない。






















(20090308) title:たかい




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