目が合う。細い手首がわたしの方に伸びてくる。親指がわたしの唇をなぞって、唇と唇が触れ合う。煙草の香りにわたしの口内が染まっていく。ラッキーストライクに犯されながらわたしは今日も奴を憎むのだ。
「 」
わたしの名前を呼ばないでお願いだから黙って名前を呼ぶな。わたしの頭の中はこんなにもこいつのことでいっぱいで溢れかえりそうなのに、こいつの頭の中にわたしは存在するのかしないのかも解んないくらいちっぽけなもんなんだ。くそったれ。なんでわたしばっかりこんなに。死んじまえ。死ね。でも多分本当にこいつが死んだらわたしは生きていけないくせに。なんだこれ矛盾。あーもうわたしが死ねよってことか。悔しいよ。悔しくてたまんないんだよ。なんでわたしばっかりこんなに好きじゃなくちゃいけないの。
「ねえ」
「、なに?」
「すきだよ」
「うん」
うん、って可笑しいなあ。会話になってないでしょう。馬鹿にするな。ねえ、お願いだから好きって言ってよ。嘘でもいいから俺も好きだよって返してよ神様。
「ねえ」
「うん?」
「わたしのことすき?」
目が合う。うつろな目。真っ黒な瞳の中には泣きそうなわたしが写っていてこの上なく不細工だ。この人はこうやっている間何を考えているんだろう。知りたいけど知りたくない。確かなことは知らない方がわたしは幸せだということだ。
「そういうの、どうでもいいよ」
視界が彼でいっぱいになる。ああそうやって。どうでもいいはずがないよ一番大切なことだよそれなのにどうして。言いたいことは沢山あるけどわたしは何も言わない。ただ言葉を飲み込んでただ今という時間に酔うだけだ。ああでもそれでも幸せだからもうどうでもいいのかもしれない。ねえ、名前を呼んでわたしを見て笑ってよ。今はそれだけでいいよ、
「 、」
gelatin
中途半端にわたしを愛すのが得意なあなたはそうやって笑う。わたしは分かっているくせにもう取り返しがつかないくらい沈んでしまっているよ。二度と這い上がれないわたしはどうすればいいのだろう。
is様へ
ありがとうございました。
20090801 ゆき