19話
「帽子!」
がばりと眠っていたルフィが叫びながら起き上がる。ここはサンジ兄の部屋、よほど戦闘でダメージを受けたらしいルフィはいっこうに目を覚まさなくて心配していたけれど、この分じゃ大丈夫そうだ。
「グランドラインでまた会おうってギンが言ってたよ」
「へーっお前らにか?」
「てめえにだよ!!」
それから数回話したサンジ兄はオールブルーの話をルフィに言って聞かせた。
その顔が今じゃ俺の前でしか見られることのない無邪気な顔で……俺は気付かれる事のないようにそっとため息をついた。
本当にこんな顔するくせに、どこまでも頑固な人だよ………
… な?じいちゃん。
柵にもたれながら上を見る。
そこにはサンジ兄を見下ろすじーちゃんがいた。
それから俺たちは三人で二階の食堂へと向かうそして扉を開け放ったとたん、辺りがしーんと静まり返った。
「……………………」
そこから下手くそな演技の始まりか。
「おめぇらのイスはねぇよ」
「へっへっへ、床で食え床で」
そして、自分の料理を無駄にこけにされたと思ったサンジ兄はキレるけれど、じーちゃんに殴られた。
蹴られたじゃない
殴られたのだ。
「てめぇが俺に料理を語るのは百年早ェぞ、チビナス!!!おれァ世界の海で料理してきた男だぜ」
そういうじーちゃんに、回りにいたコックもじーちゃんが殴った事にかなり驚いていた。
それだけ、じーちゃんはサンジ兄に夢を追わせたいんだろう。
怒って出ていったサンジ兄を見送ると、じーちゃんは俺に話しかけてきた。
「おい、がきんちょ、おめぇは行かねぇのか」
「……いやね……下手くそな演技だなぁと思って呆れちゃって出ていく機会がなくなった」
「!!!!?」
「気づいてたのか!?」
各々から焦った声がかけられ俺は呆れたようにため息をつく。
「あれで騙せるのはサンジ兄くらいなものだよ」
「う」
俺がそういうと皆言葉に詰まったような声をだした。
19話