10話
『じーちゃん、俺に何かよう?………あれ、サンジ兄。』
厨房の扉を開けるとそこにはじーちゃんだけじゃなくサンジ兄もいた。
「おせぇぞっガキんちょ」
『ごめん』
素直に謝り俺は一応サンジ兄の隣にならぶ。
ちらりとサンジ兄にどうしたんだ?とアイコンタクトを送るも首を降られた。
……サンジ兄もわからないのか。
俺は顔をじーちゃんに向き直り一応話を聞くことにした。
『じーちゃん、どうしたんだ?いきなり呼び出して』
そう問いかける俺に、じーちゃんはどこから出したのか俺より身長の高い樽に入った大量の野菜をドンッと置いた。
それも、2個…………。
俺は出した場所が気になりながらもこれは?と問いかけた。
「ガキんちょ、今日お前はサンジと一緒にこの樽の中にある野菜の皮剥きをしろ。」
『え?』
「はぁぁっ!?」
突然言われた言葉にポカーンとする俺と、顎が外れるんじゃないかと思うぐらい口を開けたサンジ兄。
皮剥き?
え、やっていいのか?
前に《ガキに包丁は危なっかしくて、にぎらせるわけにはいかねぇ》とか渋い顔でいってなかったか?
「じじいっ!皮剥きって俺はもうクリアしたはずだぞっ!?それにアクリはまだ5才だぞ!?包丁なんて危ないだろうがっ」
サンジ兄がじーちゃんに噛みつくように抗議するがじーちゃんは、それを鼻で笑い料理を覚えるなら早い方がいいだろうがっと一蹴した。
まぁ、それはそうなんだろうけど、どうしていきなり…………
「お前はその年のガキには似合わねぇくらい落ち着いたガキだ。フロアでの話も耳に入ってるぞ」
フロアでの話?
なんのことかわからず黙ってるとじーちゃんは「客とコックどもの争いを止めたそうじゃねえか」といった。
ああ、あれか。
あまりに暴言をはく客に耐えきれなかったコックが暴れる寸前に俺が間に入り客を説得して帰ってもらったんだっけ……?
何故か、顔面蒼白しながら帰っていったけど。
「そ、そうなのかっ!?アクリっ!」
ぎょっとしたサンジ兄が肩をがっと掴んできた。
『ん?うん、うるさくて客の迷惑だし、あまりに暴言はくから帰ってもらった』
けろっとした顔で言うとどうやってっ!?と聞かれたので話し合いと答えておいた。
「は、話し合いっ!?話し合いでおさまったのかっ!?」
信じられないって顔をして言うサンジ兄にうんと頷く。
話し合いで間違っていない、ちゃんと俺は客に『自分のした事』『自分がはいた暴言の事』を説明してやり、その他もろもろのことを事細かに教えてやったまでだ。
一例をあげると
《俺たちもこうしてご飯を食べるんだし海王類だって…………食べたいよな?》
とか客に笑いながらいっただけだ。
そしたら何故か蒼白になって一目散にかえっていった。
そういうとサンジ兄は目を見開いたまま固まってしまった。
『サンジ兄?』
「そりゃぁ、話し合いじゃなくて脅しだろうが」
ため息を吐きながら言うじーちゃん。
脅したつもりはないんだけど。
10話