私は思う。
私と鴎外さんは、悲しいくらいによく似ている。
「芽衣、芽衣」
「…鴎外さん、」
前髪に柔らかく唇を押し付けられる。
それから、頬、唇に。
もう慣れてしまったこの温もりと行為に、それでも私は満ち足りた気分になって、彼が誰よりもいとおしいと思うのだ。
「…鴎外さんがいなくなったら、私はどうやって生きていけばいいんでしょう、」
小さく呟いた私の言葉に、鴎外さんはその端正な顔に穏やかな笑みを浮かべた。
「僕はいなくならないよ」
「わかってます。でも、」
「…僕の方こそ、おまえが明日にでもいなくなったらどうしようといつも考えているよ」
「私はいなくなりません」
「はは、わかってるよ」
優しく髪を撫でられる。
ああ、なんて心地良いのだろうか。
私も、鴎外さんも、不安なのだ。
互いを失いたくもないし、独りになりたくない。
互いを大切にしているようで、結局は自分が一番可愛い。
私達は、愛に飢えているのだ。
愛されたい。
愛したい。
笑ってしまうくらいに、馬鹿らしいエゴ。
「…鴎外さん、大好きです」
「芽衣、愛してるよ」
互いのエゴで成り立っている関係だけど、それでも私達は幸せだ。
私はたしかに鴎外さんに愛されているし、彼を愛している。
それはきっと、この先も変わらないのだろう。
(それが私達の愛なの)