※色々酷い
彼女が、嫌いだ。
純粋で、世の中の汚い部分など何も知らずに生きてきたようなこの美しい少女が大嫌いだった。
「…千鶴ちゃんを見てるとさあ、苛々するんだよね。すごく」
「沖田、さん」
「綺麗事ばかりで世間知らずでさ、めちゃくちゃにしてやりたくなる」
小さな顎を片手で掴んで乱暴に口付けると、華奢な身体が強張るのがよくわかった。
それを見て、どうしようもない残酷な衝動に刈られて、僕はもう一方の手で彼女を引き寄せて、温かな咥内へと強引に舌を捩じ込む。
そのまま逃げ惑う小さな舌を絡めとれば、彼女は弱々しく僕の胸を押した。
「……ほら、嫌ならもっと頑張って抵抗しなきゃ」
散々咥内を嬲った後、唇を離して囁いた。
「…沖田さん…、どうして、」
少し潤んだ琥珀色の瞳が、僕を見つめる。
ああ、苛々する。
この瞳が、大嫌いだ。
「千鶴ちゃんなんか、大嫌いだよ」
「沖田さ、」
「君なんかめちゃくちゃに傷付いて、二度と笑えなくなればいいのに」
僕の言葉に、彼女の形の良い眉が苦しげに寄せられた。
彼女が傷付く姿を見たら、少しは心がすっきりすると思ったのに、なんでだろう。なんだか、虚しい。
「沖田さん」
するりと彼女の白い指が僕の頬を這った。
苦しそうな琥珀の瞳が、僕を真っ直ぐに捕らえる。
「…沖田さんは、何がそんなに悲しいのですか?」
そのまま細い指が頬を滑り落ちていく。
…ああ、だから君なんか大嫌いなんだ。
「大嫌いだよ、千鶴ちゃん。死んでほしいくらいに」
可哀想な千鶴ちゃん。
これから君は僕にぼろぼろにされちゃうんだから。
もう一度噛み付くように口付けると、それを拒むこともなく受け入れた彼女に益々僕は苛立って、小さな身体を掻き抱いた。
(だけど、きっとその美しい花を手折ることなどできやしない)
【手折る】
1 道具を使わないで手で花や枝を折る。
2 女性をわがものにする。