※千鶴が芹沢さんや龍之介と出会ってるというトンデモ設定。キャラ崩壊注意。
格好いい芹沢さんなんてどこにもいない。
というか格好いい新選組はいない。
何でも許せる人向け。
「おい犬!雪村君はどこにいる!」
「………いや、知らねえよ」
…最近、思うことがある。
芹沢さんってロリコンなんじゃねえのかって。
「なんだと!貴様は本当に使えない犬だな。この駄犬が!」
「いや、雪村の動向をいちいち把握している方が気持ち悪いだろ」
「喧しい!」
いつも通り額に鉄扇が振り下ろされそうになった時、少し高めの声が芹沢さんの動きを止めた。
「あ、芹沢さん!」
声の主に目を向ければ、予想通りの人物。
宍色の着物を身に纏った、小柄な少年ーーーの姿をした少女。
内心助かったと思いつつ、芹沢さんへ視線を向けると、あれ?いない。
「雪村君、なんだ?俺に用か?」
「あ、いえ…土方さんが探していたようですから」
おいあんた瞬間移動でもできるのかよ。
つーか、いつの間に雪村の元へ行ったんだよ。
あんたどんだけ雪村のこと大好きなんだよ。
と、若干、いやかなり心の中でドン引きながら俺は芹沢さんを見つめた。
「土方が?ふむ、まあいい。ところで雪村君、暇か?」
「はい。今は特に用は無いですけど…。何か手伝うことでもありますか?」
「いや、雑用なんてそこにいる犬にでもやらせておけ。それより、平間から団子を貰ったんだ。良かったら一緒に食べないか」
「わあ!良いんですか?」
「ああ」
まるで花のようにふわりと微笑む雪村はものすごく可愛い。
おい芹沢さん、あんたそんなキャラじゃないだろ。
「前川邸で食べますか?」
「いや、八木邸で構わん」
「じゃあ私、芹沢さんと井吹さんのお茶淹れてきますね」
その瞬間、芹沢さんが物凄い勢いで俺を見つめる。それはもう恐ろしい顔で。
雪村、どうして俺の存在を忘れてくれなかった。
「い、いや、俺はいいよ。あ、そうだ!新見さんから用事を頼まれてたんだった!」
「そうなんですか?」
「あ、ああ!団子は二人で仲良く食べてくれ!」
雪村を騙すのは非常に心苦しい。
だけど、俺はまだ死にたくないからな!
「…で、君は自分の身可愛さに千鶴ちゃんと芹沢さんを二人きりにしたんだ?」
「い、いや、そうじゃなくて、」
「え?なんだって?」
「う…いや、はい。そうです。沖田の仰る通りです」
その瞬間、頭に拳骨が落ちてくる。
「っ、いってえな!」
「おい龍之介。てめえは男の風上にも置けねえなあ。あ?ああ?」
「おい原田、おまえ目が据わってるって…!」
「わー、左之さんやっちゃってー」
「左之、俺は止めない」
「ごめん龍之介…。今回ばかりはオレ、おまえの味方にはなれない」
「おい、てめえら!ごちゃごちゃうるせえ!芹沢さんにバレるだろうが!」
土方さんが一番うるさいんですけどね、と沖田の言葉にさらに土方さんが眉を吊り上げる。
「どうしてこうなった…」
縁側で仲良くお茶を飲む雪村と悪人面のゴツい男、もとい芹沢さん。
その二人を廊下の隅で壁に隠れながら見つめる男六人。
なんて絵面だ。
「千鶴ちゃんも警戒心が無いよね」
むすーっと膨れっ面で言う沖田。
「…雪村は、俺が守る」
禍々しいオーラを放つ斎藤。
「千鶴大丈夫かなー。芹沢さんになんかされねえかな…」
うーっと唸りながら芹沢さんを睨む平助。(まるで威嚇する犬みたいだ)
「千鶴は今日も可愛いな」
どこかうっとりしながら呟く原田。(芹沢さんより危ない気がするのは俺の気のせいでは無いはず)
「おいてめえら。いつでも千鶴を守る準備をしとけよ」
腰の刀に手を添えて、いつも以上に眉間の皺を深める土方さん。
カオスだ。
なんというカオス。
「大体さー、すべての原因は井吹君だよね」
「なっ、俺のせいかよ!」
「ねえ、選ばせてあげるよ。誰に斬られるのが良い?」
「まさかの生存率0%!」
「おい静かにしろ!話が聞こえねえだろうが!」
しっ、と口に人差し指を当てる土方さんの姿に沖田がぶっと噴き出す。
「…つーか、良い年した男達が盗み聞きってどうかと思うぞ…?」
「あ゛?なんか言ったか、井吹」
「いいえ、なんでもないです。ごめんなさい」
なんてガラが悪いんだこいつらは。
そして何故俺は巻き込まれたんだ。
「雪村君、今日は良い天気だな」
「そうですね。今日はきっと洗濯物が沢山乾きます」
「毎日精が出るな。他の奴等は手伝わんのか?」
「いえ、平間さんや井上さんや、あと井吹さんとかはよく一緒にやってくれますよ」
雪村の言葉に五人の視線が一斉に俺に向けられる。
「ひいっ!!な、なんだよ!」
「龍之介、抜け駆けはよくねえな」
「はあ?今の話のどこが抜け駆けだよ!」
「どうせ井吹君のことだから千鶴ちゃんと二人きりになれるとか邪な感情を抱いて手伝ったんでしょ」
「邪な感情抱いてんのはあんたらだろ!」
一体全体なんなんだこいつらは!
どうしてこいつらは雪村が絡むとこんな変態になるんだ。
「芹沢さん、このお団子美味しいです」
「そうか、それは良かった」
「これ、いわとやのお団子ですよね?私が食べちゃって良かったんですか?」
「雪村君以外に誰が食べると言うのだ」
「井吹君とか…」
「あの犬には残飯で充分だろう」
雪村の言葉に、再び五人の視線が俺に向けられる。
「な、なんだよ今度は!」
「なあ龍之介、千鶴の話になんでおまえばっか出てくんだよ!」
「知らねーよ!それこそ知らねーよ!」
「なに?龍千発生フラグ?そんなフラグ僕がバッキバキにへし折ってやるから」
「……斬る」
「お、おいっ、落ち着けって!うぎゃああああ!い、井上さーんっ、助けてくれ!」
「残念だったな井吹!源さんは今巡察だ」
「ええいっ、喧しい!」
響き渡るロリコン…もとい芹沢さんの声。
「俺と雪村君の時間を邪魔するな!」
うわ…良い年したおっさんが何言ってるんだ…。
ドン引く俺をよそに、他の五人は芹沢さんに負けじと言い返す。
「うるさい、このロリコン野郎。千鶴ちゃんに手を出すなら斬るよ?」
「…芹沢さんでも、手加減はできぬ」
「千鶴には指一本触れさせねえ!」
「千鶴の貞操を俺は守る」
「芹沢さん、あんたこんな年端もいかねえガキに手を出すとは良い度胸してんな。この変態!」
「変態はあんたらだろ…。ついでに芹沢さんの名誉にかけて言うが、芹沢さん雪村に手なんか出していないぞ?ただお茶してただけだろ…」
「うるせえ井吹!てめえから斬るぞ!」
「なんて理不尽な!」
ぎゃあぎゃあと喚くむさ苦しい男六人。
なんか…なんだかな…。
俺、京に出てきたの間違いだったかな…。
「…雪村、今のうちに逃げようぜ」
「で、でも、大丈夫なのかな…?」
「あんな変態放っておけ」
もう駄目だこの新選組。
(おい井吹!抜け駆けか!)
(なんだとこの駄犬が!犬鍋にされたいのか!)
(うわああああっ!刀向けるな!ぎゃあああああ!!)
千鶴大好きな芹沢さんが見たいという私の妄想の結果がこれです大変申し訳ありません。