12月某日。久しぶりに出た外は、自分とは対照的に真っ白だった。


いきなり体温が下がったからか、頭がめちゃくちゃキンキンする。最悪。


嫌な頭痛に顔をしかめていたら、ふと自分の身体の異変に気付いた。



「…(傷がもう塞がってる)…」



ついさっき負ったばかりの怪我が、すでに痕も残さず消えていた。


それを見てまた激しい頭痛がしたと同時に、頭の中に“夜兎”という単語がぐるぐるループした。




…もう私は人間じゃない。





「……ははっ…」



改めてそう思い、つい笑ってしまった。


怖くないと言えば嘘になる。ただ、もうどうだっていいという感情の方が強かった。



…自分の大切なものはもう失った。


なら自分がどうなろうと、もう関係ない。どうにでもなればいい。




「(私がどうなろうと、誰も哀しまない)」



唯一、哀しんでくれる人はもうこの世にはいない。いなくなった。


…私が殺したから。



なんて最低な人間なんだろう、私は。


大切な人をこの手で壊したというのに、涙だって出やしない。



最低、本当に最低な人間だ。






「ま…人間、じゃないけどね」






化け物だ。そうに違いない。


無二の親友をこの手で殺し、幕府の研究員をも皆殺し。もう立派な殺人兵器じゃないか。


しかも感情が死んでるときた。笑えてくる。




…どちらにせよ、私はもう幕府には居られない。というより、こっちから願い下げだ。





そう思いながら、何処へ向かうでもなくただボーッと歩いていると、前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。


…いや、正確には見覚えのある服装だ。幕府にいたから嫌でも良く知ってる格好。



あれは確か…警察庁?



すると、向こうも私の視線に気がついたのか、警察庁の男が後ろを振り向いた。




「お嬢さん、こんな所で何してんだ」






…それが、私と警察庁長官の出会い。






運命の分かれ道
やっぱり未来は予測できないものだ。