「…らっ…ラブレター?」

帰り際に勢い良く渡された手紙を読んだ私の第一声。

『ちゃんと読んで……返事くれよな』

帽子に隠れて表情は読み取れなかったが、恥ずかしそうに手渡されたそれは、紛れもなくラブレターだった。

「…商店街の大きなクリスマスツリーの前で待ってる。22時までに返事を下さい……か」

手紙の文面や文字からは真剣さが伝わった。

「おっ、内村からのラブレター?」

突如背後から聞こえた声に肩がビクッとなった。
振り向くと手紙を指差す森の姿。

「森か…ってかなんで内村からって知ってんのさ!」

「いや、お前ら見てたらバレバレだから…特に内村」

「まぁいいや、知ってるなら話は早いよ!私、どうすればいいと思う?」

私は内村の告白の答えに迷っていた。
自分も内村もお互いに本当に好き合っているのか、正直不安だった。

私と内村は見た目も性格も趣味も何もかもが正反対で、だから付き合うとか絶対にないと思ってた。
なのに……

「私…内村の事好きなのか分からない。私とは正反対すぎて、上手く付き合っていけるか分からない……不安なんだよ」

「俺は、なんでそんなに悩んでるのかが分からないな」

「えっ……」

「俺は正反対で良いと思う。二人でお互いにないものを補いあってるって感じがする。上手く言えないけど」

森はちらっと私の方を見るとすぐに空を仰いだ。

「内村見た目怖いし性格悪そうに見えるけど、本当は良い奴だぜ。まぁ、全部俺の意見だけどね」

そこまで言うと私の方に笑顔を向ける。

「まぁ俺が言えるのはここまで。あとは自分次第、頑張って!」

「森、ありがと。私考えてみる!」

「また明日、ちゃんと結果聞かせろよ」


森と別れて私は部屋で一人ずっと考えた。
頭の中は内村の事でいっぱいで、
そしてあっという間に時間は過ぎ、気が付くと夜20時半。
考えている間に寝てしまったらしく、お母さんの声で目が覚めた。

一階に降りてふっと窓の外を見ると、辺り一面銀世界が広がっていた。

「あっ、雪?」

「夕方からずっと降ってるわよ」

そういえば、内村ずっと待ってるって言ってたな。
でも流石にこの雪だしもう家帰って……

『内村待ってるよ、あいつ約束は絶対に守るやつだから』

森の言葉が頭から離れなくて、待ってるはずないのに……
身体が勝手に動き出す。
私はマフラーを手に取り上着を一枚羽織ると、商店街に向けて走りだしていた。

「ちょっと、どこ行くの!!」

「ごめん、ちょっと用事思い出した。商店街行って来る」

そう言って急いで家を出た。

商店街のクリスマスツリーの前まで必死で走った。

クリスマスツリーが目の前に見えた途端、一気に力が抜けていく。
クリスマスツリーの横、少し影になってる目立たないところに内村は立っていた。

「なん…で、いる…のさ」

私なんかのためにこんな寒空の中待ってるなんてあり得ないと思ってた。
でも、内村は学ラン姿でそこにいた。
手袋もマフラーもせずに一人で立っていた。

「うち…むら?」

「……なんで…」

私が声を掛けるとびっくりした表情で顔を上げた。

「なんでじゃないよ!!来いって書いてあったじゃん」

走り疲れた私はその場にしゃがみ込んだ。

「って事は……俺と…」

「私、内村とは絶対友達だって思ってたから、ここに来るつもりなかったのに…気付いたら走ってた……
だって、内村が寒空の中待ってるかもって思ったら、いてもたってもいられなくなったの!
これって好きって事なのかな?」

「――お前、結構鈍いんだな。それもう、完全に好き…だろ」

内村は帽子で顔を隠した。
瞳からは涙が溢れているのが見える。

「泣いてるの?可愛いっ」

そう言って帽子を取ろうとすると、「止めろよ!!」と帽子に伸ばされた手を振り払った。

「わぁ、内村の手超冷たい!手袋ないの?」

「持ってねぇよ」

内村は手だけではなく身体全体が冷えきっていた。

「これ貸してあげるから身体温っためな、風邪引いちゃう」

持っていたマフラーを内村の首に巻いた。
内村はマフラーに顔を埋めると、「ありがと。温かい」と嬉しそうに笑った。

「手貸して、温めてあげるから」

強引に内村の手をとる。
冷たさが段々と中和されていく。

「内村の手って小さくない?」

「なっ、それ俺が一番気にしてる事っ……もう一生繋がないからな」

わざとからかったのに内村はいつも本気にして拗ねる。

「そういうとこ可愛い!」

内村の頭をぽんぽんと撫でた。
私より背が小さい内村にとって屈辱的な事だから、物凄く嫌だという顔をしていたが、それもまた可愛かった。

「第一関節にも満たないよー」

「おっお前最悪な奴だな」

内村は怒っていたけど、顔は嬉しそうにしていた。
そんな姿を見て私も嬉しくなった。

「お前が来てくれて良かった……」

小さく呟いたその言葉に、私の体温は急上昇した。


真冬の中の温もり


次の日。

「風邪引くとか馬鹿だな内村」

「本当に私の為に風邪引くとか、ばーかばーか!」

「馬鹿馬鹿うるせぇ!見舞いじゃないなら帰れ」

この後、内村の熱が悪化した事は言うまでもない。
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