※死ネタです。赤也が死ぬのは嫌だという方は戻る事をおすすめします。
『俺、毎年絶対に…先輩の誕生日お祝いするッス!
先輩の誕生日12月24日だから、クリスマスも一緒に祝うッス!!
……だから、そんな悲しい顔するなって。
俺の為に……笑ってくれよ!!』
無理矢理笑顔を作った私に、君は優しく微笑んで涙を拭ってくれた。
そんな明るくて優しくて太陽のような君は……
もう今はいない。
「赤也のバカ……誕生日祝ってくれるって、約束したのに」
誰もいない屋上で一人、真っ青な空に向かって呟く。
赤也は私の誕生日を祝ってくれる事もなく、2週間前にこの空の向こうへと旅立った。
「約束…したのに」
「おい、お前こんな所にいたのかよぃ」
「なんだ、ブン太かぁ」
「なんだとは何だよ!せっかくプレゼント持ってきてやったのによぃ」
「……プレゼント?」
突然屋上に現れたブン太の手には大きな白い紙袋。
袋からは今にも溢れそうなくらい沢山の小さな包みや袋。
ブン太はその袋を下に置くと、一つの包みを手に取り私の目の前に来た。
「…これ、赤也からの誕生日プレゼント。ちゃんと受け取れぃ」
「赤也からなんて嘘でしょ?」
「はぁ?俺がそんな嘘付くわけないだろぃ……本当に赤也から渡してくれって、頼まれたんだよ」
私の大好きなピンク色の包み紙には、今は亡き赤也の下手くそな字で、
15歳の緋姫先輩へ
と書いてあった。
「赤也、約束しただろぃ!誕生日を毎年祝うってさ」
「……うん」
「だから赤也なりに色々考えて、真宮の為に20歳までの誕生日プレゼント用意して……俺に渡してきたんだぜ」
ブン太の一言一言が胸に響く。
赤也がどれだけ必死で用意してくれたかが伝わってきて、思わず涙が溢れる。
「手紙とプレゼント、今年の含めて6年分。袋の中に入ってる……詳しくは手紙見てくれって、赤也言ってたぜぃ」
「わかった…ブン太、ありがとう」
「よし、俺の任務は完了!って事で、俺は教室戻るわ」
そう言って、ひらひらと手を振って背を向けると、ブン太は教室へと帰っていった。
静まり返った屋上にプレゼントの包みを開く音だけが響く。
箱を開くと中からは私が前から欲しがっていたシュシュとリボンの髪留め。
「欲しいって言ってたの……覚えててくれた…の?」
そして、赤也の大好きだった夕焼けの空の描かれた可愛い封筒が目に入る。
手にとって封筒をあけると、中からは同じ柄の便箋が3枚入っていた。
ゆっくりと開いてみると、そこには赤也の決して綺麗とは言えない懐かしい字がびっしりと並んでいた。
―――――――
15歳の緋姫先輩へ
手紙なんて俺らしくないッスよね…
でもどうしても先輩に俺の思い伝えたかったんで、頑張って文章書いたッス。
誤字脱字あっても笑わないで下さいよ、先輩!
俺、毎年先輩の誕生日お祝いしたかったんッスけど、もう無理だと思います。
だから俺のない知恵を振り絞って考えた結果、先輩に先にプレゼント用意する事にしました。
俺の全財産叩いても20歳までのプレゼントしか買えなかったッスけど……
毎年一個ずつ開けて下さいよ!
一気に全部開けちゃダメッスからね!!
ずっと俺は先輩の事大好きッスから。
あぁ、書きたい事いっぱいあるんすけど表現が難しいんで……
最後に一言だけ。
緋姫先輩、お誕生日おめでとうございます!
そしてメリークリスマス!
切原赤也
――――――
『先輩の事、ずっと隣で守ってやりたかった』
「赤也ッ……」
最後の便箋を見た瞬間涙が溢れて止まらなくなった。
静かに流れ出す涙を止めようと上を向くと、そこには雲一つない青空が広がっていた。
この空の向こうには、きっと私の大好きな赤也がいるんだ……
「…赤也、ありがとう。来年も楽しみにしてるね!」
私は溢れんばかりのプレゼントの入った白い袋を抱えて、赤也がいるであろう空に向かって呟いた。
返事が返ってくる事はなかったけれど、キラキラと輝く太陽は…
まるで赤也が笑っているように見えて、私もつられて笑顔になった。
袋から溢れんばかりのプレゼント
『丸井先輩……大事な頼みがあるッス』
『なんだよぃ、急に』
『緋姫先輩の為に、俺…誕生日プレゼント用意したんッスよ!!もう一緒には祝えないと思うんで……。本当は…ずっと一緒にいたかった……先輩を守りたかったッス。でも、今の俺にはその資格はない……だから、丸井先輩お願いします。俺の代わりに緋姫先輩に…これ全部渡して下さい』
『わかったよ、渡してやるから顔あげろぃ』
『ありがとうございます。頼みますよ、先輩!』