「いらっしゃい」
「お邪魔します」
12月24日、クリスマスイヴ。そんな今日は愛しい彼氏――リョーマの誕生日で、誕生日会に招待された。
テニス部の人達も誘ったけど、二人で楽しめと言われてしまい。当然リョーマの両親は居るもんだと思っていたから、まあ仕方ないかなぁと無理には誘わなかったけど…。
「あの、お父様とかは?」
「出かけたみたいだね」
部屋、上。
それだけ言われて、慌ててリョーマに続く。階段を上がりながらリビングと思わしき場所を見るけど、人の姿は見当たらない。
今更ながら、緊張してくる。初めてに近い、二人っきり。うわわ…どうしよう、変じゃないよね、格好とか。
「…どうしたの?」
「あ、えと、なんでもないよ」
「そう。飲みもんとか、とってくる。何がいい?」
「なんでもいい、うん」
「わかった」
なんでもないやり取りにも、無駄に心臓は跳ねる。なにこれ、知らない。
…で、でもまあ、大丈夫だよ!今日はリョーマの誕生日、家族が帰ってこないはずがない!!
――と思ってた時期もありました。
「帰ってこないね」
「まあ、たまにあるし。ケーキ食べちゃお」
「…うん」
「多分今日帰って来ないから、泊まって行けば」
「うん…え!」
「なに」
訝しげな表情をしながら振り向くリョーマは、違った意味で見返り美人というか。ああいやいや、違う違う。そんな顔したって、いきなりは驚きますよ、リョーマくん。
…それよりも、気になることがある。
「ね、リョーマ」
「ん?」
「寂しくないの?」
「…寂しく思うから、泊まらないかって聞いたんだけど」
「あ、そうなの…って違う。せっかくの誕生日なのに、私からしか祝われなくて…寂しくない?」
一人が寂しくて泊まりに誘ったのなら、尚更。
生意気でつれないリョーマだけど、きっと寂しさを心の内に隠しているんだと思う。
ゆっくり見上げると、心底馬鹿にしてます、みたいな表情のリョーマがそこにはいた。
「馬鹿じゃないの」
言われた。
「緋姫から祝われるだけで、十分嬉しいから。」
真っすぐ、私をい抜くような視線で、断言。顔に、頬に、熱が集まってくる感覚。
甘い空間と熱い視線に耐え切れず、外に目を向けると。
「…あ、雪!」
願ってもない、珍しい自然現象。縁側に歩み寄って、襖を開ける。手を伸ばせば、掌に乗る結晶。
「ホントだ、珍しい」
珍しいこと、鼓動は高鳴って、でも頬の熱さはだんだん落ち着く。
「リョーマ」
「ん?」
「ハッピーバースデー、大好き」
「…ありがと」
願わくばホワイトクリスマス
明日も雪が降ってたら、勇気が出るかもしれないから。