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「今年のクリスマス、雪降らないんッスかね…」
リョーマが淋しそうな顔をして言う。
だから、私は思わず自信ももないのに断言してしまった。
「じゃあ、私が雪降らせてあげる!」
「緋姫にそんな事できるの?」
「できる!絶対に降らせてあげる」
「あっそ、楽しみにしてる」
でもそんな簡単に雪が降るほど人生甘くはなかった。
だってここは東京で……雪なんて滅多に降らないのだ。
案の定、当日は晴天で雪の降る気配すらなかった。
それでもリョーマを悲しませたくなかった私は作戦を考えた。
リョーマと仲の良い桃先輩にも協力してもらって。
そして今、私は昇降口すぐ真上の教室でリョーマを待っている。
>「……早く来ないかな」
待ってるのが暇で思わず呟いていたら、突如携帯が鳴った。
びっくりして画面を開くと桃先輩と表示されたメールが届いていた。
件名にたった一言、今下駄箱の文字。
それを見た私は急いであるものを抱えて、昇降口真上の窓に身を乗り出す。
「……あっ、桃先輩…とリョーマ!」
大きな声でリョーマの名前を呼んだ瞬間に、手に抱えていたものを全て投げた。
それはリョーマと桃先輩の頭上に降り落ちた。
白く丸いそのものは、まるで雪のように二人の周りに降った。
「リョーマ、びっくりした?私からのクリスマス&お誕生日プレゼント!」
下にいるリョーマに向かってニッコっと笑った。
するとリョーマは降り注いだ白いものを手にとる。
「……これがプレゼント?ただのあめ玉じゃ……痛かったんッスけど」
不機嫌そうに膨れながら言う。
折角頑張って考えたのにそんな顔しないでよね!
「リョーマ雪降ったらいあなって言ったじゃん!だから降らせてあげたのに……雪に見えたでしょ?」
「……見えたッスけど…でも、これあめ玉だし、痛かったッス」
「でも真宮、あめ玉降らせたらいけねぇーな、いけねぇよ。危ねぇって」
「もう、桃先輩まで!折角頑張って考えたのに……」
しゅんとして下を向く私にリョーマの優しい声が響いた。
「でも嬉しかったっスよ……緋姫」
「…リョーマ!ちょっと待ってて」
その言葉が嬉しくて私は教室を飛び出し、昇降口へと向かう。
全速力でリョーマに飛び付くと嫌がりながらもギュッと抱き締めてくれた。
「リョーマ、メリークリスマス。あとお誕生日おめでとう!」
願わくばホワイトクリスマス
(「で、プレゼントがあめ玉だけってことないッスよね?」
「えっ、あめ玉だけじゃ不満なのー。リョーマ欲張り」
「……もういいッス…」
「ごめんごめん。本当のプレゼントあるから!!」
不貞腐れていたリョーマは、私のその言葉を聞くと嬉しそうに笑った。)