「……なんて格好してるんですか」

「可愛いっしょー!」

「はぁ……」

ため息とか酷いなぁ。
せぇーっかく魔女っ子してるのに。

「別に今日はハロウィンじゃありませんから」

「知ってるよ!当日は平日だから今日来たの」

「秋休みでもないでしょう。よく此方に来れましたね」

「はじめちゃんへの愛だよ」

「はいはい」

うわっ軽い!
傷付くよもう。
山形からはるばる来たって言うのに……久しぶりだって言うのに。


ぱさり、と被っていた帽子を取ると、異変に気付いた。
100均のを色々アレンジしたこの帽子の中でも一際目立つ蝙蝠のマスコット。
それがいなくなっていた。


「蝙蝠どこ!?」

「は?」

「帽子についてた蝙蝠!はじめちゃんわからない!?」

「わからないもなにも……最初からついてませんよ」


そんな……
何度も作り直して頑張ったマスコット。
すごく気に入ってたのに……探さなきゃ。
滲んできた涙を拭いて、探しに歩こうとしたら「ねぇ」なんて声を掛けられた。


「淳くん」

「これ、君の?」

「え、あっ蝙蝠!」


彼の手の中にあったのは蝙蝠のマスコットで。
正門の前に落ちていたみたい。
もっと頑丈に作らなきゃ。


「ありがとう!あ、これあげる」

「え、いいのに……」

「たくさん作ったからね。お裾分け」


渡したのはかぼちゃプリン。
見た目も色々工夫してハロウィンぽくなってる。
はじめちゃんのティータイムのお供にと思ってたくさん作ったのは事実。
チームメイトと飲むとか聞いたからさー。


「ありがとう、えっと……」

「あ、真宮緋姫です。こちらこそ……淳、くん?」

「うん」


フッと微かに見せた笑顔に奪われました。


蝙蝠の羽根が導く運命
君はきっとキューピッド


「来年ここ入る」

「は?」





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