この時ほど、逃げ出したいと思った事はない。
受験勉強の息抜きに、元テニス部3年でハロウィンパーティしよう!って話になった。
手塚氏が思いの外ノリノリでびっくりだよ。
んで、当日学校が終わってから近くにある公民館のホールでやることに。
全員仮装で参加なんだって!
みんながどんな格好するかが楽しみ。
「って、あたしもしなきゃなんだよなぁ」
そんなにお金がないから、ダイソーとかでセット揃えるか。
あとお菓子用意しなきゃ。
イタズラ避けなきゃ……!!
「…………………………手塚氏、ナニソレ」
「俺の考えた山の神だ」
「知らんわ!!つかハロウィンに神様持ってくるな!!」
「すまん……」
「大石くんも大変だね……ドラキュラ?」
「ありがとう……わかってくれて」
手塚氏のインパクトがでかすぎて一瞬フリーズしてしまった。
周りを見渡すと、菊ちゃんが猫とかまんまじゃん!
思い思いの仮装していた。
「緋姫ちゃーん!トリックオアトリート!」
「菊ちゃん。はいお菓子」
「ちぇっ持ってたし!……あれ、手作り!?」
「そだよー。家に有るもんでちょいちょいっとな」
「わぁー、サンキュー緋姫ちゃん!!」
「いえいえー」
大声で言いふらした菊ちゃんのおかげでお菓子は完売した。
大好評みたいで良かった良かった。
……ここまでは。
「真宮」
「その声……いぬ、い?」
包帯ぐるぐるで、眼鏡と声がなきゃわからないよ。
「…………ミイラ?」
「そうだ」
なんかデジャブを感じた。
あれか、全国決勝だよねこれ。
「で、どったの?」
「トリックオアトリート」
「……は」
「だからトリックオアトリート。ハロウィンと言ったらこれだろう」
「…………………………ごめん、さっき完売した」
「そうか、じゃあイタズラ決行だな」
「?なにその水筒」
「新作だよ」
「え、まさか……」
「ハロウィンにちなんでかぼちゃをふんだんに使用したんだ。是非試してくれ」
包帯の下で、彼の口角が上がった。……気がした。
なんか視線を感じると思ったら、みんな哀れみの目を向けてるし!!
じゃあ代わってよもう!!
「さぁ、飲んで感想を聞かせてくれ」
「や、やだぁー!!!!」
微笑を浮かべるミイラ
(怪しいなんてもんじゃない!)
飲んで直ぐはぶっ倒れたけど、次の日には回復どころか調子いいわ肌綺麗だわでなんか得した気分になった。
乾汁、恐るべし!