六道骸が復讐者に捕らえられてから、10年。
もう10年経ったんだ…
僕は未だに君を咬み殺すことができないまま。
ねぇ骸…
君はどれだけ僕を待たせれば気が済むの…
「沢田…骸はまだ復讐者から解放されないの」
僕はボンゴレアジトの本部に来ていた。
「雲雀さん…すみません。まだ……復讐者が相手だといくらボンゴレでもそう簡単にはいかないみたいで…」
「……そう」
「すみません…」
「別に」
「やっぱり雲雀さんは…その…」
「何?はっきり言いなよ」
「む…骸に早く会いたい…ですよね?」
「当たり前だろ。あいつを咬み殺すことが僕の生き甲斐だからね」
早く骸に会って、
早く骸を咬み殺したい。
『六道骸を咬み殺す』
それは十年も前からの僕の望みだ。
初めて人から屈辱をあじあわされた、あの時からの。
「生き甲斐…ですか」
「話はそれだけだよ。じゃあね」
僕は沢田にそう告げると、足早にその場を去り、自分の屋敷に戻る。
(本当に…いつになったら、)
何回も脱獄しているはずなのに。
だったら今回も脱獄することなんて簡単だろ?
仲間の為に折角抜け出した復讐者にまた戻ることになるなんて…
君らしくもない。
僕はこんなにも長い間君を待っているのに、
君は今でも水牢の中で…。
「1人で無理なら、僕が助けに行ってあげようか…」
宙に復讐者に囚われている骸が思い浮かぶ。
手を伸ばしても届くはずはなく、僕の手は虚しく宙を空振る。
(助けても僕が咬み殺すんだから意味ないかな)
早く君と闘いたい。
早く君を咬み殺したい。
早く君に…会いたい。
僕がこんなに君を求めてるのに、骸は今でも水牢の中でものうのうと過ごしている。
こんなの、不平等だ。
「不平等、だ」
不安なんだよ、僕は。
君が死んでしまいそうで。
君が誰かに殺されてしまうんじゃないか、って。
他の誰かに君が殺されてしまうなら、
「僕が君を殺す」
―――――…
「雲雀さん!もしかして…」
「今から向かうところだよ」
「えぇ!?でもさっき話した通り、今骸は、」
「分かってる」
「雲雀さん…骸はもう、長くは生きられないんです、だから…」
僕は沢田が止めるのも無視し、真っ先に骸が収容された病院に向かった。
「やあ、骸」
「おや…」
「すみませーん師匠との面会は遮断されてるはずなんですけどー」
病室の扉を乱暴に開けると、骸がいた。10年前よりも長く伸びた髪の毛に大人びた顔。
そして、もう1人。
骸の傍らに佇んでいる、カエルの被り物を被った少年。
「君、誰?」
(骸の、何なの)
「ミーはフランですー初めまして、雲の守護者さん」
(フラン?聞いたことないな)
「ところで雲雀恭弥、何の用なんです?」
「決まってるだろ、君を咬み殺しにきたんだよ」
「そんなことだろうとは思いましたよ。場所を移しましょうか。フラン、お前はここに」
そう言って武器を片手に取り、部屋を出ていく骸を追いかけた。
どれくらい歩いただろうか。ふと、骸の足が止まった。
歩いている時、骸の背中を追いかけてばかりで周りの景色は目に入らなかったが、ここに来て初めて骸の背中から視線を外した。
視界に映ったのは懐かしい建物で。
「この場所こそ、僕たちの闘いに相応しいでしょう?」
僕が人生で初めて「屈辱」をあじあわされた。
六道骸なる者に出会った場所。
「黒曜…ランド、」
建物に足を踏み入れると、10年前のあの記憶が頭の中を過る。
「さあ…始めましょうか」
骸の言葉をきっかけに、僕は容赦なく骸にトンファーを振り下ろす。
その攻撃を槍で受け止め、後ろに引いて力を相殺する。
「10年振りだというのに…クフフ、君は変わりませんね」
「僕がこの日をどれだけ待ち望んでいたか、君に分かるかい?」
再度、彼の腹部目掛けて武器を振り下ろす。
「容赦ないですね。僕は一応まだ病み上がりなんですが」
「嘘つきだね。何が病み上がりだ、重病人のくせに」
骸が誰かの助けによって復讐者からの脱獄に成功したと沢田から聞いたとき。
もうひとつの事実を聞かされた。
長い間水に浸かり、体力は衰え、病原菌に対する免疫力なども低下し、骸の身体は病気に侵されていた。
沢田は僕に、
「骸はもう…長くは生きられないんです。だから、」
そう言った。
途中で部屋から出ていったから、その後の言葉は聞いていない。
恐らく沢田は、僕に骸を殺すなと言いたかったんだろう。
残りわずかの人生、骸にも幸せに生きていて欲しいと…そう思っていたんだと思う。
「!何故、君がそれを…」
「ふん」
「クフフ…知っているのならもう少しましな死に方をさせてくださいよ」
そんなことを笑顔で言う。ああ、この男は既に病気で死ぬ覚悟を決めているんだ。
「させないよ…そんな死に方、君には似合わない」
「似合う似合わないの問題じゃありませんよ」
骸は闘い始めてからまだ一度も本気を出していない。ずっと笑顔のままだ。
「ねぇ、そろそろ本気出してよ」
「…すみません」
眉をよせて切なそうに笑う骸は、まるで殺してくれと言わんばかりの顔をしていた。
それから何時間も激しい攻防を繰り広げた。
僕も骸も段々息が荒くなっていく。
「雲雀恭弥…僕は君が好きでした」
「!いきなり、何を…」
「それだけ、最後に伝えておきます」
今までの中で一番強い力で振り下ろした、とも思えるような一撃。
骸のことだから、槍で受け止め切れるのだろうけど…、そう思っていた。
「!?」
今までとは違う、肉に食い込むような、切り裂くような感覚。
「……骸」
床に倒れ込む、大量の血を流して。
「わざとだろ?馬鹿じゃないの」
「恭弥…君と、しあ、わせに…なりたか、った」
それを最後に、
骸は息絶えた。
もう骸がいない、ただの亡骸を抱きしめた。
「最後にそんな言葉残すな…」
僕はこんな終わり方しかできなかったけど、もっと別の方法があったのか、
病気の骸が衰弱していくのを見守る?
そんなの嫌だ。
だから、これでよかったんだ。
だってこれで骸は僕のもの。他の誰にも、何にも捕られない。
勿論病魔にだって、
これから君はずっと僕のそばにいて、もう二度と離れることはない。
骸には生きていて欲しかった。
でも殺したかった。
でないと君がまた何処かに行ってしまいそうで。
もうあんな思いはしたくないんだよ。
殺してしまえば、
君は永遠に僕のものでしょ?
なんて歪んだ愛。
でもこれが僕達なんだ、
そうだろ?骸…
END
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ALLIANCEさんに捧げます!!(*´∇`)ノ
お待たせしましたーーっ
かなり待たせたうえに駄文ですみません(ToT)
リクエストしてもらった内容にそえている自信がないですOTZ
書き直してほしいところなどがありましたら何なりと!お申し付けくださいませ^^*
では、相互ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします(●´mn`●)