十代目を好きだって気付いて、どれくらい経ったんだ?

二、三ヶ月ぐらいは経ってるのか?



「ぅーん………」

「どうしたんだよ、獄寺」

「何でもネェよ!!野球バ……カ」


………コイツなら、相談のってくれるかもしれねぇ…。

今は放課後で誰もイネェし。
幸い、十代目も笹川妹と一緒に帰られてるし…。(それはそれでよろしくねぇけど)


「なァ…」

「ん?何だ?」

「好きな…人がいるんだ、けどよ…。」

「え、あ、うん」


山本が少しキョドったのに気付いた、あの俺がこんな話をするからだと思う。


「告白ってよ…いつすればいいんだ?」

「はっ?」

「あー、…その、だ。好きになってから、っていうか好きって気付いてから……どのくらい経ったら告白すればいい…と思う?」

「…いつでもいいんじゃね?」

「いつでも…か」

「好きになったらすぐ告白!って奴もいるし、慎重に考えて告る奴もいるし、人それぞれだと思うぜ」

「……お前は?どっちなんだよ?」

「んー…俺は怖くて言えねぇ…かな」

「断られんのがか?」

「いや、拒絶されんのが」

「拒絶…?」

「ああ。告って、フラれるか、受け入れられるは別として…その後が怖いんだ…」

「その後?」

「今まで築き上げてきたものが、俺が告ったことによって崩れるのが怖いんだよなー。それなら友達のままでいいかなって思ちまって、さ…」


それは分かる気がした。
俺も、それは思う。


でも、


「でも、その気持ちより告白したいって思う気持ちが勝ったら、どうする?」


今、拒絶されるよりも自分を受け入れてほしくなって。

十代目が俺に好きっておっしゃったら、
十代目が俺に触られたら、
十代目が俺を抱き締めてくれたら、


そんな感情が生まれて、前者より後者が勝ってしまった。


「んー…それは、もう告白しちゃえばいいんじゃね?」

「直接か電話かメールの中で一番いいのどれだと思う?」

「そうだなー、メールじゃねェか?」

「メールか…」


確かに、メールだと自分の言いたいこと全部言えそうだ。
電話や直接だと焦って何も言えなくなりそうだ。


「…分かった。ありがとな、話聞いてくれて」

「いや、全然いいぜ!」


よし、今日にでも、告白するか!!












いつの間にか、だったんだ。
好きになったのは。

いつの間にか好きになって、自分じゃどうしようも出来なくなっていた。



今日はツナが笹川と帰っていて俺と獄寺で帰る予定だった。

だけど、それは獄寺の以外な話により崩されてしまった。


「なァ…」


神妙な面持ちで話しかける獄寺を見て、可愛いと思った。

大分、イカれてるなー、俺。

同性の奴のことを好きになる日がくるなんて思いもしなかった。


「ん?何だ?」

「好きな…人がいるんだ、けどよ…。」

「え、あ、うん」


正直に言えば驚いた。
というより、ショックだった。

獄寺に、そんな奴がいたなんて。


「告白ってよ…いつすればいいんだ?」

「はっ?」

「あー、…その、だ。好きになってから、っていうか好きって気付いてから……どのくらい経ったら告白すればいい…と思う?」

「…いつでもいいんじゃね?」

「いつでも…か」


始めは、デタラメを言ってやろうと思っていた。
でも獄寺の真剣な表情に、浅はかな俺の考えは消えた。


「好きになったらすぐ告白!って奴もいるし、慎重に考えて告る奴もいるし、人それぞれだと思うぜ」

「……お前は?どっちなんだよ?」

「んー…俺は怖くて言えねぇ…かな」

「断られんのがか?」

「いや、拒絶されんのが」

お前に、拒絶されんのが怖い。


「拒絶…?」

「ああ。告って、フラれるか、受け入れられるは別として…その後が怖いんだ…」

「その後?」

「今まで築き上げてきたものが、俺が告ったことによって崩れるのが怖いんだよなー。それなら友達のままでいいかなって思ちまって、さ…」


俺、何言ってんだよ!
こんなの好きなのはお前だ!って言ってるようなもんじゃねぇか!!

それでも獄寺が好きな俺はベラベラと口が滑ってしまう。


「でも、その気持ちより告白したいって思う気持ちが勝ったら、どうする?」


ついさっきの、
2、3秒前の自分が惨めに思えた。

今、獄寺が好きなのは俺じゃない。

俺なんかはどうでもよくて、ただ他人からの意見を聞きたいだけ。


でも、そう思ってもよ、心の中で期待してんだ。

俺が本音を話すことで、俺という人間が分かって、獄寺の気持ちが俺の方へ傾いてくれるかもしれない…と思ってしまう俺がいる。



「んー…それは、もう告白しちゃえばいいんじゃね?」

「直接か電話かメールの中で一番いいのどれだと思う?」

「そうだな、メールじゃね?」

「メールか…」


ゴメン、獄寺。
メールが一番いい告白法なんて、嘘。

でも、これぐらいの嘘は許してくれよ…。

お前がどんな告白法で告ったとしても、お前が好きだと打ち明けた女は皆、OKするよ。



少しの意地悪ぐらい許してくれ。












「ありがとな、山本」

「…お、おう!どういたしましてだぜなーっ!」

「お前、だぜなーって何だよっ」

「や、びっくりしちまってよ。まさか獄寺が俺の名前呼んでくれるとは思わなかったから、さ」


確かに、今まで俺は山本のことを野球馬鹿、野球馬鹿言っていた。

でも今日の一件で、野球馬鹿から山本という呼び方に昇格した。


「今度からは"武"って呼んでやろうか?」


面白半分で言ったつもりが山本はその場にうずくまり、顔を真っ赤にさせてしまった。


「っ…///」

「おい、山本?どうした……ぅおっ!?」


立たせてやろうと思い、山本に手を伸ばすとグイッと手を引かれて俺は山本にがっしりと抱き締められた。


「おいっ!野球馬鹿!!離せよっ」

「獄寺っ……」


山本が顔を上げた刹那、何かが口に触れた。

それは、俺の口の中にまで入り込んでしまう。

クチュ…クチャ…という嫌らしい音が耳を犯す。


ここで俺はやっと気付いた。

山本と、キスしてる…!?


「んんーっ?!ふぅっ!!ぅーっ!」


ドンドンと力一杯、山本の胸板を叩いているのに山本はやめてくれない。

それどころか、もっと深く舌を入れてくる。


「っぁ、んんっ…ん、」


段々、思考が奪われていった。
意識が朦朧としてきて、何がなんだか分からなくなっていく。


「っはぁ、はぁっ…」


やっと離してくれた時には息はゼェゼェ。

山本は黙り込んでしまった。


「…んで、こんなことっ…」

「お前が、好きだから」


顔を上げた山本の頬には涙があった。


「は…?」

「気持ちワリィって思うかもしれねぇけどっよ…っく…好きなんだよっ…獄寺が…っく」


嗚咽を繰り返しながら泣く山本なんて初めて見た。

その前に、泣く山本を初めて見た。


「本当…なのかよ……」


コクンと頷くだけして、山本は俯いてしまった。


「………。」


自分も同じような恋をしているから断っちまったら、あまりにも山本に酷すぎるんじゃネェかと思った。

でも、ここで頷いちまったら駄目だ。


「ワリィ、山本。俺は…」


俺は、


「十代目が好きなんだ」


もう、この人以外…考えられない。







好きになっちゃいけないのに。
分かってるのに…

想い(心)は止まらない。









「それでね、ハルちゃんたら…」


隣りで一生懸命状況を説明しようと頑張っている京子ちゃんを見て可愛いな、と思った。

でも
可愛いと思うだけで、胸が締め付けるわけじゃ無い。

いつの間にか俺の好きな子は、京子ちゃんじゃ無くなっていた。


「って言うんだよ?ハルちゃんって面白いよね!」

「うん、そうだね…」


京子ちゃんのことが嫌いなんじゃないけど、恋愛感情は持てなくなっていた。

今日はたまたま帰りが同じだったから京子ちゃんに誘われて一緒に帰ることにした。


「ツナくん…」

「ん?何?」

「何か…あった?」

「…どうして?」

「なんだか、元気無さそうだから…」

「別に何でもないよ、気にしないで!」

「じゃあ…何でそんな泣きそうな顔してるの…」

「え…」

「この頃、ずっと泣きそうな顔してるよ。ツナくん」

「………」


泣きそうな顔…?

確かにそうかも。

獄寺くんのことを思うと胸が張り付くように痛くなる。

獄寺くんが他の子と喋ってると心の中でモヤモヤとした気持ちが溢れる。
友達の事をそんな風に見ている俺に腹が立って泣きそうになる…。


「私に…言えないようなこと…?」

「………」


京子ちゃんなら…俺のことを理解してくれるかもしれない…。


「俺…好きな人がいるんだ」


いつの間にか俺達の足は止まっていた。

夕陽だけが俺達を包んで、オレンジのベールが綺麗に俺達を写し出す。


「うん」

「でも、その人は好きになっちゃいけない人で…」

「………」

「でも、この想いを止めることは出来なくて…どうすればいいのか分からなくて…」


前に辞書で『恋』という言葉を引いたことがあった。

その辞書には『好きで、会いたい、いつまでも そばにいたいと思う、満たされない気持ち』と書いてあった。

でもそれは異性の間だけで同性の間の恋愛には名前は付けられてないって書かれていた。


じゃあ、俺の獄寺くんへのこの感情は持っちゃいけないの?って思って…。



そう考えているうちに涙が溢れそうになった。



「好きになったら駄目な人なんていないよ。誰がそんなこと決めたの?」

「それは…そうだけど…でもっ…」

「ツナくんは、誰かが『そんなことは想っちゃダメなんだよ』って言ったら、その人を諦められるの?」

「ツナくんの想いは、そんなもの?」


…諦められるわけがない。

誰にもこの想いは止められない。


好きになっちゃったんだから。

絶対にこの想いは変わらない。



世間体なんかどうでもいい。
同性同士だって関係ない。


好きだから、獄寺くんが。


「ごめん!俺、学校戻る!!」

「うん。分かったよ!気をつけてね!!」


俺は京子ちゃんが後ろで応援してくれているのを聞きながら走っていった。


「京子ちゃん!ありがとー!!」

「どーいたしましてー!」

京子ちゃんは、笑って俺を送り出してくれた。

本当にありがとう。
勇気をくれてありがとう。




「頑張れ、ツナくん。」


…ーー獄寺くんと幸せになってね…ーー


京子は、夕暮れの土手で一人囁いた。













大切な親友と同じ人を好きになるなんて思いもしなかった。

ねぇ、
君はどっちを選ぶの?






無我夢中で走った。

ドタドタと階段をあがり、教室に来たときには呼吸がちゃんと出来なくなっていた。


獄寺くん…まだいるかな…。
よく考えたら、もう帰っちゃってるかもしれないんじゃん!!

いるかな……。



ガタッ…



丁度その時、教室から物音がした。

もしかして…獄寺くん?

獄寺くんかもしれない、という期待と不安で、俺はそっとドアから顔を出した。


え…


そこにいたのは獄寺くん…と山本。

しかも…

キス…してる…!?


「っぁ、んんっ…ん、」


聞こえてくるのは確かに獄寺くんの苦しそうな声。

…なんで山本と獄寺くんが………。

二人ってそういう関係…!?


「…んで、こんなことっ…」


嫌な考えをしていると息が乱れた獄寺くんの声がしてきた。
俺はまた、教室の中をそっと覗く。


「お前が、好きだから」

「は…?」

「気持ちワリィって思うかもしれねぇけどっよ…っく…好きなんだよっ…獄寺が…っく」


山本は、泣いていた。

山本も獄寺くんが好きなんだ……。
俺は、ほっとする筈なのに悲しさで心が包まれた。獄寺くんと山本がそういう関係じゃなくて、嬉しいと思うはずなのに、山本が泣いていて心が痛む。

もし俺が山本の立場だったなら、俺も山本みたいに泣いていたと思う。

自分への虚しさと獄寺くんへの申し訳なさで…。

獄寺くん…君は俺と山本…どっちを選ぶの?


「本当…なのかよ……」


コクンと頷く山本。
獄寺くんは暫く黙り込む。

俺は獄寺くんの言葉を待つ。その緊張で手には汗びっしょり。

暫くすると何かを決心したかのように話し出した。


「ワリィ、山本。俺は…」
「十代目が好きなんだ」


え?

えっ?

今の、聞き間違いじゃないよね!?

獄寺くんが…俺を好き?


「そっか!!やっぱり獄寺はツナが好きだったのか!!」


さっきまでの涙が嘘のように山本は笑って獄寺くんを見た。


「…気付いてたのかよ」

「んー…何となーくそんな気がしただけだぜ。っつか…ツナ。いい加減出て来いよ」


ビクッ


山本…気付いてたんだ……。


「気付いてたの…?」


ひょこっとドアから顔を出すと、そこには顔を真っ赤にさせた獄寺くんとニコニコ(ニヤニヤ?)笑ってる山本がいた。


「なっ!!十代目!?何でここに!!」

「やぁー……わ、忘れ物を…しちゃって…」


即興で考えた言い訳にしてはいい出来だと思う。

獄寺くんは唯焦っている。


「じゃあ、俺帰るから、後はツナ達で決めろよ。じゃあなー」


そう言い残し、山本は鞄を持ってスタスタと教室から出て行った。


え、この状況をどうしろと!?


一人パニクる俺に獄寺くんが十代目と遠慮深そうに話しかけた。
何?と焦りながら返答すると恥ずかしそうに、こう言った。


「さっきの話…聞いてました…?」

「え!?あ、あー………うん…」


もう腹をくくるしかないと思った。

獄寺くんの口から、その言葉を聞きたい。


「っ…///」

「ねぇ…本当…なの?」



君の想いを…
聞かせて?












恥ずかしくて
心臓が爆発しそう…。






「ねぇ…本当…なの?」


十代目の不安そうな目が俺を見つめて、俺は泣きそうになる。


「本当だと言ったら、十代目は俺を…嫌いますか……?」

「……」

「もう、友達じゃなくなっちゃいますか…?」


あなたのから
優しく声を
かけられることすらも
なくなっちゃうんですか?


「友達は…もう無理だと思う」


ズキンッ…


心が苦しくなった。

涙が溢れて、視界がぼやける。


「っすよね……も、こんな奴っ…ヤ、ですよね…っ」

「違うよ。そういう意味じゃないから、泣かないで?」


そう言いながら十代目は優しく俺にキスを落とす。


「え…?」

「俺は、君が好きだから。もう君を友達だとは思えないんだ」

「っ…本当で、すか…っ?」

「うん。本当」


優しく微笑む十代目が愛しくて嬉しくて堪えていた涙が一気に溢れた。


「泣かないで?獄寺くん」

「うっ、っく…っ」


泣かないで、なんて言われたら余計に涙が溢れる。


「獄寺くん、大好きだよ。」


心地の良い十代目の高音な声が俺に安心感を与えてくれた。何度も好きだよ、大丈夫だからと俺に優しい言葉をかけてくれる。
次第に涙も治まっていた。


「俺も、十代目が好きです…」

「うん…ありがとう」



愛しい君へ、愛の言葉を。

何億分の1の確率で
君と出会い、
何億分の1の確率で
君を好きになった。

これって、凄いことだよね?


君が、この世に生まれて
君が、俺と出会って
俺を好きになってくれた。

ありがとう。

これからは君を精一杯、愛していきます。


End and Happy birthday



おまけ↓







涙が溢れそうになる瞳を屋上の空へと向けた。

夕焼けのオレンジと少し青が残っている空が、綺麗すぎて

自然と口元が緩んだ。
(哀しみを隠すように)





失恋。

なんて…いつしたっけなあ?


こんなに、人を好きになるなんて…

今までなかった。



好きだ。
好きだ…。


「好きなんだよ…っ。お前がっ……」


何よりも
誰よりも

大切な、

お前 が。
(獄寺)


悲しいのに、涙は出ない。


「情けねぇな…俺」

「ホントにね」


ここには、俺一人しかいなかったはずなのに、何故か後ろから声がした。誰だ?と思い、後ろを振り返ると、ここにはいるはずの無い雲雀がいた。


「っ、…こんなとこでどうしたんだ?雲雀。」


失恋の悲しみをかき消すように、精一杯の嘘の笑顔をつくった。
すると、雲雀はこの面が気に入らなかったらしく、その顔、ムカツクからやめてと言った。
雲雀には、何でもお見通しってわけか。そんなことを思っていたら、雲雀が俺の真正面に居るのに気が付いた。


「雲雀?」


俺が彼の名前を掠れた声で呼ぶと、雲雀は俺の左頬にそっと右手を添えた。


「泣いていいんだよ」


まるで、子供をあやすように優しく放った声が俺の心に優しく突き刺さった。


「え…」

「泣きたかったら、泣いていい。それを我慢しちゃ駄目だよ」


俺は、その言葉に誘われるように雲雀の胸に納まった。
そして、それと同時進行で涙も溢れる。



優しい言葉と
温かい体温が
俺の心を癒す。

何より、普段ならこんなこと絶対にしてくれない雲雀恭弥という存在が
俺の心を癒してくれた。


俺は、その後、バカみたいに泣き叫んだ。
その間も雲雀は抱きしめてくれた。



人って、こんなに温かいもんだったんだな…。

冷たかった心が、じわじわと温まっていくのを感じながら
俺は止まることの無い涙を流していた。

END



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