春、桜が咲き誇るこの季節。
桜を見ると、君の事を思い出す。
毎年毎年…
桜を見る度に君との思い出が蘇る。
骸、桜を見に来ようって…約束したよね?
今ではもう叶わないと分かっているけど、
…それでも僕はまだ期待してるんだ。
君と桜を見れる事を―
「恭弥、もう少しで春ですね」
「そうだね…もうそんな時期か…」
「!…恭弥ッ!」
骸が目をキラキラ輝かせて、僕の方を見てきた。
…嫌な予感がする。
「お花見に行きましょうッ!」
「やだ」
「何故ですか?!」
「面倒だからだよ」
「恭弥〜…」
「やだ」
「………」
「骸?」
「そうですよね…僕と行っても楽しくないですもんね、僕と行っても」
「ちょっと…」
めんどくさい事になってきた。
「どうせ恭弥は僕の事なんてどうでもいいんですね…僕達、一応恋人同士なのに…」
「骸」
「僕の誘いは断っても、他の人の誘いは断らないんでしょうね…恭弥の浮気者ッ!」
「誰が浮気者だって?」
「………」
「…分かったよ、行こう」
「!本当ですかッ?!」
「うん」
「恭弥!ありがとうございます、大好きです!」
骸はそう言って僕を抱き締めた。
「ただし、」
「?」
「次の任務が終わってからね」
「あぁ…そういえばボンゴレから任されていましたね」
「足引っ張らないでよね、骸」
「はい…恭弥は僕が守りますからね」
「僕は強いから骸に守ってもらう必要ないよ」
「………恭弥、」
「…何」
「お願いですから、怪我はしないでくださいね…?」
「うん」
骸…急にどうしたんだろう?
「では、また明日」
「うん…」
―翌日―
「恭弥、起きてますか?」
「起きてるよ」
「準備できましたか?」
「うん…行こうか」
「はい」
数分後、僕達は任務先に到着した。
「…ここのファミリーを殲滅すればいいんでしょ?」
「はい、そのようですね…」
『おい!こっちにいるぞ!』
「おや?早速見つかってしまったようですね…」
「あっちから来てくれて、むしろ好都合だよ」
「行く手間が省けましたね」
「骸はそっちの通路から行って」
「それでは恭弥を守れないじゃないですか」
「僕は大丈夫だよ」
「しかし…」
「僕を誰だと思ってるの」
「クフフ…そうですね…ではまた後で」
「骸っ」
「なんですか?」
「骸も怪我しないでよね…///」
「!はいっ、」
こうして僕と恭弥は別々の通路を行く事になった。
『ぐぁっ…』
『貴様…ボンゴレファミリーの者だな!?』
「クフフ…さぁ、どうでしょうね」
『ふ…ふざけるなぁっ!』
一人の男が銃を撃ってきましたが…残念です…
それは僕の幻覚ですよ…
そんな事も気付けないなんて…
「クフフ…どこに撃ってるんです?僕はこっちですよ」
『なっ!?何故…』
「さようなら」
『くそっ!…うぐっ…』
「それにしても長い廊下ですね…部屋数も多いですし…」
だからボンゴレは僕と恭弥を…
「…まるで相手になりませんね…」
最後の敵を倒し、辺りを見回すが、恭弥の姿は見当たらなかった。
「恭弥…どこですか…」
カキィンッ!
どこからか金属がぶつかりあう音が聞こえた。
「恭弥…?」
音が聞こえる部屋のドアを開けると、そこは大広間のような所だった。
その部屋の中心に、
「恭弥!」
「骸…!」
恭弥は複数の相手と闘っていた。
「恭弥から離れなさい、マフィア風情が…」
『ゔ…』
「生意気なんですよ」
その部屋にいた男達を全員倒すと、僕は恭弥に駆け寄った。
「恭弥、怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ」
「そうですか…」
「もう敵はいないの?」
「はい、恐らく」
「そう」
「帰りましょうか」
「うん」
「本部に着くまで油断しないでくださいね」
「分かってるよ」
「では行きましょうか」
そのファミリーのアジトを出た時、僕の視界の端に人影が映った。
「恭弥」
「…………」
どうやら恭弥も分かっているようだった。
『おい…お前等か?俺の城を汚したのは…』
「君がファミリーのボス?」
『だとしたらどうするってんだ?』
「…かみ殺す」
『それはこっちも同じだ』
「大きなアジトにしては敵が少ないとは思いましたが…」
『ははっ!まさか外に居るとは思わなかったろ?』
「いえ…これも予想の範囲内ですよ」
『あ゙ぁ!?言ってくれるじゃねーか…おいお前等、やっちまえ!』
ファミリーのボスがそう言うと、周りにいた男達が一斉に襲いかかって来た。
『ぐぅっ…』
『ぐあぁっ…』
『ゔっ…』
男達は僕と恭弥の手によって、地に這いつくばっていった。
「もっと強い奴…いないの」
「どうやらいないようですね…口程にもない」
そして、残りはファミリーのボスだけになった。
『ま、待てっ!何が望みだ!何でもくれてやる…だから殺さないでくれっ!』
「何でも…ですか?」
『あぁ!何でもやる』
「では、貴方の命を」
『!!?ッぐ…ゔ…』
「終わりましたね…」
「そうだね」
「では帰りましょうか、恭弥」
「うん」
「帰ったら、早速お花見に行きましょう!」
「やだよ」
「どうしてですか!?任務が終わったら行くって言ったじゃないですか!」
「任務終わってすぐ行くとは言ってないでしょ!」
「恭弥…」
「…分かった、行けばいいんでしょ」
「はい!何を持っていきますか?焼酎ですか?」
「何で焼酎なの?」
「焼酎を飲んで、頭にネクタイを巻いて腹踊りをするんでしょう?」
「…ッ…」
「恭弥…笑ってるんですか?」
「間違った知識だね」
「違うんですかっ?!」
「やるならやればいいんじゃない?」
恭弥と花見の話をする事に気を取られていた僕は、後ろで銃を構えている者がいることに気がつかなかった。
「!恭弥」
気付いた時はもう遅かった。
弾は放たれていた。
僕は咄嗟に恭弥の前に飛び出した。
ドーンッ…
銃声が鳴り響いたと思ったら、次の瞬間には僕にもたれ掛かってくる骸がいた。
「骸…?」
「恭弥…」
「…むく、ろ…」
「恭弥、逃げ…て、くださ…」
骸は気を失った。
「骸…」
僕は急いでボンゴレ本部に帰った。
骸はボンゴレの医療班に運ばれて行った。
―数時間後―
「雲雀さん、手術は無事に終わりましたよ」
「骸は…助かったの?」
「はい、…ですが、目をさますかどうか分からないそうです」
「どういう事…」
「目をさます可能性は、0%に近いそうです…」
「!」
骸が…目をさまさない…
二度と?
あれから3年…
骸は未だに目をさまさない。
3度目の春が来た。
まだ骸との約束は果たされない。
「お花見に行きましょう!」
君がそう言ったんだろ…
早く目をさましなよ…
僕は、桜並木の道を一人で歩いていた。
「骸…」
この満開に咲く綺麗な桜を君にも見せてあげたい。
この満開に咲く綺麗な桜を君と一緒に見たかった。
骸とはもう見れないのかと思うと、僕の頬を涙が伝った。
「骸っ…」
「なんですか?」
「っ!?むく、ろ…」
「はい」
「本当に…骸なの…?」
「そうですよ、恭弥」
骸が僕に手を差し延べ手きた。
「こっちに来てください」
「ッ…骸…!」
(明日は天気がいいそうなので、お花見しませんか?)
(うんっ…!)
〜END〜