久しぶりに明日休みだから会えないかな、とヒロトに聞かれて私は即答で会いたいと答えると電話越しにヒロトが笑った
それは昨日の夜のお話で、今は昨日の、明日でそしてお昼。私はヒロトのお部屋にあがりこんでいる
「サッカーしたいな」
「しないの?私、ついていくよ?」
「うん。サッカーもしたいけどそれより君の側で、こうやって居たいから」
「そっか、ありがと」
「うん、どういたしまして」
ヒロトの少し大きな手が私の手を掴む。私もヒロトの手を握り返す。あ、まただ。ヒロトがいつもみたいにゆるゆると目を細めて私を見る。ヒロトは、いつもその顔をした後必ず、私に好きだって言ってくれる
「ねえ、好きだよ」
「私もヒロト好きだよ」
「俺の方が、君よりももっとずっと前から、好きだったよ」
「え、違うよ。私の方が絶対長いよ」
「ううん。俺は、君をずっと見てたから絶対。俺の方が君を先に好きになったよ。俺が、先だったんだ」
「……そう、かな?」
「そうだよ」
好きって言われると何だかくすぐったいし、手を繋ぐのは少し照れちゃうし。キスなんて、私にはまだまだ先の話だ。でも、私はそれでいい。ううんそれがいい。
きっとこの先ヒロトはサッカーの凄いプレーヤーになって、大好きな円堂くんや緑川くん達と一緒に世界で大活躍して。沢山の希望を背負う筈だから
私は、その希望を背負った素晴らしい人の隣に居られる。そう思うと少しだけ、にやけてしまう
「ねえ何考えてた?凄くにやにやしてたけど、いやらしい事考えてたの?」
「ち、違うよ。ヒロトの事考えてたの。凄いサッカープレーヤーで、将来皆の期待を背負うヒロトの直ぐ側で生きてて、愛されてて……私、凄く幸せだよ」
「俺も。俺も、君に期待されてて、愛されて幸せ」
ヒロトは私をぎゅうっと抱き締めて、くすくす笑った。私も何だか嬉しくなって一緒に笑ったらヒロトは私の頭を撫でて、またゆるゆると笑った
「好きだよ」
「私の方が、好きだよ」
「じゃあ今日は君の方が、俺の事好きで居てね。明日は、俺の方が君の事を好きそうしたら、平等だろ?」
くすくす、くすくす。あんまり広くないヒロトの部屋には私達の笑い声と近所の子ども達の元気な声しか聞こえない
透明なしあわせの足音
わたし、いますごくしあわせです
100709