3Z
沖田×神楽




ジワジワと忙しなく鳴き喚く蝉を一つ一つ潰してやりたくなるほどの暑さの中



なぜ自分達はこんな灼熱地獄の放課後の屋上に立っているのであろうか。


原因は明白。
目の前に立つコイツが悪い。


夕方で幾分か日は傾いたにしても、射すような西日は陽光を得意としない神楽にはキツイ。


「いったいなんの用アルか。」



人を呼び出しておいて目の前に立つサディスティック星の王子は用件を言おうとしない。



「お前ってホントに可愛いげのねぇヤツでさァ。」



頭をかいて、涼しい顔をするヤツに、本当に殺意が沸いてきそうだ。


(…可愛くなくて悪かったナ。)


イライラしていると顔に出たらしく、「怒んなよ。」と言われた。


「うるさいネ。早く用件言いやがレ。」



その琥珀色の瞳を睨みつければ、睨むとはまた違う眼差しで真っ直ぐにこちらの瞳を見る双眸。


「チャイナ」



ゆっくりとした足取りでこちらに近寄るヤツ。


その呼び方やめろヨ。


そう言おうとしたのに、流れる空気が声を発することを許さない。


あぁマズイ。

頭がクラクラとしてきた。



カシャン



屋上のフェンスが軽い音を立てて軋み、自分がフェイス際に追い詰められてたことを察する。



「逃げんなよ…。傷つくなぁ。」



軽い調子に言う総悟の顔は、息がかかるほどに近い。



「なに…」
「チャイナが好きでさァ。」



前髪で影のできた顔から、あの瞳が神楽を真っ直ぐに見ている。



暑い…熱い。


自分の顔や体や頭が熱くて死にそうだ。


「お前…熱中症アルか?」


蝉の声が弱まったような気がした。


「それはチャイナの方だろィ。」



答えを求める瞳が、逃がさないと言っている。



「なぁ…チャイナはどうなんでィ。」


こんなときポーカーフェイスのヤツは腹が立つ。

自分だけ平静を崩されているような気がするから。


答えなきゃいけないだろうか?

今まさに死ぬほど緊張してるなんて口が裂けても言えないが、

自分がどう思っているかは言わなければならないだろうか。

口ごもる神楽に、さらに沖田の顔が近づいた。


「!!」



「  神 楽  」



暑い屋上。
二人の間に涼しい風が吹いた。



不覚にもこれ以上無いくらい赤く顔を染めてしまった。


普段変な呼び名を言うくせに、今名前を呼ぶなんて卑怯だと思った。


顔と言わず、体と言わず、この茹だるような暑さからくるものとは違う熱で、身体や頬が火照るのがわかった。


「かぐ…」
ガシッ


「ヤメロ!!!////」



溜まらずその口を押さえた神楽を、驚いた顔をして沖田が見下ろす。


「名前呼ぶなんて…ずるいアル///」


カシャンとまたフェンスが軋む。

口を押さえた手の上から、沖田がその手を押さえた。


「?」




チュッ


「!!」


手のひらに温かくて柔らかな感触。
そして軽く音を立てて、離れた沖田の唇を神楽は固まりながら見つめた。


「まぁ…脈ありってことがわかったから、今日はこの辺にしといてやらァ。」


余裕の表情で背を向けて去っていく総悟に、神楽は力が抜けたように呆けてその姿を瞳に写す。


そのままドアに吸い込まれて行きそうな背中に、声を張った。







「ソーゴ!!

好きアル。」



ドアノブを掴んだ手が止まる。

振り返ろうとしない総悟の耳は、熟れたトマトのように赤かった。


「ソーゴ?////」



ドキドキとなる心臓は、蝉にも勝る喧しさ。


振り返らないヤツに、この暑さに、イライラしてヤケになったんだ。


走って、まだ固まる背中に抱きついた。


抱きついて、白いシャツを掴む指に、力がこもる。


たぶん、きっと、シャツはしわくちゃになると思う。


息を吸った。


熱い身体に目一杯。





「私、ソーゴが好きヨ!」



夕日が沈んでしまったのに、今日の屋上は何故か暑かった。




「ヤバイ…倒れそうだ////」








THE青春(笑)

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