沖神
※3Z






補習。



そうデカデカと黒板に書かれた白い文字を、青い瞳が恨めしげに睨む。

一度来たきり戻ってこない担任は、最早神楽にとって暗号としか思えない問題の書かれたプリントを自分に与えただけ。


「お前は精々これでいっぱいいっぱいだろ。」
と言って残していったのは、一枚きり。
流石と言うべきなのだろうが、
…たった一枚きりの内容は、逆立ちしたって神楽の頭からは出てこない知識だ。

現に一問目は30分たった今も一文字として進んじゃいない。寧ろ始まって30秒で投げた。

溜め息を1つついてチラリと外の景色へ目を向けようとすると、視界の端に写る男が一人。

隣の席で眠りこけているこの男は、自分と同じこのクラスでたった二人の補習組

…のはずなのに、チラリと見た隣の席の沖田総悟が下敷きにして寝ているプリントは、憎たらしいことに全てが回答済みだった。


この危機的状況に思い付くのは1つだけ。

実に不本意ではある…が、こんな一文字も進まないようじゃ敬愛する担任教師の銀八がいつまでも帰れなくなってしまう。
だから仕方ないのだ。と、結論づけたところで見える範囲でプリントの答えを写していく。







(くっ…見えないネ。)

3分の1ほど写したところでプリントの穴埋めが不可能になった。

仕方なくプリントを引っ張り出そうとすると、プリントはビクともせず。

どうしたものかと悔しく思いながら沖田のうつ伏せ状態の頭を睨んだ神楽は、ふとそのハニーブロンドの髪に意識が向いた。

秋に入ってだいぶ経つが、今日は天気もよく温かいせいか、教室の窓が1つだけ開いていた。
そこから入ってきた風が、フワフワと目の前の柔らかい髪を揺する。

何となく興味が湧いて、その髪を撫でてみると、想像よりも艶があって柔らかく触り心地がよかった。

チラッと沖田の様子を窺うが、未だに眠る沖田に起きる気配は無さそうだったので、もう一度優しくその吸い付くような手触りの髪を撫でた。

すいてみると、意外にコシのある髪が神楽の指の間からサラサラと溢れ落ちてゆく。

ふと滑り落ちていく髪の先にある頬や、男のクセに長い睫毛に目がいった。

なんとなくまた触りたくなって、頬を弱くつついてみる。
ピクリとも反応しないのをいいことに、もっと触りたくなった。


頬を撫でてみると、案外綺麗な肌は触り心地がいい。
制服に包まれた二の腕を掴むと、しっかりと固い筋肉の感触。

投げ出された片手に目が行って、神楽はその手を握ってみた。


自分の小さな手と違い、掌は大きく、関節の節々はゴツゴツと浮き出ていた。
長い指に自分の指を絡めて握ると、まるで恋人繋ぎをしたように見えて何となく恥ずかしくなった。



照れ臭くなって沖田の手から手を離そうとしたところで思いきり握り返された。



「!!?」



「随分と可愛らしいことしてくれるねィ?」


ハッとして反対を向こうが、慌てて手を離そうが、隠しきれなかった赤い顔が全てを物語ってしまっている。



「なんでィ、もう終いか?」


ニヤニヤとしながら身体を起こした沖田は、机に頬杖をついて神楽の方をしっかりと見つめる。





「い…いつから起きてたアルか!?///」




ギュッと先ほどまで後ろの男を無遠慮に触っていた手を握りしめた。


「お前がプリント勝手に見始めたとこ…かねィ。」



ニィッと口端を上げて笑ったのが背中でもわかる。



(この…サドやロー…。)


本当だったら殴ってやりたいところだが、今はその殴り飛ばしたい顔をまともに見ることすら出来ない。


ドクドクと心臓がうるさくて、次にどうしたらいいのか自分の頭では考えられなかった。



「!?」




「お前の番が終了ってことは、次は俺のターンだろィ?」



突然腰に回された腕に振り返れば、何だか嬉しそうな沖田の顔。


「な、意味わかんないネ!
何するアルか;!?」



ガッチリと手を掴まれているお陰で、後退りも意味がないのはわかっているが、何となく逃げなきゃいけないような気がした。

でも逃げたくない…とも思ったり。


そんな此方の葛藤も、目の前の男はお構いなしで自分の手を手繰り寄せる。


「何って…オメーとおんなじことに決まってらァ。」


「;!?」



カタンといって机がずれて、ガタンと鳴って椅子が倒れた。



周りには誰もいなくて二人きり。




「それとも…さっきの続きがしたいならそれも構わないぜ、チャイナ。」



「っ!?///」



真っ赤な熱が顔に灯って、もう気づけば補習とかどうでもよくなっていた。


自分のプリントは三分の一しか埋ってなくて、後でめんどくさそうに顔をしかめるだろう担任の顔も浮かんだが、今はそれどころじゃない。


どんどんと近づいてくる憎らしい顔に沸き上がるのは、羞恥心と苛立ちと、言葉にしづらい胸の高鳴り。



「ほれ、触りなァ…チャイナ。」



ああどうしよう。




出てくるのは、羞恥心と苛立ちと、言葉にしづらい胸の高鳴り…プラスこれから先に何が起こるのかという期待値。





沖田の唇が、私の耳を掠めて。













私の鼓動は、速さを増した。












「はい、ストップ。」






「!銀ちゃんっ」

「ちっ…」




「んなとこで勝手にうちの(つか俺の)神楽ちゃんに手を出さないでくんない?

つか帰れよ。今すぐ一人で帰れよ。
んでもって神楽は居残りな。俺と二人きりで大人の勉強な!」

「大人の…?」


「マジで死んでくだせェクソ銀八。」






ナ ン ゾ コ レ \(^p^)/

なんで銀八出たし(笑)

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