沖神←兄
沖神付き合ってる設定…

特にオチもない








「何してんでィ。」





人の行き交う歌舞伎町の中を「もしかしたらアイツに会えるかもな。」なんて考えて、巡回路を勝手に変更して歩いていた沖田は、それでも面倒な上司に遭遇しないよう角を曲がり路地裏へと入った。
暫く歩いて足を止めた沖田の目に今写っているのは、目的のチャイナ娘。
しかしそのチャイナ娘は、自分ではない男に壁に縫い付けられていた。

「サド!」

此方を見たチャイナ娘は、何処かほっとしたような…でも焦ったような表情で面白くない。

「お楽しみのとこ悪いんですが、ここは公道なんで消えて下せィ。」

公道かどうかなんてどうでもいい。
ただ自分の目はチャイナ娘の上にのし掛かる三つ編みの男の背を睨み付けていた。

「お楽しみって何アルか!?
てめーブッ飛ばすぞゴルァ!!
つうか神威も、いい加減離せヨ!!」

ギャンギャン喚くチャイナを見て、別に同意の上でいちゃつこうって訳じゃないみたいで内心ホッとした。

「えー?俺は少なくともお楽しみ中だったんだけど…。」

振り返った男の青い瞳が此方を写した。

その顔は誰かに似ている。ついでに言えば、地球人にあるまじき杏色の髪の色も似ている。
まさに今捕らわれている少女に。

「というかこれからが本番?」
「…お宅、どちらさんですかィ?」

無意識に左手は刀の鞘を押さえていた。笑顔の裏にそうさせるほどの殺気を帯びた男がチャイナを自らに引き寄せる。
それを見てムカムカとしてくる感情をポーカーフェイスの下に隠したが、右手が徐々に刀の柄へ伸びているのであまり意味はないだろう。

「ん?神楽の兄だよ。」

確かに似ている。
飄々とした言い方と、この胡散臭い笑顔は癖なのか。しかし片腕であのチャイナを押さえておきながら、彼からは少しの隙も感じられない。

(流石は戦闘種族夜兎の…
あの星海坊主の血縁者といったところか。)

「そうですかィ。
じゃあお兄さん、
そこのじゃじゃ馬放してやってくれませんかねィ。」

ピクリと男の眉が動いた。
何に反応を示したのかは解らないが、男の纏う空気が一気に重みを増したので何かには触れたらしい。

「サド、逃げロ。」

チャイナが何ごとかを悟ったらしく、珍しくもサド心を擽るような怯えた表情で此方を見上げてくる。
自分がさせてないのが少し腹立たしいが。

「なに?君、俺の神楽とどんな関係?」

心配してきたチャイナが気にくわなかったのか、オサゲ野郎はこちらに興味をしめした。

「初めましてお義兄さん、僕ァそこのチャイナ娘の彼氏でさァ。」

ニィッと口端を上げて言ってやれば、ピョコリと頭の上のアンテナを揺らして首をかしげるオサゲ野郎。
その顔はこれでもかと言うぐらい殺気に満ちた笑みだった。

「そう、それはきちんと挨拶しなきゃね?」

ゴキゴキと見た目には細そうな首が鳴った。
やっぱりな。こいつシスコンだ。
しかも自分とは少し違うタイプのシスコンだ。
相手の都合なんか知ったこっちゃない、自分のものとして誰にも一切触らせないタイプのシスコンだ。
すんげぇ束縛して妹の彼氏とか『殺しちゃうぞ☆』とか言って殺っちゃうタイプだ。
ヤンデレってやつだ。うわ、キメェ。

「ねぇ、口にでてるヨ?」
「出てんじゃねェ、出してんでさァ。」
「へぇ、そう。君なかなか面白いね。」
「じゃあコンビ組んで漫才でも始めますかィ?
あれ?これって兄弟漫才になるんですかねィ。」
「バカだロ!お前絶対バカだロ!」

徐々に近づいてくるオサゲ野郎の腕の中でチャイナが叫ぶ。
そんな叫びなんかより、どうやってあのバカ娘を奪還しようかと空っぽの頭を動かしてみる。

「決めた。あのお侍さん殺る前に君を消すよ。」

多分侍とは万事屋の旦那のことだろうとか考えながら、これは少し不味いのだろうか?と思った。
本能でこの男が並々ならぬ強さであることはわかる。ついでに言うと、チャイナに対しての執着心もヤバい。兄妹であっても
構わず襲いそう…いや、現に襲ってた。
つまり兄でなく男と見てまず間違いなさそうだ。
とりあえずその腕から奪い返したチャイナを逃がすことは自分の中で決定事項なのだが。
…うん、しかしどうしたものか。

既に抜ききった刀身を男に向けながら思い浮かんだのは、いつもマヨネーズ臭い上司。
あの男が居たら囮にしてとっとと逃げるんだが…。
なんて考えていると、少し離れたとこから「沖田ぁぁぁあ!!何処だあの風来坊!!」と怒りに満ち満ちた土方の声。恐らく巡回コースを外れたのをサボっていると勘違いして探しているのだろうが、都合がよすぎるというのか、あの男がつくづく面倒に巻き込まれやすいということなのか。
しかし(とりあえず彼を囮にする事は決定事項として)彼がこちらに来るまで自分はこの状況を耐えねばなるまい。

そんなことを考えていると、ゴキリと白い指が鳴った。

「何か考え事?てゆうかまだ待たなきゃダメ?」

笑顔の素敵なお兄さんは、優しいことにこちらのことを待っていてくれたようだった。出来ることなら永遠に待っといてほしい。
…なんて冗談は置いといて、刀を構えた。

「いや、もう一人漫才に参加してェって言ってる男の声が聞こえたもんでねィ。」
「そう、俺トリオって好きじゃないんだ。
そいつが来る前に君を消しとかなきゃね。」
「てめェが死んでくだせェ、オニーサン。」

いよいよ刀と拳を交えようかというとき、オサゲ野郎の腕の中で大人しくしていたチャイナが心許なげに此方を見上げる。



「…総悟。」



今まで一度も言ったことのない自分の名を呼んだ彼女に、つい破顔しそうになる。
これは意地でもその見るからにヤバそうなオニーサンから奪い返さねば…。と思っていると気にくわなかったのかオニーサンの眉がピクリと動いた。ついでに言うと頭から空へと伸びた触角もピクリと動いた。

「なんかその顔は気にくわないや。」
「折角俺ら兄弟になるんですがねィ、そいつぁ残念でさァ。
あんたの顔だけはチャイナにソックリなんで嫌いじゃないんですがねィ。

といっても、さすがに『いつも』チャイナにするみたいにチューする気にはならねぇけどな。」
「なっ///」

途端に赤くなったチャイナの顔を見て、ピクリと今度動いたのはヤツの口元。



次の瞬間には爆音と共に建物の幾つかが倒壊する音が歌舞伎町へと鳴り響いた。


危険分子の遭遇


「あんまり怒ると禿げますぜ、オニーサン。」
「それは遺伝的にも禁句アル。」


続いてあがった音は、やはり穏やかなものではなかった。




…数分後、其処には呆然と立ちすくむ哀れな真撰組副長の姿が逃げ惑う一般市民により目撃された。





途中からめんどくさくなった(笑)
兎に角、沖田vs神威は面白そうだと思う(笑)


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