(沖田)神楽←神威
3Z





「ねぇ神楽、コイツ誰?」


内心ではイライラ、
上っ面ではニコニコ。

手に持った妹の携帯の画面には、男らしき人間からきたメールが開かれている。


「なっ;!?
勝手に見んなヨ、クソ兄貴!」



勝手に俺の手によって開かれた携帯を奪い返そうと拳を繰り出す神楽。


でもそんなの俺には当たんないヨ。


「返せヨ!このバカ兄貴!
ハゲ!!」



腕じゃ勝てないからって暴言を吐き始めた。

まったく。
昔はバカ…素直だったのに、どこでこんなにひねくれたんだろ?


そんな汚い言葉も何処で覚えたんだか…。



でも案外神楽に罵られるのって嫌いじゃない。

睨み付けてくる青い瞳に何だか興奮する。


…あれ?俺Mだったの?

新発見だ。


阿伏兎に言ったらあの老け顔がひきつりそうだな。

うわ、ムカつく。



「ねぇ、コイツ誰なの?」


「た、ただのクラスメートネ!
お前には関係ないアル!」


嘘だぁ、だって目が泳いでる。

頬っぺた赤いの気づいてる?


そんな顔されたらもっと苛めたくなるじゃん?


勝手に変なメール送っちゃおっかな?


なんなら明日、一緒に学校まで行っちゃおっか?



神楽は苛めがいがあって楽しいなぁ。


「彼氏とかだったら殺してあげようか?」


「や、やめるアル!
彼氏なんかじゃないネ!」


潤んだ目で見ないでヨ、

ゾクゾクするじゃんカ。




あれ?

俺Sだった?

まあ、痛めつける方があってるもんネ。

何だか阿伏兎がホッとしそうでムカつくな。





まぁ、SとかMとかはどうでもいいんだけどね。






手に持っていた携帯が、ブルブルと振動を始めた。




「あっ!!」



神楽が焦ったように声を上げて手を伸ばす。


頭を手で押さえつけると、神楽の手は俺の目の前で空を切った。


携帯を開くと、

送り主の名は"沖田総悟"。


その名を頭の中で反芻する。

名前覚えんのって嫌いなんだよね。


メールを開くと、それほど長くない文面。
内容も見た目も飾り気のない、文だけのメールだった。



『腹出して寝るなよ

まぁ、ガキっぽいお前らしいけど。

今日は楽しかったぜィ。』



声を出して読み上げてやると、真っ赤な顔をして怒る神楽。



面白くない。


「ねぇ神楽、何か楽しいことあったの?」



コイツと。


優しく聞いてやってるのに、この妹はふんと顔を背けた。



「お前になんて言わないアル!」



うわぁ、ムカつくね。

ニコッと笑ってやると、神楽は顔をひきつらせた。


なんか俺が不味いことしたときの阿伏兎の反応に似てて嫌だな。




開いたままだった携帯をポチポチと操作してから神楽の手に携帯を返してやる。
「い、今何したネ;!!?」


やだなぁそんな慌てないでよ、楽しくなっちゃうじゃん。



「代わりにメール送っといてあげたんだヨ。」


「は、はぁぁあ!!!???

テメェなんて送りやがったアルか;!!!??」


動揺しまくった神楽に、笑いが込み上げてきそうになる。



「ん?

『お前なんか大っ嫌いアル!』てね。」


ニコニコして言ってやると、俺と同じ色の目をパチクリする。


怒るかな?とワクワクしてたのに、何で安心したような顔をするんだい?



「よかったアル…。」

あれ?
なんかおかしくね?

いいの?嫌いで


「そんなの何時も言ってることアル。」


ケロッとしたように携帯を開く神楽に、

ホントに彼氏でもなんでも無かったのかな?




と思うとちょっとつまんないような安心したような。



でも画面を見つめる神楽の顔見たら、やっぱり勘違いなんかじゃないなって思った。


そんな顔するんだ。

似合わないね。


自分の知らない、女の子の顔をする神楽は、携帯でメールを打ってるようだった。



多分さっきの沖田…総一郎?


そんな名前のヤツ。



なんかすっごい腹立つな。


「ねぇ、神楽。」


「んー?何アルかー?
神威。」


携帯画面から目を離さないで生返事。


いつの間にそんな生意気になったのかナ?


「明日一緒に学校行くね。」


そんでソイツ殺しに行くヨ。


はぁ!!?

と喚く神楽を無視してさっさと風呂に入りに行く。



だってこっち見ないんだもん。

しょうがないよね。


俺は優しいから
神楽が俺を見てるなら、俺はそれで満足なのに。
お前が他のやつ見るからだよ?


ソイツを消したら

憎悪だろうが、怒りだろうが
お前は俺だけを見るだろう?

俺はそれだけで満足なんだ



ポケットを探って携帯電話を取り出した。
神楽と色違いのやつ。
同じ色は勘弁してよ。アイツピンクなんだもん。


「あ、もしもし阿伏兎?」


電話の向こうでめんどくさそうな声。

ムカつくな、阿伏兎のクセに。


「明日お前も殺っちゃうよ?」


電話の向こうで焦った声がしたけど、とりあえずそれだけ言って携帯を閉じた。
電話の内容なんて明日言えばすむだろう。
ちょっと他校に乗り込んで男を一人潰すだけだ。





俺は多分嬉しいんだ。






お兄ちゃんは神楽を間違った形で溺愛したらいいよ(笑)


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